新作情報
西田敏行 池脇千鶴 西島秀俊

丘を越えて

丘を越えて1

2008年5月17日、シネスイッチ銀座、新宿バルト9
ほか全国ロードショー!!

INTRODUCTION

ときがきらめき、ひとがきらめく。

丘を越えて2珠夫人」の人気作家であり、芥川賞・直木賞の創設者でもある菊池寛。“時代のパトロン”菊池とその周囲の人々が織りなす、何もかもが新しさに満ちていた時代の物語。原作は、東京都副知事でもあり、昭和をテーマに著作を展開する猪瀬直樹。菊池寛賞を受賞したテレビマンユニオンの言葉の達人、今野勉が脚本を手掛け、「火火」の名匠高橋伴明がメガホンをとる。本作は、菊池寛生誕120年、没後60年に贈る文芸大作である。
「真珠夫人」「父帰る」のベストセラー作家で、文藝春秋社社長でもある菊池寛の私設秘書となった葉子。社長室では菊池が帯をずり落としそうにしている。新しく創刊した雑誌「モダン日本」編集部では朝鮮の貴族出身の美青年・馬海松(まかいしょう)が葉子を挑発する。葉子の心にふたりの男の思いが入り込んでくる――。

本にサラリーマンが誕生し、飛行機が空を飛び、地下鉄が開通し、映画館が立ち並び、大工場ができはじめる。自動車や洋服や、女性が仕事をすることがとても珍しかったころ。普及し始めたラジオからは、舶来のジャズやチャールストン、流行の昭和歌謡が流れ、人々を魅了する。銀座通りを闊歩するモボ、モガたち。大衆文化が花開き、流行・風俗・ファションが人々の生活の一部となっていった昭和初期。現代を生きる私たちの生活や文化の原型がこの時代に誕生する。

丘を越えて3画「丘を越えて」は、そんな何もかもが新しさに満ちていた時代を生きたふたりの男とひとりの女の物語。「文藝春秋」「オール讀物」を創刊し、日本の大衆文化の創造に乗り出す“時代のパトロン”菊池寛。江戸情緒を残す下町育ちの貧しい娘から、東京・銀座近くの近代的なビルで働く女性へと変貌を遂げ、女流作家への夢、そして恋にも素直に立ち向かう葉子。「モダン日本」の編集者として働きつつ、いずれは母国の社会と文化の変革をと野心を燃やす馬海松。押し寄せる新しい時代の波に体全体でぶつかり、体ごと呑み込まれつつ、いくつもの丘を男と女は越えて行く……。

西田敏行、西島秀俊、池脇千鶴、余貴美子という日本映画界屈指の名優たちと、監督・高橋伴明、脚本・今野勉、原作・猪瀬直樹、主題歌・つじあやのと豪華クリエーターが結集し、ファッション、言葉遊び、音楽ととことんこだわって作り上げた文芸大作。挿入歌として流れる原盤の「丘を越えて」ほか、「君恋し」「アラビヤの歌」など昭和歌謡の傑作の数々と、当時の面影を残すロケセットでの撮影や美術、衣裳へのこだわりが、観客を華麗なワンダーランドへと誘い込む。

Story

時はモダン。男と女はいくつもの丘を越えていく。
丘を越えて4江戸情緒の残る東京・竜泉寺町に育った細川葉子(池脇千鶴)は、女学校を卒業して働き口を探し、知人の紹介で文藝春秋社の面接を受ける。不況の折、採用の枠はなかったが、葉子は文藝春秋社の社長であり著名な作家でもある菊池寛(西田敏行)の目に留まり、個人秘書としての仕事にありつく。 下町育ちの葉子に、菊池の世界はまばゆい光に彩られている。銀座の街、パッカード、帝国ホテル、ダンスホール、菊池にからむ女性たち…。矛盾をまるごと抱え込んだような巨人、それでいて破格の人情家でもある菊池に憧れつつ、葉子は若い美男の編集者、馬海松(西島秀俊)にも惹かれていく。朝鮮の貴族の出で、日本に留学して菊池の知遇を得、文藝春秋社に働く馬は、遊び人を気取っているが、心の中ではいずれ母国に戻り、新しい朝鮮を作りたいと野心を燃やしていた。その若さと野心が葉子の胸を轟かせた。一方、老いつつある菊池は、金では買えない葉子の魅力にかけがえのないものを感じ、「恋」に落ちる。
対照的な二人の男の波間を漂いつつ、葉子は少しずつ成長し、女流作家になりたいという自分自身の夢を抱く。だが、やがて満州事変が勃発し、戦争の足音が聞こえはじめる。馬は母国の独立のため、朝鮮に帰る決意を葉子に伝えるのだった。讃えよ、わが春、わが人生を! 行く手に嵐を予感しながらも、菊池も葉子も馬も、自分の人生を生き切ろうと、生きる喜びを謳いあげる。
(この物語はフィクションです)

Cast/Staff Profile

スタッフ

監督:高橋伴明
1949年奈良県生まれ。早稲田大学文学部に入学するが、早大闘争に参加し除籍となる。この頃から本格的にピンク映画の世界に入り、72年「婦女暴行脱走犯」で監督デビュー。82年には「TATTOO(刺青)あり」を監督、高い評価を得る。その後、監督集団ディレクターズカンパニーへの参加を経ながら、「DOOR」(83年)、「獅子王たちの夏」(91年)、日本最初のヘアヌード映画「愛の新世界」(94年/おおさか映画祭監督賞)、「光の雨」(01年)など時代を画する作品を撮り続けている。05年には「火火」(ケララ映画祭NETPAC賞、審査員特別賞他多数受賞)で新境地を開く。

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脚本:今野勉
1936年生まれ。株式会社テレビマンユニオン取締役副会長。59年東北大学文学部(社会学科)卒業。ラジオ東京(現東京放送)入社。テレビ演出部に配属となる。70年にはTBSを退社し、テレビマンユニオン設立に参加。ドラマ、ドキュメンタリーなど、多数演出。多くのドラマの脚本も手がける。98年の長野冬期五輪ではクロージングセレモニーの総合演出も務める。また05年には菊池寛賞を受賞。主な演出作品にシリーズドラマ「七人の刑事」(TBS/放送作家協会演出者賞)、「海は甦る」(TBS/テレビ大賞優秀番組賞、プロデューサー協会賞)等。主な脚本作品に「続・病院で死ぬということ」(TBS/ATP優秀番組賞、放送文化基金賞ドラマ部門優秀番組賞)、「新宿鮫~無間人形」(NHK)等がある。
原作:猪瀬直樹
1946年長野県生まれ。「天皇の影法師」をはじめ、「日本凡人伝」「黒船の世紀」「ペルソナー三島由紀夫伝」など多くの著作がある。86年には「ミカドの肖像」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞、「日本国の研究」(文藝春秋読者賞受賞)は、政界の利権、腐敗、官僚支配の問題を鋭く突き、小泉首相から行革断行評議会委員、道路公団民営化推進委員に任命される契機となった。現在は作家活動の傍ら、東京工業大学特任教授など幅広い領域で活躍。07年6月には東京都副知事に就任。

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主題歌:つじあやの
1978年京都生まれ。高校時代に在籍したフォークソング部でウクレレに出会い、99年メジャーデビュー。メガネをかけてウクレレを弾き語りという、ゆったりとした心地よい独自のスタイルで、老若男女に幅広いファンを持つ。映画「猫の恩返し」(02年)の主題歌「風になる」がロングヒット。最近では新垣結衣などにも楽曲提供、BEAT CRUSADERSとのコラボで映画「超劇場版ケロロ軍曹3」の主題歌「ありえないくらい奇跡」も担当している。

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キャスト

 
丘を越えて5菊池寛:西田敏行
1947年11月4日生まれ。福島県郡山市出身。70年劇団青年座入団、「情痴」で初舞台を踏む。71年舞台「写楽考」初主演。以降、舞台、テレビ、映画など出演多数。映画では、85年「天国の駅」」で日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞、87年「植村直己物語」、93年「寒椿」、97年「学校2」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞、89年「敦煌」、94年「学校」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、04年「ゲロッパ」「釣りバカ日誌14」でブルーリボン賞等等を受賞するなど、日本映画界を代表する俳優の一人。「釣りバカ」シリーズで国民的な人気を得ている。

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丘を越えて6細川葉子:池脇千鶴
1981年大阪府生まれ。97年に第8代三井のリハウスガールに選ばれデビュー。99年に「大阪物語」(市川準監督)で映画デビュー、同作品で数々 の新人賞を受賞。主な映画作品に「金髪の草原」(00年/犬童一心監督)、『化粧師』(02年/田中光敏監督)、「ジョゼと虎と魚たち」(03年/犬童 一心監督)、「ストロベリーショートケイクス」(06年/矢崎仁司監督)、大河ドラマ「風林火山」(07年)。最新出演作には、「犬と私の10の約束」 (本木克英監督)「火垂るの墓」(日向寺太郎監督)などがある。高橋伴明監督作品には「火火」に続く出演となる。

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馬海松:西島秀俊
1971年東京都出身。94年「居酒屋ゆうれい」で映画デビュー。97年、諏訪敦彦監督「2/DUO」でその演技力を高く評価され、99年黒沢清監督「ニンゲン合格」(日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞)、02年北野武監督「Dollsドールズ」等に主演、日本映画界屈指の若手俳優の地位を不動のものとする。他の主な映画出演作に、「帰郷」(05年/萩生田宏治監督)、「三年身籠る」(06年/唯野未歩子監督)、「さよなら みどりちゃん」(05年/古厩智之監督)、「LOFT」(06年/黒沢清監督)等。近年は「ジャッジ~島の裁判官 奮闘記」などテレビドラマにも活躍の場を広げている。映画最新作は「休暇」(08年/門井肇監督)、「春よこい」(08年/三枝健起監督)ほか。(» 『西島秀俊』をamazonで検索)
細川はつ(葉子の母):余貴美子
1956年横浜市生まれ。86年劇団「東京壱組」を結成。96年解散までに14公演に出演。以後、映画、TV、舞台と幅広く活躍。88年神代辰巳監督「噛む女」で本格的な映画デビュー。98年山田洋次監督「学校Ⅲ」、相米慎二監督「あ、春」等でブルーリボン賞助演女優賞、毎日映画コンクール女優助演賞、日本アカデミー賞優秀助演女優賞等を受賞。他、主な映画出演作に「ヌードの夜」(93年/石井隆監督)「新・仁義なき戦い」(00年/阪本順治監督)「ホテルハイビスカス」(03年/中江裕司監督)「さよならクロ」(03年/松岡錠司監督)「東京タワー」(05年/源孝志監督)「椿山課長の七日間」(06年/河野圭太監督)「子宮の記憶」(07年/若松節郎監督)等。今秋、滝田洋次郎監督作品「おくりびと」の公開が控えている。

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長谷川伸策(地下鉄しんちゃん):猪野学
1972年三重県出身。青年座を経て、映画、テレビドラマを中心に俳優として活動、MBSの人気昼ドラ「ピュア・ラブ」の青年僧侶役で人気を博す。また、声優としても「スパイダーマン」のトビー・マグワイア、韓流スターのパク・ヨンハなどの吹替えでも知られる。主な映画出演作に「ゲゲゲの鬼太郎」(07年/本木克英監督)「自虐の詩」(07年/堤幸彦監督)などがある。

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佐々木茂索:嶋田久作
1955年神奈川県出身。さまざまな職業を経て俳優となり、88年「帝都物語」の魔人・加藤保憲役で映画に初出演、強烈な存在感で注目を浴びた。その後も数々の映画、テレビドラマに出演。実直な人物からエキセントリックなキャラクターまで幅広くこなし、個性派俳優として高い評価を得ている。最近の主な映画出演作は「犯人に告ぐ」(07年/瀧本智行監督)、「サッドヴァケイション」(07年/青山真治監督)など。

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堀口カツ:石井苗子
東京都出身。1988年の「CBSドキュメント」を皮切りに女性キャスターとして活躍、90年には伊丹十三監督「あげまん」に出演し映画デビューを果たす。95年パルコ劇場「ジェフリー」出演で女優業に本格進出、02年からは東京大学大学院に進学、修士、博士課程修了後、現在は医学部客員研究員に就任するなど多彩な活動ぶりでも知られる。主な映画出演作に「手紙」(06年/生野慈朗監督)「転々」(07年/三木聡監督)など。女性の生き方などの著作多数。

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細川徳蔵(葉子の父):峰岸徹
1943年東京都出身。62年東宝映画「高校生と女教師・非情の青春」でデビューし、第2の赤木圭一郎とも言われた。その後、文学座、大映などを経て、映画、テレビと幅広く活躍、渋みあふれる個性派俳優として年輪を重ねている。最近の主な映画出演作に「キャッチボール屋」(05年/大崎章監督)「クロサギ」(08年/石井康晴監督)など。趣味はトライアスロン。

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関連情報
菊池 寛 きくちかん
香川県高松市生まれ。高松中学を首席で卒業した後、家庭の経済的な事情で学費免除の東京高等師範学校に入学するが、授業サボタージュ等で除籍処分を受ける。地元の素封家から経済的支援を受け、明治大学に入学するも、第一高等学校(一高/現東大教養課程)入学を志して中退。1910年、念願の一高入学を果たすが、卒業直前に友人佐野文夫(後の日本共産党幹部)の窃盗の罪を被り退学。その後、京都帝国大学選科に学ぶ。京大卒業後、時事新報社会部記者を経て小説家となり、1920年「真珠夫人」が大ヒット、一躍人気作家となる。夏目漱石に代表される芸術至上主義の文学に対して「生活第一」をモットーに大衆文学の必要を訴え、1923年には私費で「文藝春秋」を、さらに「オール讀物」「モダン日本」等を創刊、現在の日本の文壇やマスジャーナリズムの礎を作る。今では当り前の誌上座談会も菊池寛の創案とされる。また、芥川賞、直木賞を設立するなど新鋭作家の育成にも力を注ぎ、川端康成、横光利一、小林秀雄等の才能あふれる若き文学者へ金銭的支援を行っていたことでも有名である。大映の初代社長を務めるなど映画にも縁が深く、映画雑誌を刊行するなどしている。また麻雀、競馬にも造詣が深く、日本麻雀連盟初代総裁を務め、現在でも競馬入門書として評価の高い「日本競馬入門」の著書もある。太平洋戦争中の文芸銃後運動により、戦後は公職追放となる。1948年没。 

■ 芥川龍之介の菊池寛
菊池と一しょにいると、何時も兄貴と一しょにいるような心もちがする。こっちの善い所は勿論了解してくれるし、よしんば悪い所を出しても同情んしてくれそうな心もちがする。又実際、過去の記憶に照らして見ても、そうでなかった事は一度もない。唯、この弟たるべき自分が、時々向うの好意にもたれかかって、あるまじき勝手な熱を吹く事もあるが、それさえ自分に云わせると、兄貴らしい気がすればこそである。(芥川龍之介「兄貴のような心持」大正8年)

■ 川端康成の菊池寛
私は音楽を聞くと、立身したいと発奮してゐた少年の立志時代の気持を、必ず思ひ出す。音楽と菊池寛は、妙な取合せだが、菊池氏は私にそのやうな効果がある。菊池氏のことを考へたり菊池氏に会うと、何時も、これではならぬと、自分を恥ぢ、発奮する。一には、三四年来に受けた限りない恩恵を、無駄にしてしまってゐるかのやうに心が責められるからである。(川端康成「若い人を甘やかせる」大正13年)

■ 白洲次郎の菊池寛
僕の菊池寛の印象を云うとね、こんな常識のある文士に会ったことないという印象と、あとひとつは、こんな健康的な考えを持ってるくせにこんな不潔な人に会ったことないという印象だ。この爺さんを風呂に入れてタワシでゴシゴシこすってやろうかと思ったことがあったよ(笑)。あの人汚いねえ(笑)~略~ 一流文士で彼に愛情をもたない人は一人もないだろう。(白洲次郎「閑話休題」川口松太郎対談/週刊サンケイ53.11.29号)

<モダンの時代の演出者>

丘を越えて7「モダン日本」 「最初、『モダン・ライフ』と云う名で出す筈のところ、再考の上『モダン日本』とした。『モダン・ライフ』では、ただ生活様式にのみ関係することになって、内容がうすっぺらになる嫌いがある。『モダン日本』ならば、何でもは入ると思う。刻々に変化して行く現代日本を表現して行けばいいのである。しかし、我々は最初の計画通り、主として生活、実際科学、娯楽、趣味、を中心とした興味本位の雑誌に編集するつもりであるが、しかし雑誌は生き物であるから、それ自身どう云う成長をするか分からない。だが、常に最も尖端的な智識と趣味とは代表して進んで行きたいと思う」(昭和5年10月創刊号/菊池寛の創刊の辞)

昭和歌謡

丘を越えて7丘を越えて(作詞:島田芳文、作曲:古賀政男、歌唱:藤山一郎) 日本歌謡曲の生みの親ともいえる古賀政男を代表する青春賛歌。1929年(昭和4年)、古賀によってマンドリン合奏曲「ピクニック」として作曲された。2年後の1931年(昭和6年)、日本コロムビアから「丘を越えて」(作詞:島田芳文)として藤山一郎の歌唱で発売されるや大ヒットとなり、不世出の国民的歌手藤山一郎の人気を決定づけた。後世に歌い継がれる名曲として、矢野顕子や氷川きよし等のカバーも有名。本作の主題歌として、つじあやのがファンキーテイストの素晴らしい「丘を越えて」を披露している。(藤山一郎@YouTube)

アラビヤの唄(訳詞:堀内敬三、作曲:F・フィッシャー、歌唱:二村定一) 昭和初期に大ヒットした和製ジャズの流行歌。1927年(昭和2年)、アメリカ留学から帰国した音楽評論家の堀内敬三が輸入された「あお空(My Blue Heaven)」「アラビヤの唄」に訳詞をつけて出版。同年これが浅草オペラの二村定一によって歌われて大ヒットする。1929年にはマキノプロダクションが同名の映画を製作。近年では2004年度のNHK教育テレビ「アラビア語会話」のテーマソングとして復活、再び脚光を浴びた(YouTube)

丘を越えて8東京行進曲(作詞:西条八十、作曲:中山晋平、歌唱:佐藤千夜子)  モボ・モガが行き交う昭和初期の明るく開放的な銀座を歌った昭和歌謡を代表する名曲。西条八十、中山晋平という黄金コンビによって作詞作曲され、佐藤千夜子によって歌われて人気を呼び、菊池寛が雑誌「キング」に連載した小説を原作とする同名の映画「東京行進曲」(溝口健二監督)の主題歌(日本映画の主題歌第1号)となって25万枚を売り上げるヒットとなった。

君恋し(作詞:時雨音羽、作曲:佐々紅華、歌唱:二村定一)  「東京行進曲」や「波浮の港」等と並ぶ、流行歌のレコード草創期を飾る名曲。1928年(昭和3年)、「アラビヤの唄」と同じく二村定一の歌でレコード発売されて大ヒットした。戦後の1961年(昭和38年)にはフランク永井がこの曲をカバーしてレコード発売、同年の日本レコード大賞グランプリに輝く偉業を達成している。いまでも懐メロ歌謡の定番中の定番で、カラオケでも現役の人気曲である。(YouTube)

朝鮮北境警備の歌(作詞・作曲:星善四郎)  1927年(昭和2年)に誕生した軍国歌謡。詳細は不明だが、1930年(昭和5年)に作られた「酋長の娘」などと同様に宴席等で歌われたものと思われる。本作では、葉子の母を演じた余貴美子の三味線に乗せて菊池寛を演じる西田敏行が歌っている。

梅は咲いたか(江戸端唄)  「梅は咲いたか桜はまだかいな」で有名な、作詞作曲不詳の江戸端唄。昭和初期の芸者歌手、市丸によって歌われ人気を博した。本作では、葉子の母の余貴美子が見事な弾き語りを披露している。(YouTube)

ラヂオ體操其一(作曲:福井直秋、号令:江木理一)  1928年(昭和3年)に逓信省簡易保険局が制定したのが始まりで、国民の健康増進と衛生思想の啓蒙を目的に、NHKラヂオで放送された。NHKアナウンサーの江木理一が軍隊調の掛け声を掛けている。

<モダンの時代の江戸情緒>

丘を越えて9江戸地口・東京言葉
■有難山のほととぎす:「ありがとう」の意味だが、シャレてこう感謝を表現した。
■女やもめにゃ花が咲く:江戸時代の男女の人口比率はほぼ2対1。こうした男女の需給関係を反映して「男やもめにゃ蛆がわく。女やもめにゃ花が咲く」の言葉が成立したようである。
■根っ桐、葉っ桐、これっ桐:「これっきり」の強調表現。講談「旗本退屈男」、落語「出来心」などに登場し、一般に広まる。
■あら、マッちゃん、デベソの宙返り:「あら、まあ」の驚きの表現を「あら、マッちゃん」と洒落ている。マッちゃんとは、無声映画時代のチャンバラスター尾上松之助のこととの説もある。デベソの宙返りとはあり得ないことの例えだろう。
■電信柱が高いのも、角のポストが赤いのも、みんな私が悪いのよ:「電信柱が高いのも」の前に「空がこんなに青いのも」が加わって全文。どうせ私が悪いと開き直った表現。落語の都々逸が出典か。
■初王手、目の薬:初王手は、目薬くらいのもので、大したものではない、という意味の将棋の格言。
■その手は桑名の焼き蛤:その手にはひっかからないことをしゃれて言う地口。その手は喰わないと桑名(三重県)名物の焼き蛤を掛けた言葉。
■たまげた、駒下駄、東下駄:たまげたの「げた」に引っかけた地口。駒下駄とはひとつの材から台と歯を一緒にくり抜いた歯の低い下駄。東下駄とは畳表のついた婦人用の下駄。
■びっくり下谷の広徳寺:江戸時代の文人、太田蜀山人の「恐れ入谷の鬼子母神、びっくり下谷の広徳寺」が出典。広徳寺は将軍家剣道師範、柳生但馬守宗矩の墓があった。現在は台東区役所が建っている。
■恐れ入谷の鬼子母神:前記の通り。葉子のように、江戸っ子は「きしぼじん」ではなく「きちもじん」と発音する。
■嘘を築地のご門跡:付けたし言葉の地口。築地ご門跡とは、築地本願寺のこと。
■そうで有馬の水天宮:水天宮といえば東京・人形町だが、もとは九州久留米の藩主・有馬氏の藩邸に鎮座していたものだったという。そこから「そうで有馬の水天宮」あるいは「どうで有馬の水天宮」の地口が生まれた。

C R E D I T

Cast
西田敏行,池脇千鶴,西島秀俊,
余貴美子,嶋田久作,猪野学,利重剛,戸田昌宏,中田寛美,下元史朗,
金山一彦,石井苗子,猪瀬直樹(特別出演),峰岸徹

Staff
監督:高橋伴明 脚本:今野勉 原作:猪瀬直樹「こころの王国」(文春文庫)
企画:内田ゆき プロデューサー:日下部孝一 共同プロデューサー:日下部圭子
撮影:小松原茂 照明:才木勝 録音:福田伸 美術:山本修身 装飾:藤原慎二
衣裳:水野美樹子 ヘアメイク:竹間美幸 編集:河原弘志 記録:阿保知香子
助監督:柿沼竹生 制作担当:持田一政 ラインプロデューサー:塩川剛史
アソシエートプロデューサー:小林正知,堀川行歳
主題歌:つじあやの「丘を越えて」(SPEEDSTAR RECORDS)
協力:株式会社文藝春秋 菊池寛記念館
協賛:日本製紙株式会社 芸術文化振興基金助成事業芸術文化振興基金助成事業
制作:ゼアリズエンタープライズ 制作協力:シネハウス 製作:「丘を越えて」製作委員会
2008年/35ミリ/カラー/アメリカンビスタ/DTSステレオ/1時間54分
(c) 「丘を越えて」製作委員会2008
http://www.okaokoete.com/

2008年5月17日、シネスイッチ銀座、新宿バルト9
ほか全国ロードショー!!

こころの王国―菊池寛と文藝春秋の誕生 (文春文庫 い 17-15) (文庫)
【原作】こころの王国
―菊池寛と文藝春秋の誕生

文藝春秋
猪瀬 直樹(著)
発売日:2008-01-10
おすすめ度:おすすめ度5.0
おすすめ度5.0 「こころ」VS.「心の王國」
おすすめ度5.0 こういう人だったんだ。
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2008/03/26/18:55 | トラックバック (1)
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