インタビュー
榊英雄監督/『捨てがたき人々』

榊 英雄 (監督) 映画『捨てがたき人々』について

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2014年6月7日(土)より、テアトル新宿ほか全国順次ロードショー

(取材:後河大貴)

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榊英雄監督2――三輪さんに関してはいかがでしょうか。

榊 京子役を決めるのは難航しました。本作は裸を見せることが目的ではないけど、性描写は必要不可欠です。そこで急遽、本作のキャスティングプロデューサーを務めてくれた星久美子さんに入ってもらった。すると、星さんが「三輪さんはどう?」と提案してくれたんです。「そう来たか!面白い」と思ったんですけど、一方で違和感もあった。ただ、三輪さんご本人にお会いしてみると、そんな違和感は瞬時に払拭されてしまった。なにかドロッとしたものを感じたんですよ。肉欲とか性欲ではないけど、自分の体が熱くなるのを感じたんです。
ただ、原作の京子はブサイクなんだけど、三輪さんは美人じゃないですか。それが懸案ではあったんだけど、イン直前に、チーフ助監督の山口さんが「なんらかの負荷をつけましょう」と提案してくれて。僕としては、「足を引きずるとか、刺青があるとか、そういうのは嫌なんだけどね」と。でも山口さんは、あくまでも「監督の生理はわかるけど、負荷がないとお客さんは作品世界が信用できない可能性がある」と。そこで、顔に痣をつけることにしたんです。五島列島は、かつてのカネミ油症事件の影響で、痣のある人が多いので。

――三輪さんには、“ドS全開”の演出をされたそうですね。

榊 本能的に出ちゃいましたね。僕は男なので、結局は女性のことがわからないわけですよ。“女性を描けないと映画監督は大成しない”とはよく言いますが、実際問題として、女性の演出はすごく難しい。だから、リハーサルでは、細かく動きの指示を出したり、完全に放置してみたり、試行錯誤を繰り返しましたね。いろいろ悩みましたが、最後は「やっぱり自分らしく接するしかないんだ」と腹を括った。で、三輪さんがこれまでに培ってきた芝居のスタイルを捨ててもらうことから始めたんです。
三輪さんは“ホラークイーン”って言われるぐらいですから、ヴィジュアルで見せる型の芝居に慣れていらっしゃると思うんです。ただ、僕の現場においては、そうしたことを求めているわけではなかった。だから、三輪さんは戸惑いがあったと思います。けど、僕はあえて気遣いはしないで、しらんぷりしてました。まずは、通常の演出家と女優という関係からブチ壊したかったんです。色々と辛かったと思いますが、こうした格闘の果てに、作品が残っているわけで。作品を見てもらえば、三輪さんも納得してくれるんじゃないかな。

『捨てがたき人々』――勇介と京子のみならず、脇を固める登場人物たちはひと癖もふた癖もある曲者揃いです。演出でご苦労された点があれば、お聞かせください。

榊 われわれ現実に生きている人間は、みんな曲者だと思うんですよ。普段はうまくペルソナで誤魔化してるんですけど。そう考えてみると、僕はすべての人間が愛おしいキャラクターだと思うんです。ただ、映画である以上は、現実に生きてる役者さんたちに当て嵌めなきゃいけない。だから、やっぱりキャスティングが一番重要になってくるんですね。それが最高に楽しいんですけど、最高の悩みどころではありました。むろん、現実的な条件も作用してくるんですが、そのなかで偶然が生む化学反応こそが、映画作りの醍醐味だと思うんです。
例えば、「丸吉水産の社長を誰にするか」となったさいに、スタッフから田口トモロヲさんの名前が挙がる。でも、「ふつうに考えると出てくれないよね」となる。それでも駄目元でお願いしてみる。そうしたら、なんと田口さんは出演を快諾してくれた。もう吃驚仰天ですよ。田口トモロヲさんといえば、僕なんかはいまだに緊張しちゃうようなお名前なわけです。だからこそ、「ここはひとつ胸を借りるつもりで格闘しよう」と奮起して。
で、吉田チーフ役の滝藤賢一さん然り、吉田和江役の内田滋さん然り、そこは星久美子さんの素晴らしさですよね。僕の好きな役者さんの傾向を熟知しているし、なによりも愛がある。彼女に「絶対この人がいいから」って言われると、一も二もなく「乗った!」と。あと、あかね役の美保純さんに関しては、かつて『ピンクのカーテン』で主演をやられた縁もあって、秋山命さんの強い思い入れがあった。結果として、いい面構えの方々に集まってもらえました。そこは本当に恵まれていましたね。
ですから、原作の登場人物に比しても遜色ない、ひと癖もふた癖もある役者さんたちが揃ったので、彼らに現場に立ってもらって、その化学反応を見るのは楽しかったですね。この役者陣に任せておけば、じつに多彩な芝居が出てくるので。あとは上積みで、こちらの要望を伝えるだけの作業でした。みなさん芯がありながら、言葉を投げると粘度細工のように芝居を変えてくれるわけです。監督としては「とてもやりがいのある撮影」といった感じでしたね。

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捨てがたき人々 2012年/日本/カラー/HD/5.1ch/123 分/R18+
監督:榊英雄 原作:ジョージ秋山「捨てがたき人々」(幻冬舎文庫)
出演:大森南朋,三輪ひとみ,内田慈,滝藤賢一,佐藤蛾次郎,諏訪太朗,寺島進,荒戸源次郎,伊藤洋三郎,美保純,田口トモロヲ
脚本:秋山命 音楽:榊いずみ 撮影:宮川幸三 美術:井上心平 照明:木村明生 録音:永口靖
編集:清野英樹 助監督:山口雄也 制作担当:刈谷真 主題歌:「蜘蛛の糸」榊いずみ
制作プロダクション:ファミリーツリー 配給・宣伝:アークエンタテインメント
© 2012「捨てがたき人々」製作委員会
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2014年6月7日(土)より、テアトル新宿ほか全国順次ロードショー

銭ゲバ(上): 1 (幻冬舎文庫 し 20-4) [Kindle版] 銭ゲバ(上): 1 (幻冬舎文庫 し 20-4) [Kindle版]
アシュラ(上) (幻冬舎文庫 (し-20-2)) [Kindle版] アシュラ(上) (幻冬舎文庫 (し-20-2)) [Kindle版]

2014/06/03/23:42 | BBS | トラックバック (0)
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