インタビュー
岩井俊二監督/『リップヴァンウィンクルの花嫁』

岩井 俊二 (監督)
映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』について【7/8】

2016年3月26日(土)より全国公開中

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:わたなべりんたろう)

『リップヴァンウィンクルの花嫁』場面12――ロックの会でも岩井さんは壇上に上がってもずっと人の話を聞いていて、話を振られない限りは話さない。しかも話す時は「ぼくはよく分からないんだけど、ここまで聞いていて」などと正直な前置きをしてから個人の意見として話します。でも学者や政治家の方などには断定で言う人が多いです。

岩井 断定の怖さと言うか、その人が思考停止できたから断定するわけで。そこに思考実験が残っていたら断定できないわけです。撮影現場では「何時から何時までこの場所では撮影」とか決定事項が多いんだけど、決定事項の余白で自分をどれだけ保って判断できるのかが大事という。余裕がないと決定事項で進むしかないから「これはこうでこうでお願いします」しかなくなる。だから余白で思考実験で「ああでもない、こうでもない」「これもありなんじゃないか」と出来るわけで。

――過酷な現場だったという『Love Letter』の時点では、まだそれがうまく出来ていなくてスタッフが一部離脱してしまったんでしょうか。

岩井 これが確立できたのは『ハルフウェイ』ですね。『リリイ・シュシュのすべて』で本格化して「ハルフウェイ」で確立。

――『スワロウテイル』では出来ていなかった。

岩井 『スワロウテイル』はまだですね。

――『スワロウテイル』のメイキングを見たら岩井さんが現場で殺気だっていたのが映っていましたが、今はああいう現場の制圧感はなく、岩井さんが余裕がある現場は『ハルフウェイ』から確立していったと。

ハルフウェイ [DVD] スワロウテイル [Blu-ray] 四月物語 [Blu-ray] 花とアリス [Blu-ray]岩井 違う意味で制圧というか現場に緊張感は今もあるけれども『スワロウテイル』『四月物語』までは好きなことはもちろんやれてはいたんだけど、それはあくまで作品としてやれていただけで、現場で自分に与えられていた持ち時間は1日2時間弱ぐらいでした。自分が2時間弱ということは俳優も2時間弱ということで、残りは技術スタッフの美術や照明が時間を費やしていて。これが普通の撮影現場だと思うんですけども。俳優は待つことが仕事だとか言われて待っているという、まったく融通のきかない現場になる。そうでなかったのは相米監督の現場ぐらいで。演技に思考実験を従来の現場でするから撮影の時間が無くなるという。だから決まったら1テイクで長回しで撮るという。

――時間がなくテイク数を取れないのはしんどいですよね。

岩井 本当だったらもう1日与えて決まった演技を繰り返し繰り返しさせて撮っていくことも出来る。そうすれば絵を重ねていくことも出来る。立体感ももっと出る。でも映画の現場は各部の持ち時間があるから。何かで使うと何かを犠牲にするしかない。そこから逃れられる監督はいないから、監督はみんな苦しむことになるんだけど。そこをコントロールするためには監督だけやっていたら出来ないんだというのが『Love Letter』『スワロウテイル』をやった自分なりの回答。結果的にプロデュース、アカウンティング(資金計算)もするし、現場で照明もやるようになったのが『リリイ・シュシュのすべて』。照明さんに取られていた時間が自分に返ってくるようになった。演技に使うか照明に使うかを自分で自由に選択できるようになった。それで使わないシーンも多く撮るようになったのも『リリイ・シュシュのすべて』から。俳優は子どもたちが多かったので言った台詞しか言えなくてアドリブがあまりできないから「こういう台詞言ってみて」とやってもらった。『花とアリス』はそこまで出来たときもあれば、そうでないときもあった。なぜかというと物語が意外としっかりしていたからで。物語を積み上げていくうえで自由にあまり出来なかった。『ハルフウェイ』は台本がかなり短かった。だからそこに盛っていった。毎日、台本でのノルマはすぐ終わってしまうから自由にいろいろ出来た。アドリブばかりだし、半分メイキングのような映画だった。

――『ハルフウェイ』は生生しさがとても面白かったです。

岩井 今回はアドリブがそんなに多かったわけではないけど、こちらの持ち時間がふんだんにあるので結果どうなるかというと常に俳優に演技をさせて常に撮っているという。1日12時間あると8時間は俳優が芝居していることになると。だから俳優の負担がものすごいです。照明の準備を入れてブレイクさせてよ(休憩入れさせてよ)と自分が思ってしまうぐらいで、ある意味で可哀相だったかも(笑)。予算がそれほどでなかったからそういうわけにもいかず、俳優さんには頑張ってもらいました。日本の仕組みでやると、各技術部が職人的に自分の仕事をしたがる傾向がまだある。アメリカなんかだと監督のハンドリング上に奉仕してチームワークで動くから照明のセッテイングとかも楽なんだけど。

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リップヴァンウィンクルの花嫁
監督・脚本:岩井俊二
エグゼクティブプロデューサー:杉田成道 プロデューサー:宮川朋之,水野昌,紀伊宗之
原作:岩井俊二『リップヴァンウィンクルの花嫁』(文藝春秋刊)
撮影:神戸千木 美術:部谷京子 スタイリスト:申谷弘美 メイク:外丸愛 音楽監督:桑原まこ
出演:黒木華,綾野剛,Cocco,原日出子,地曵豪,和田聰宏,金田明夫,毬谷友子,佐生有語,夏目ナナ,りりィ
制作プロダクション:ロックウェルアイズ 配給:東映 © RVWフィルムパートナーズ
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2016年3月26日(土)より全国公開中

2016/03/31/19:17 | BBS | トラックバック (0)
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