大塚 信一 (監督)
映画『横須賀綺譚』について【4/4】
2020年7月11日(土)より新宿k’sシネマにて3週間レイトショー
公式サイト 公式twitter (取材:深谷直子)
――「早く劇場公開していろいろな意見をもらったほうがいい」とも言われたそうですね。お客さんからの反響が楽しみです。配給もつい最近ついたとのことで心強いですね。
大塚 そうなんです、6月に入ってから、本当にギリギリのタイミングで。僕がプレスリリースをいろんなサイトに送っていたら、Cinemarcheさんというレビューサイトの出町光識さんが気に入ってくださって。ちょうど配給会社のMAPさんとインディーズ作品の共同配給をしようという話になっていたそうで、その第1弾にしていただきました。地方公開が全然決まっていなかったのでよかったです。
――蓮實重彦さんも映画にコメントを寄せてくださっているんですよね。
大塚 びっくりしましたね。ケイズシネマの副支配人さんから、主だった批評家の方々に観てもらうようにアドバイスを受けて、「蓮實さんが観てくれるわけない」と思いながらも、興行がうまくいきますように……とお賽銭箱に手を合わせるような気持ちで「文學界」の編集部宛にメールを送ったんです。そうしたら忘れたころにメールが来て、「えっ、蓮實さん!?」と。内容は今出しているコメントより短くて、「がんばったな」という激励ぐらいの意味合いかと思っていました。それでもすごく嬉しかったんですが、また「コメントもお願いしなさい」とアドバイスされて、メールをしたら半日後にコメントが送られてきました。大感激ですよ。
――とてもいいコメントですよね。監督に期待を寄せていることが伝わってきます。尺が90分以内であるところが評価されていますが、もっと長くなるような作品だったのでしょうか?
大塚 そんなことはないです。むしろ最初の編集であがったものから10分ぐらい増やしていますから。春樹が福島でカートを引いて歩いているとか、点々と移動する描写が多いんですが、最初はそこがもっとタイトで70~80分ぐらいだったんです。でも大きいスクリーンに映したときにもっと間があったほうがいいなと思って86分にしました。
――カナザワ映画祭などでのお客さんの反応はいかがでしたか?
大塚 ラストを受け入れられるか受け入れられないかで結構別れる気がしますね。あと、SF映画として観ればいいのか?社会派映画として観ればいいのか?というところで苦労をかけるかもしれません。でも最初に言ったようにフェイクニュース時代のリアリティーという考え方をすると、この映画に重なる部分が今の時代の生活の中にはあると思うので、受け入れてもらえる土壌はあるんじゃないのかなと思いますね。
――そうですよね。今は本当に現実がひっくり返されることばかりで。
大塚 ひっくり返され続けていると、それがどんどん当たり前になってしまうんですよね。そういう中で「あったに決まっているだろう」と言える川島みたいな存在はとても大切なんですが、それが少なくなっていて、どれが真実でどれがフェイクなのかわからなくなってくる。この感覚はリアリティーあるんじゃないかと思います。自分で言うのもなんなんですけど、面白い試みだと思いますね。
――観た後で語り合いたくなる映画ですよね。自分でも「何を観たんだろう?」と思いますし、人によって全然違う捉え方をしていると思います。
大塚 そうなんです。「大変な意欲作」です。by蓮實重彦さんです。
――(笑)。コロナの時代になってますます意味を持つ作品になったと思いますので、私も公開を楽しみにしています。ありがとうございました。
( 2020年6月30日 渋谷・映画美学校で 取材:深谷直子 )