――街なかで眼球写真を撮るシーンというのはゲリラで撮影しているんですか？

万里紗　そうです、ビジネススーツを着た人たちが歩いているような路上で。みなさんビックリしていたと思います（笑）。

――（笑）。麻耶の内面にはどうやって近づいていきましたか？

万里紗　内面的なものは難しいというか、よく分からないですよね。台本を読んでも答えが出てくるものではないですし、でもそれを考え出しちゃうとおかしな方向に行きそうな気がして、身体から飛び込もうと思いました。台本自体が本当に美しいし、佐藤監督が作っている世界が素敵なものだということもこれまでの作品で分かっていましたので、そこに飛び込みたいなあという想いでした。寺山修司さんの『レミング』に出演したときに演出家の松本雄吉さんから聞いたお話なのですが、アングラの帝王である麿赤児さんも「自分がやっていることの意味を全部分かっているわけではない」とおっしゃっていたそうなんです。それが私の中にずっとあって、その言葉を支えにしてやっていましたね。

――エロティックなシーンも多かったですね。女性同士のラブシーンにも体当たりで挑んでいましたし、PANTAさん演じる謎の男に暴行されたり、眼球とまで交わったり、次々すごい事態に遭遇していって。濡れ場への挑戦は初めてですよね？

万里紗　初めてです。もう怖いものなしです（笑）。

――すごく色っぽかったです。佐藤監督はどのように演出されたんですか？

万里紗　その場その場で「こんなふうに動いて」とか「こういう心理状態になって」とか指導があって、中でもすごく言われたのは「もっと男に委ねろ」っていうことですね。

――かなり委ねていたと思いますね。どんな相手も全身で受け入れているようで、女性から見ても切なくなってくるぐらいでした。佐藤監督の過去の作品などを観て研究されたりしたのでしょうか？

万里紗　オーディションを受ける前に、「自分にできるのか？」と覚悟を決めるために脱ぎのあるようなハードな映画を結構観たんですよね。佐藤監督の『ロリータ・バイブ責め』（87）だとかも観て「めっちゃカッコイイ！」って思いました。邦画でも洋画でも、ちょっと特殊なラブシーンやバイオレンスなシーンがあるものは観ましたね。オーディションで監督から「やれるのか？」と訊かれたときは「やるつもりで来ました」と答えました。

――カッコイイですね。桜木梨奈さんとのベッドシーンも、大胆でいちばん生き生きしていました。女性同士のラブシーンというと『アデル、ブルーは熱い色』（13）がとても評判になりましたが、それを超えるぐらい刺激的で挑んでいるなと思いました。

万里紗　本当ですか？　あの映画は劇場で観て、非常に感動しましたね。大好きな映画なんです。彼女たち（アデル・エグザルホプロスとレア・セドゥ）はほとんどすっぴんで、こんな寄りで撮られていて、でも全然飽きなくて。ラブシーンも美しくて豊かですよね。全然意識はしていなかったんですが嬉しいです。