フリーダ・ケリー
映画「愛しのフリーダ」について
2014年1月30日まで角川シネマ有楽町にて公開、ほか全国ロードショー
公開中の「愛しのフリーダ」はザ・ビートルズの秘書兼ファンクラブ責任者を11年間務めたフリーダ・ケリーさんを描いた珠玉のドキュメンタリーだ。ザ・ビートルズのメンバーから妹のように慕われたフリーダさんだが一切ザ・ビートルズのことを語らず、今作で初めて当時の様子を語った。来日したフリーダさんにインタビューをすることができたのでここにお届けする。
(取材:わたなべりんたろう)
STORY 1961年、リヴァプール。 17歳のフリーダ・ケリーは会社の昼休みに同僚に連れられてキャヴァーン・クラブへ出かけた。そこに居たのは地下の小さなステージで演奏する革ジャンを着た4人組。その音楽を聞いたフリーダは衝撃を受けた。これまで聞いたことの無い音楽だったのだ。何度も何度もクラブに通い、バンドメンバーとも次第に親しくなっていったフリーダ。そんなある日、バンドマネージャーのブライアン・エプスタインから「会社を作るんだ、秘書にならないか?」と声をかけられる。フリーダは自分が大好きなバンドのために働けるというだけで夢心地だった。やがて彼らが世界一有名なバンドになるとも知らずに ……。
――ビートルズのファンにはフリーダさんの存在は知られていましたが、50年近く沈黙を守り続けてきました。なぜ今になってビートルズと自分自身について語ろうと思ったのでしょうか?
フリーダ 何も語らなったのは、私の話なんか誰も興味が無いと思ったの(笑)。仕事で知ったことだし、仕事の前に彼らとは親密な友達でもあったし、そういうことを語るのは友達としてよくないと思ったのもあったわ。話そうと思ったきっかけはアメリカのビートルズのファンが企画した「ビートルズ・フェスティバル」というイベントに呼ばれて参加した時に、多くのビートルズファンが私のことを覚えていてくれて、「えー!? まだ私に興味を持ってくださっている人がこんなにたくさんいるの?」と驚かされたんです。そんなビートルズ・ファンの興味にこたえてあげたいと考えたのと初孫が生まれて、彼に私の人生を知ってもらいたいと思ったこともあります。人生を振り返る時期に来たのね(笑)。
――映画の中でもメンバーだけでなく、メンバーの家族と親密になったことが描かれていますね。
フリーダ そう、そのことも話さない理由として大きかったわ。仕事でありながら関わっている人たちは皆、家族だったの。メンバーの家族とあれだけ親密だったのは私しかいなかったと思うわ。
――フリーダさんの性格の成せることだったんでしょうね。
フリーダ うーん、はっきり分からないけど皆いい人だったのは確かね。映画でも描かれているけど、ジョージ(・ハリソン)の家族とは本当に良くしてもらったわ。
――映画でも出てきますが貴重なビートルズグッズをファンなどにプレゼントしていて、手許にはあまり残していませんね。そういうグッズやビートルズ秘話を語れば名声や富も得られたのにしなかったのはなぜですか?
フリーダ ビートルズグッズをファンなどにプレゼントしたのは好きな人が持っていれば一番いいと思うから。
後から、あんなに価値が出るなんて思わなかったけど(笑)。お金は大切だけれど、お金は私の人生を支配するものではない。暮らしていけるだけのお金を日々の秘書の仕事で稼いでいますから。
お金と同じで名声にも全く興味がないんです。名声やお金よりも、彼らと過ごした時間が大切でした。ビートルズを利用して金もうけに走った人は確かにいました。「なぜ、あなたはそうしなかったのか?」と聞かれたら「それが私という人間だから」としか答えようがないです。それが私なんです。
――デビュー前のビートルズを観た時にどこにそんなに魅かれたんですか?
フリーダ まず彼らは当時流行っていた他の音楽と全く違っていました。エナジーがあるというか...言葉にできないですが、とにかく魅力があった。最初に観た時は昼休みで5分だけでしたが「また観たい!」と思ってキャヴァーン・クラブのスケジュールを何度もチェックしに行きました。そこまでするほど、彼らの音楽の魅力にハマりました。
――それは音楽だけですか?ファッションも?
フリーダ 音楽もよかったけど、ライブの演奏、声、ファッションなど全てが新しかった。少し上でしたが同世代の新しい音楽でした。ステージ上ではカリスマ性がありましたがステージを降りたら普通の若者なのも良かったですね。そのときは秘書兼ファンクラブ責任者を11年もやるとは思わなかったけど。
――その後は映画に描かれる通りですが、人との出会いが人生を変えるのは、こちらも経験したことがあります。ブライアン・エプスタインから「ビートルズの秘書をやらないか?」と声をかけられてからの11年間をどう振り返りますか?
フリーダ 人との出会いは確かに大事だわ。私が身をもって経験した通りだわ(笑)。でも、私は本当にラッキーだったと思うの。あの時、あの場所にいたからああいうラッキーなことが起こった。もしかしたら他の人に起こったことかもしれない。でも、私に起こった。それを運命という人もいるかもしれないけど、ラッキーだったと今になって思うわ。当時の普通の女の子が経験できないようなことをいくつもできたのだから。
――ビートルズがアメリカから凱旋帰国してリヴァプールでパレードした時に、ビートルズの人気に本当に驚いたと映画に描かれていました。
フリーダ あれだけ大勢の人がパレードに集まり、リヴァプール市長まで参列するんだから、それは驚くわ(笑)。初めてビートルズの人気の大きさを実際に目にした日ね。
――「愛しのフリーダ」を観てどう思いましたか?
フリーダ まず、この映画のことがとても気に入って好きになりました。自分が出ている場面は好きではありませんが(笑)、それ以外は本当に大好きです。こうやって日本に来ることも出来たから、映画には感謝しています(笑)。
キャシー・マッケイブ(同席していたプロデューサー) ウィッシュリストにも日本に行きたいと彼女は書いていたの。
フリーダ そう、夢が叶ったわ。スカイツリーと皇居に行ったわ。明日はポールの東京ドームのコンサートにも行くの。全て、この映画のおかげね(笑)。
( 取材:わたなべりんたろう 撮影:高瀬樹利亜 )
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- 監督:マーティン・スコセッシ
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