(2007 / 日本 / 田中康文)
人肌が恋しい? ファックユー、ピンク映画を見ろ!

膳場 岳人

 秋です。この季節になると、わけもなく切ない気持ちになっちまうのは私だけでしょうか。寂しい。孤独だ。人肌が恋しくて恋しくて仕方がない――そんな男ども女どものため、何より自分自身のために、またまたピンク映画を取り上げます。管理人にニガい顔されても知ったこっちゃありません。「なんだ、またピンク映画か」と食わず嫌いの読者に無視されても構いません。

 現在発売中の「月刊シナリオ」11月号で、いまおかしんじ監督が、ピンク映画は「見てる人の数も限られてる」「撮ったって何人見るんだよ」と言いつつ、「こんなバカなこともやれる」「だったらちゃんとやらないと面白くないじゃん」と語っているんですが、そういうことです。確かにヒドイ作品も多いのですが、三本立てのうち一本は必ず「面白い!」と腹の底から思える作品がある。だから映画ファンは成人映画館に足を運ばなきゃいけないし、作品について語らなくちゃいけない。『HERO』なんて映画を、好きで見に行くのならともかく、アラ探しのために見に行ったってしょうがないだろ。

 閑話休題。

 ホントはピンク映画館の一般的なプログラムにならって三本立てと行きたいところですが、あいにく、いまおかしんじ監督の秀作『たそがれ』については前回書いてしまったし、“人と人とがつながりあうどうしようもなさ”を可愛らしく描いた『痴漢電車 びんかん指先案内人』(加藤義一監督)は、関東圏での上映を終えて、現在は中部地方を巡業している模様(10/12~18まで、静岡小劇場で公開)なので、ここでは現在関東地方で公開中の新作『裸の女王 天使のハメ心地』を取り上げます。

 『裸の女王 天使のハメ心地』。どうですか、このタイトル。天使のハメ心地ってどんな心地なんでしょう。反射的にクリネックスを思い浮かべたのは私だけでしょうか。本作は、デビュー作『裸の三姉妹 淫交』(06)が高い評価を受け、昨年度のピンク映画大賞で新人監督賞に輝いた(……と言っても、その年にデビューしたピンク映画の新人監督はひとりしかいなかったとか)田中康文監督の第二作。前作は三姉妹の人生模様をシリアスなトーンで綴った人間ドラマでしたが、個人的にはそれほどいいと思いませんでした。メインキャラクターが刺されて終わるという投げやりなドラマ作りには抵抗を覚えます。ただ、絵心のある監督だということは強く印象付けられておりまして、今作でもそのあたりが見どころとなっています。

 ストリッパーのマリ(青山えりな)とリン(結城リナ)は幼馴染。旅館の息子・隆夫(サーモン鮭山)に口説かれたマリと、ホストの彼氏に借金を肩代わりさせられそうになったリンは、手に手をとって隆夫の旅館へ身を寄せる。そこには隆夫の母親で、ワケあり風情な旅館の女将(田中繭子)や、カミナリに打たれて頭がおかしくなったその夫(池島ゆたか)らがいて……。

 全編、とても懐かしい雰囲気が横溢した人情喜劇です。笑えるかどうかと言えば、まあ、あまり笑えなかったんですが、笑えないことが決して不快ではない。何といってもストリッパーをヒロインとした映画、というのがいいじゃないですか。ストリップ、行ったことありますか? 私は学生時代に大阪は十三、渋谷、川崎などのストリップ劇場に何度か足を運んだことがあります(残念ながら、本作の撮影で使用された新宿ニューアートには入ったことがありません)。劇中、「ストリップは女のからだを最高に美しく見せる」という台詞があるんですが、正にその通りだと思います。あれって女性の美しさを最大限引き出すショーであり、装置なんです。そしてこの映画自体、女優の魅力を最大限引き出すことに主眼を置いた作品と言うことができるのではないでしょうか。

 『短距離TOBI-UOトビウオ』(竹洞哲也監督)でのトビウオを彷彿とさせる役作りの青山えりなは、その童顔に無垢のあどけなさと無謀の愚かしさを漲らせ、相変わらず可憐です。しかし私個人は蓮っ葉なリンを演じた結城リナにぞっこんでした。まず、からだがきれい。はっとするほど白くほっそりとしたからだを、舞台で徐々にあらわにしていくショー場面の艶やかさ。まばたきをほとんどしないでっかい瞳と、聡明さを表象する広い額。旅館の従業員、岡田智宏に対するツンデレな態度も可愛いです。マリとリンが下着姿になって川原で水の掛け合いをするという、どうしようもなくベタな場面も、(若いってええなあ)と楽しく眺めることができました。

 絵作りはやっぱり丁寧で、中でもストリッパー二人を出迎えた田中繭子と岡田智宏が横一列に並んだショットなど、「これぞ映画」といった力強さを感じさせ、「おっ」と思わせます。田中繭子(旧・佐々木麻由子)はもともと“映画に愛されている”顔だちなんですが、女将である彼女が和装も凛々しくまっすぐに画面を見つめ、右後方には従業員の岡田智宏が不遜な態度で控えている。甘い考えで旅館にやってきたヒロインたちに「対峙している」という構図がバシッとワンカットで表現されている。実に映画的なショットです。また、ストリップ劇場の“でべそ”にかぶりついてマリに声援を送っていたサーモン鮭山が、ストリップ劇場の外に出てタバコを吸うナイトシーン。彼の着こなすダークスーツも相まって、まるで日活アクション映画の一場面を見ているような、不思議なかっこよさがあります。随所にこうした良いショットがあって、僭越ながら、感心しました。

 正直言って池島ゆたかのギンギラギンの衣装や「宇宙人」を連発する奇嬌な演技はかなり外している気がしますし(正気に戻ってからの素の芝居の方がはるかに心地よい)、エンドクレジット中に流れるフィナーレには、そこで必要な迫力がまったく感じられない。いま一つスマートさに欠ける語り口にも大いに不満が残るのですが、総じて「楽しめた」と言い得る作品でした。

 裸はいい。裸の映画は温かい。人肌が恋しい? ファックユー、ピンク映画を見ろ!

(2007.10.8)

裸の女王 天使のハメ心地 2007年 日本
監督:田中康文 出演:青山えりな,結城リナ,田中繭子,池島ゆたか,岡田智宏,サーモン鮭山

上映情報はこちらのシアターガイドを参照。

2007/10/08/17:04 | BBS | トラックバック (0)
膳場岳人 ,今週の一本 ,「は」行作品
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