映画祭情報&レポート
アナ・マルガリータ・アルベロ監督トークショーレポート/『ヴァギナ・ウルフなんかこわくない』

第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 『ヴァギナ・ウルフなんかこわくない』
アナ・マルガリータ・アルベロ 監督トークショー

(取材:深谷直子)

『ヴァギナ・ウルフなんかこわくない』場面1 『ヴァギナ・ウルフなんかこわくない』場面2北原 今は本当にヴァギナは事件になっていますからね。日本で女性アーティストが逮捕されたというニュースを聞いてどう思われましたか?

アルベロ 今回のケースはひとつの警告だと思います。社会は進化しているかと思えばまったくそういうことはない。時代が進んでいると言ってもここにたどり着くまでは非常に大きなものがあり、例えばフランスなどで同性婚とかあらゆるセクシャリティに同等の権利を与えようという動きが出てきて成功を収めたと言われていますが、実際は非常に時間がかかり様々な問題も出てきています。私がレズビアンの映画を撮り続けているのは、社会に対し、真に目指す社会までには非常に長い道のりがあるということを伝えていきたいからです。

北原 本当にまだヴァギナもレズビアンもタブーなんだなということを思い知らされることは多いのですが、さっき監督とお話していて「日本のレズビアン映画の監督には誰がいますか?」と訊かれたときに、スタッフも一人も思い出せなかったんですよ。それぐらいアメリカでも、アナ監督が生きている世界でも、こういう作品を作ることは難しいんじゃないかと感じたんですが、今後どのように映画を作っていきたいですか? また映画を作りたいと今思っている方にはどんなメッセージをいただけますか?

アルベロ まず映画を作ろうと思っている人に対して、私が30か国以上の数々の映画祭に参加し、こうした映画を作り続けているのは、映画というのは非常に人々を勇気づけたり影響を与える有効な手段であるからです。映画を作ることによっていろんなところに行けるし、いろんな人に違った話をしてもらうことができる。そういった意味で映画を作ることをお勧めしたいです。また、私自身のことでは、過去17年間いろんな国の映画祭に参加してきているのですが、レズビアン映画というのはどんどん少なくなってきて、最近では本当に少ししかないんです。単独では作られるんですがその第2弾・第3弾と続いていかない状況があり、例えばロサンゼルスでの映画祭でも非常に古い映画ばかりが上映されていたり、「Lの世界」(04~09)というテレビドラマは日本でも知られていると思うのですが、それ自体10年も前の作品で新しいものが全然出てこない状況なんですね。それを思って本日ここに来てくれているみなさんにあらためてお礼を申し上げたいと思います。おカネを払ってチケットを買ってこの映画を観に来てくれたということで、映画というショービジネスは映画を作る人、増殖する人、そしてオーディエンスというサークルになっているんですが、その輪の中に入ってきてくださることによって、こうした映画を作り続けることができるのです。私はレズビアン映画を最も定期的に作ってきている監督の一人だと思うんですが、過去5年間ガレージに住んでいました。こうしてオーディエンスから支援を得ることで、こうした産業にどんどん動きが出てくるんじゃないかと思います。

北原 ご苦労をしながら映画を撮り続ける監督には本当に感謝を申し上げたいと思います。観客のみなさんもいろいろお聞きしたいことがあると思いますので、ここで質問を募りたいと思います。

観客 お母さんがアナをマイアミからロスへ車で迎えに来たのがすごいなと思いました。結局アナはマイアミには帰らないのですが。強い女性という観点から、キューバン・マザーの強さというものをどうお感じかお聞かせいただけますか?

アナ・マルガリータ・アルベロ監督2アルベロ この映画で伝えたかったのは、母親といい関係を持つことが大事であるということです。この映画はドキュメンタリーではなく、私の人生の要素を使っているのですが私自身とは違います。ただこの映画の中ではステレオタイプというのを使いたいと思っていました。アナはフェミニストでガレージに住んでいる。こうしたステレオタイプだとある一定の理由があって存在しているので、私はあえてそれを使いたかったのです。例えば困っているときに駆けつけてくれる誰かというのは母親だろうと。親友のペネロペが言っていたように母親が愛を押し付けていて、電話をかけ過ぎてきてうっとうしいなあと思うようなことがあってもそれは母親が娘を愛しているからであって、そうしたステレオタイプというものをこの映画で使ったということです。

観客 非常に素晴らしい映画でした。次回作についてお聞かせいただきたいと思います。

アルベロ ありがとうございます。この映画は明日もこの映画祭で上映されるので、ぜひお友達などにお伝えいただきたいと思います。口コミというのはとても大事で、作品を配給するのはとても難しいことなのでこうした映画祭には非常に感謝しています。次回作はフランスで20世紀初頭を舞台とした映画をひとつ制作中であるのと、もうひとつフランスのテレビ局でドキュメンタリーを作っています。そのテーマはフェミニストとポップ・カルチャーの関係についてです。現在ポップ・アイコンたちは「私はフェミニストではないですから」という言い方をすることが多いですが、実際フェミニズムというのはどういう意味を持つものであるかということをテーマにしてドキュメンタリーを制作しています。

北原 どうもありがとうございました。最後に監督から一言いただく時間もなくなってしまいましたが、監督は今夜「ゴールド・フィンガー」(女性オンリーのパーティー)に行きたいと思っているそうなので、そちらでぜひ(笑)。

(客席から歓声)

アルベロ イエ~イ(笑)! 私はあと1時間ほど会場におりますので、もし質問などありましたら話しかけてください。それから原宿に買い物に行きたいので、ぜひお手伝いをお願いしたいです(笑)。

( 2014年7月19日 青山・スパイラルホールで 取材:深谷直子 )

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ヴァギナ・ウルフなんかこわくない 2013 年/アメリカ/85分
原題:Who's Afraid of Vagina Wolf? 監督:アナ・マルガリータ・アルベロ
2014/07/25/19:32 | トラックバック (0)
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