塚本 晋也 (監督) 映画『斬、』について【5/5】
2018年11月24日(土)よりユーロスペースほか全国公開!
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――撮影の後には、『鉄男』(89)からずっと音楽を作っていた石川忠さんが亡くなられてしまいましたね。塚本監督がどんなに辛い想いをされていたかと。
塚本 ピンとこなくて納得できなかったですね。亡くなったと聞いて、近い仲間うちで急にみんなで押しかけるのも迷惑だろうから示し合わせて行こうと相談していたにも関わらず、次の日に行ってしまいました。姿が変わってしまう前に会いたくて。奥様にお棺を開けてもらって顔を見ても、やっぱり納得がいかなかったです。
――とても急でしたね。『野火』のときは映画祭やイベントにも精力的に参加してくれていたのですが。
塚本 長いこと体調が悪くて心配していたんです。『野火』でベネチア国際映画祭に行ったのも、今思うと「体調が悪いから今行っておこう」というのがあったのかもしれないですね。そういう感じだったので、『斬、』の音楽を作ってもらうことができなくなってしまいました。撮影までは怒涛の日々を過ごしていましたが、仕上げの時間をたっぷり取って、石川さんの音楽を、『鉄男』から全部聴いていって貼り付けていきました。
――発表済みの曲も使っているんですね。
塚本 はい。最初にCDを全部聴いて、それで済んだらよかったんですが、済まなかったのでCDになっていない音源を聴いて、さらにおうちにあったまだ曲になる前の音を奥様にもらって、場面に当てはめて付けました。それが石川さんの鎮魂に値する期間になりました。それでもまだ納得できないですね。ちょっと特徴のある声の感じだとか、まだ生々しく残っていて、そのときも普通に相談しながらやっている感じでした。
――作った時代はいろいろでも、各場面にガッチリ組み合わさっていました。
塚本 そうですね、今までの映画音楽のメドレーのようにはならないように、『斬、』の音楽と聴こえるように気を遣いました。
――『斬、』は塚本監督の映画の集大成ともいうべき作品になりましたが、ご自分ではどんな映画を作り上げたと思っていますか?
塚本 「叫び」ですね。今のこの時代に対して、叫び声を上げざるを得なくて上げてしまいました。なんとかみなさんに刺さってくれたらいいなと思います。
――まもなく公開を迎えるにあたって、今のお気持ちはいかがですか?
塚本 やることはやったという感じですね。今、大きな映画館でみなさんが見ているようなタイプの映画ではないと思いますが、そういう映画を作るために信頼する人たちが心血を注いでくださったことに大きな感謝があります。お客さんは見終わって、居心地の悪さも感じるかと思いますが、その居心地の悪さの理由をみんなで考えてもらえたら、と思います。そこにこれからの時代を生きていく人たちへの大事なメッセージを込めたつもりです。
( 2018年11月7日 有楽町・日本外国特派員協会で 取材:深谷直子 )
監督、脚本、撮影、編集、製作:塚本晋也 出演:池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本晋也
製作:海獣シアター/配給:新日本映画社 © SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
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