チュス・グティエレス (監督) 映画『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』について【3/3】
有楽町スバル座、アップリンク渋谷にて公開中、全国順次公開予定/
有楽町スバル座での公開は3月3日(金)まで
公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)
――女性の生き方についての話も多く織り込まれていたと思います。
グティエレス監督 特に意図したわけではありませんが、人口の半分は女性なわけです。そして、女性の人生というのは、家の中を守ること、料理を作ったり子供を育てたりといった、どちらかというと個人的な世界であるわけです。その日常生活の物語というのは、今まで語られてこなかったものだと思うのです。「物語を語る」というのはひとつの権力の表れであり、女性たちはそこから排除されているんですね。映画監督にしても、女性監督は全体の1割か、それにも満たないかもしれません。つまり大方の物語は男たちが語っているのだと思います。その男たちというのも大体西洋人でヘテロセクシャルで、それ以外の人たちが語る場というのは本当に少ない。商業映画に登場する女性も、大体は誰かの母、誰かの娘、誰かの妻、誰かの愛人……と男たちの物語に色を添えるものであって、女性たち自身の物語を語る場というのはなかなか与えられないというのが現状なのです。
――日本の観客に伝えたいことはありますか?
グティエレス監督 先ほど受けたインタビューで、日本でも部落差別があり、そこで伝統芸能を続けている人たちがいるけれど、世間にはまったく認知されていないということを教えてもらいました。サクロモンテの人々とまったく同じなんですよね。日本の若い人たちにはそういうことに興味を持ってほしいし、日本の映画監督にはぜひそういうものを撮ってもらって記憶が消えないようにしてほしいですね。いずれ若い人たちが探ろうと思ってもまったく分からないということになってしまうので、そうならないうちに撮ってほしいです。
――監督も元々はサクロモンテのかつての暮らしを再現するために映画を作ろうとしたとのことですが、水害からの復興や、次の世代にフラメンコを継承していくところまでを描く本作からは、もっと前向きなものを受け取って、とても励まされました。映画を作りながらあらたに見出したテーマもあるのではないでしょうか?
グティエレス監督 「何を入れたかったか」というよりも「そこから見えてくるものが何であってほしいか」ということに関しては、「私たちはそんなに変わらないんだ」ということですね。スペインの南部の小さな小さなところで生まれた物語が、言語の壁を乗り越えて何かあなたに足跡を残したのだったら、それこそが人と人を繋げるものであると私は考えています。ですからできるだけ普遍的な表現を心がけてはいました。スペインにいようが日本にいようがモロッコにいようが、国境を越えて人間として理解できるものがあり、そこでみんな繋がることができるんです。そういう普遍的な表現をできるだけ使うようにしましたね。そして普遍性というのは映画という表現方法の持つ力でもあると思っています。
( 2017年2月16日 アップリンク渋谷での合同取材 取材:深谷直子 )
監督:チュス・グティエレス
参加アーティスト:クーロ・アルバイシン、ラ・モナ、ライムンド・エレディア、
ラ・ポロナ、マノレーテ、ペペ・アビチュエラ、マリキージャ、ラ・クキ、
ハイメ・エル・パロン、フアン・アンドレス・マジャ、チョンチ・エレディア他多数
日本語字幕:林かんな 字幕監修:小松原庸子 現地取材協力:高橋英子
2014 年/スペイン語/94 分/カラー/ドキュメンタリー/16:9/ステレオ/原題:Sacromonte: los sabios de la tribu
提供:アップリンク、ピカフィルム 配給:アップリンク 宣伝:アップリンク、ピカフィルム
後援:スペイン大使館、セルバンテス文化センター東京、一般社団法人日本フラメンコ協会
公式サイト 公式twitter 公式Facebook