開始前から長い列ができていた。その数130名のファンの熱狂の拍手に包まれながら登場したレフンは司会から挨拶を求められると「I LOVE MIYAZAKI」（宮崎駿大好き）！」と言って会場を盛り上げた。
「初めて来日したのは『ドライヴ』のプロモーションの時ですが、夜の東京を初めて目にしてから、日本で東京で是非映画を作ってみたいと思っていました。日本に来ると自分が異国に来た異邦人のような気がします。そういうところが好きですし、デザイン面でもディティールを大事にする日本のセンスと自分のフェティッシュな部分がすごく近いんじゃないかと思っています」と日本への熱い思いを語った。

「ネオン・デーモン」制作の経緯を聞かれると「ある朝目を覚ましたとき、自分は美しく生まれてくることができなかったなとふと思ったんです。でも隣に寝ている妻は生まれつき美しくて、そのことに嫉妬を感じた。その嫉妬の感情が着想のきっかけになっている。これがホラー映画のいいネタになりそうだと思ったのがインスピレーションになりました」と答えた。ファニングについては「彼女は女性版ライアン・ゴズリングだ」と説明して笑いを誘うのもさすがだ。

加えて司会が主人公を演じたエル・ファニングへの思いを問うと「彼女がこの映画に参加した時は主人公と同じ16歳、撮影中に17歳、ワールドプレミアとなるカンヌ国際映画祭の2週間前に18歳の誕生日を迎えています。彼女が子供から大人の女性になる道のりをこの映画はリンクしているんです。エルは女優として本当に素晴らしいと思いますし、ライアン・ゴズリングの女性版だと真面目に思っています。エルには、どの男性の中にも16歳の少女が実は住んでいて、この作品は実は僕の中の16歳の少女が扮装した映画なんだよと伝えたら、彼女は『ああそうなんですか』とさらっと言いました（笑）」とまたも笑いを誘った。

日本の映画について聞かれると「宮崎映画はもちろん、ゴジラも好きだしウルトラマンも好き」と日本のカルチャーオタクぶりを披露。て 「ヨーロッパに住んでいると最近の日本の映画を観る機会が少ないんだけど日本の若手監督の作品に興味がある。日本の若手監督の間にはカウンターカルチャー的なムーブメントが起こっているかもしれないと思う。もしそんな人がこの場にいたら伝えてほしい。『このまま作り続けてくれ』とね」とエールを送った。

トーク最後にタワーレコード店員のエプロンを着てもらうように促されたレフンは快諾しつつも「この後にここでバイトもしなきゃいけないのかな？　今まで生きてきた中で一番いかした格好をしてるな」とジョーク交じりに微笑んだ。その後行われたサイン会にも長蛇の列ができて熱狂的なファンが監督作のグッズを持参しサインと記念撮影をもとめていた。

(2016年11月15日 渋谷タワーレコードにて 取材：わたなべりんたろう)