9月25日(月)　登壇者：深田晃司（映画監督）、福永壮志監督【3/3】 (取材：深谷直子)

福永監督のほうからも、トーク中に少し話題に上っていた、新作『海を駆ける』でこの8月に敢行したばかりのインドネシアロケについて深田監督に質問を。深田監督は「ロケをしたのはバンダ・アチェというところで、撮影自体は現地のスタッフも穏やかで優秀だし快適でした。でもリベリアと近いのかもしれない。スマトラ島の北の端っこの映画文化がそもそもない地域で、ジャカルタのプロダクションにとっても外国で撮るようなものなんですよ。照明機材とかもジャカルタから車で5日かけて運んで、予算的にも手間的にも大変でした」と振り返り、福永監督にも「リベリアでの撮影で苦労とかはあったんですか？」と尋ねた。
福永監督は、「インフラが整っていないので、発電機と一緒に行動していたし、ひとつのことをやるのにも倍かそれ以上の時間がかかって。天候も結構厳しいときで、雨期に差しかかっていたので豪雨で撮影ができないとか、晴れのシーンが雨になったりとかも多々ありました」と答えた。

福永壮志監督すると深田監督は、「天候に関してはインドネシアのほうが多分ちょっとお得な状況で」と得意満面でインドネシアならではの秘密兵器の話を始めた。「こっちもクランクイン1週間前のロケハンとかはずっと土砂降りだったんです。でもクランクインしてから3週間ずっと雨なしで。というのもインドネシアのスタッフに『レインストッパー』という祈祷師がいたんですよ」という神秘的な展開に場内はどよめくが、「本当に。『レインストッパー』って多分エンドロールに入ります（笑）」と平然と話を続ける深田監督。「最初予算がオーバーしていたので、日本のプロデューサーとインドネシアのプロダクションで『もっとスタッフを削ろう』って話をしていて。当然日本側からしてみたら『このレインストッパーって何だよ？』って真っ先にリストラの対象になるんですけど、それを言ったら向こうも『マジでこれを削っちゃうの？』という感じで。プロデューサーいわくこれ以上強く言うと文化論争に発展しそうだから残したということなんですけど、結果的に大正解でした。雨がパラつき始めると『俺の出番か』みたいな感じでテントから出てきてお祈りを始めるんですよ。そうしたら止むっていう（笑）。これは信じたほうが得だっていうことでみんなで信じました。実際クランクインの前日まで土砂降りで、月間の天気予報もずっと雨か曇りだったのに、クランクインしたらまったく降らなくて、クランクアップした夜の打ち上げのときにまた土砂降りになるという完璧なタイミングで」という「郷に入っては郷に従え」の大成功例に、会場は爆笑と驚嘆の声が止まらない。「インドネシアだと結構当たり前らしいです。向こうの人にとっては『日本人がなんでこんなに騒いでいるのかわからない』という感じで。運動会とかにもよく雇われて、近い地域に力のあるレインストッパーが二人いると雨雲の競り合いになるらしいです」と最後まで笑わせ、福永監督は「うちにもほしかったです」と羨ましそうだった。

この日は短編『ノーツ・フロム・リベリア』の上映もあったため、イベントは20分で終幕。終わりを告げられた深田監督は「映画と関係ない話をしてしまってすみません」と恐縮していたが、巧みな話術のおかげもあって実りある時間になり、誰もが満足そうにお二人を見送った。世界を股にかけて切磋琢磨するお二人が、いつの日かまた日本で晴れやかに再会することを願ってやまない。

(2017年9月25日 アップリンク渋谷にて 取材：深谷直子)

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1 山本政志(映画監督) × 長谷井宏紀(映画監督)2 亀山亮(写真家)3 大西信満(俳優) × 蔦哲一朗(映画監督)4 水道橋博士水道橋博士(お笑いタレント) × 松崎まこと(映画活動家)