『ぼっちゃん』トークイベントレポート
歓談/『ぼっちゃん』、そして『さよなら渓谷』
ゲスト:大西信満×水澤紳吾×大森立嗣監督

『ぼっちゃん』トークイベント/ゲスト:大西信満×水澤紳吾×大森立嗣監督

http://www.botchan-movie.com/

渋谷ユーロスペースにて公開中、他全国順次ロードショー!
5月4日(土)より吉祥寺・バウスシアターにて公開決定

大森立嗣監督の『ぼっちゃん』を上映中の渋谷・ユーロスペースで、4月7日、大森監督と本作の主人公の梶役・水澤紳吾さん、そして監督の次回作『さよなら渓谷』で主演を務める大西信満さんが登壇するトークイベントが行われた。(取材:深谷直子)

大西 大森監督の映画って「分からないから作る」という映画であって、強い思いがあってどうしても世の中に伝えたいということには興味がないのではないかなっていう気がします。

大森 うん、それはないかな。役者に対しても同じなんだけど、僕が頭で思っていることは所詮この頭の中のことでしかないんだよね。だけど大西くんや水澤とかが来ることによって全然僕が思っていることや脚本とは違う反応が出てきて、そのことの方が面白いっていうふうに思っちゃう。「どう思うか?」っていうことを大事にしたいと思っている。ものを作るときも同じで、分からないから探求するっていうふうにしたいよね。

『ぼっちゃん』水澤 大西さんは、監督がそういうスタンスで演出されるので、分からないまま現場に立っていたこともあるんですか?

大西 分からないところは分からないまま立っていてくれというのが監督のやり方なので、相手役も含めてお互い生で行って、どの方向に反射するか計算とかはしませんでした。それは監督の仕事だと思っているから、勝手に身体と感情が動くままに演じて、ダメだったらダメだと言うだろうと、そういう信頼関係があるからできるんだろうと思います。そういう意味では『ぼっちゃん』の方が難しいのかなと思っていて。特に叫びというのは日常ではなかなかしないことだけどこの作品の中で必要なことであって、それをやらなきゃいけないというのはどうなのかなと。この作品を観ていて、正直最初は叫びをうるさいと感じていたんだけど、途中からどんどん切実に思えていくというのがすごいなと自分は思っていて、計算やテクニックでできるわけではないと思うので、それは水澤くんはどうだった?

水澤 僕も分からないまま立っていました。いろんなところで言ってるんですけど、叫びが自分の中では全部失敗だと思っていたんです。カメラマンや共演者の方が引いているのが感じられて、引かれるぐらいのいびつさというのがどうなっているのかなと。でも基本的にものすごく信頼してくれるし信頼できる、絶対支えてくれるという大森監督なので、いびつだろうが、自分の中でも気持ち悪かろうが、「叫ぶ」は「叫ぶ」だ、っていう感じでした。

大西 感じたままやってくれということだと、水澤くんが「ここでは叫ばないから」っていうふうにしたときは、監督はどうするんですか?

大森 「何で?」って言う。で、「何でそういうふうに思うか」っていうことを二人で考える。それで水澤が「そうじゃないんだよ、そこはこっちなんだよ」って言うんだったら「ああ、そうなんだ」って作っていく。もしかしたら水澤の方が正しいときもあるんだよ、そこは叫ばないっていうのが。そこはゆるやかにしておく。

大西 じゃあ『ぼっちゃん』では脚本が変わったところもあるんですか?

大森 大きくは変わってないけど、長回ししたりすると、役者って細かいところとか勝手に動きたいときは動くじゃない? そこはホンとは違うところが気になっても全然いいし。でも台詞は大きくは変わっていないよ。

水澤 『ぼっちゃん』のラスト・シーンはずっと監督は考えてくれていて、「どうする?水澤」って訊いてくれていましたね。

大西 これは順撮りなんですか?

大森 いや全然。初日に撮ったのは梶と田中が抱き合う山場のシーンですよ。

大西 それはちょっと意地悪ですね。(大西さんが付き人をしていた)原田芳雄さんが言っていたんですけど、演じる側としたら「いきなりそんなところやれって言われても分からないよ」って納得しないで不安を抱えたままやることが映画の現場の中ではえてしてあって、でもそうしたときに完成したのを観ると、いい意味での飛躍になっていることがあるっていうことをよく芳雄さんが言っていたんです。自分はそういう経験はないんだけど、そういうことなのかもしれないなと。

渕上泰史さん
渕上泰史さん
と、演出論についてさらに興味深くお話が広がろうとしていたときに残念ながら時間切れになってしまったが、俳優たちを信頼してともに大きなテーマと取り組もうと柔軟に挑戦する大森監督と、真摯に向き合った水澤さん、大西さんの映画作りへの姿勢が伝わるトークイベントだった。最後に、イベント予定のない回にも劇場に足を運んでひとりで舞台挨拶をしていたことが何度かあり、この回も来場していた渕上泰史さんが監督に呼ばれて登壇し、「岡田改め黒岩役の渕上です。今日はありがとうございました。まだまだこの作品は続きますので、観ていただいたみなさんには友人の方に伝えていただけたら、僕の仕事もよりよいものになっていくと思います」と、役とは違い親しみある挨拶をしてイベントが締めくくられた。
『ぼっちゃん』はユーロスペースで現在10:20からの1回上映中。また、5月4日から吉祥寺・バウスシアターでの公開が急きょ決まった。

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( 2013年4月7日 渋谷・ユーロスペースで 取材:深谷直子 )

ぼっちゃん 日本 / 2012 / 130分 / DCP / カラー / 1:1.85
監督・脚本:大森立嗣
プロデューサー:村岡伸一郎,近藤貴彦 撮影:深谷敦彦 美術:黒川通利 録音:島津未来介 音楽:大友良英
編集:早野亮 衣装助言:伊賀大介 ヘアメイク:佐々木裕 音響効果:伊藤進一
アニメーション:蛹ナヲヤ 共同脚本:土屋豪護 助監督:加治屋彰人
出演:水澤紳吾,宇野祥平,淵上泰史,田村愛,鈴木晋介,遠藤雅,三浦景虎,日向丈,今泉惠美子,高橋真由美,小川朝子,
津和孝行,川畑和雄,石鍋正寿,中村文夫,塚田丈夫,松下貞治,堀杏子,町屋友康,伊藤陽子
声の出演:長尾卓磨,鈴木将一朗,小嶋喜生,久保麻里菜,岡部尚,南場尚,大川原直太,池浪玄八
製作・配給:アパッチ ©Apach Inc.
公式サイト 公式twitter

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2013/04/22/20:23 | トラックバック (0)
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