レビュー

荒野の千鳥足

( 1971年 / 豪=アメリカ / テッド・コッチェフ )

わたなべ りんたろう

『荒野の千鳥足』 『荒野の千鳥足』場面2今作を知ったのはイギリスの映画雑誌「EMPIRE」だった。見開き記事で大きく取り上げており「70年代の知られざるオーストラリア映画の傑作で監督はテッド・コッチェフ」「カンヌ映画祭出品時にスコセッシが見て凄まじく不快な映画だといった」と知り興味を持った。日本公開はないだろうと思っていたので「ソフトリリース時に輸入盤ででも見よう」ぐらいにしていたら日本公開が早くもあることを知り観てみた。

映画が始まってからしばらくの印象は「深夜の民放、もしくは昼間のテレ東で何度もやっているような60年代後期から70年代の映画みたいだな」だった。オーストラリアの外れの町を舞台に四六時中ビールを飲んでいて筋らしい筋もなく眺めているような感じだったが、残酷描写で物議を醸したカンガルー狩りのシーンから俄然面白くなった。まともな若い男が堕落して狂気の淵におちていく過程を描くのが主眼であり、その後の画面構成や編集などきちんと構築されていることも分かった(狩りから戻り閉まっている飲み屋を開けて乱痴気騒ぎするシーンの長回しは見事)。主役のゲイリー・ボンドがカンバーバッチに似ていて(骨格が似ているからか声も)端正な若者が壊れていくのを見事に演じている。ドナルド・プレザンスの生き生きしすぎな怪演も印象的。
長らくオリジナルネガが無く「幻の映画」だった作品だが、こうやってスクリーンで堪能できるのは嬉しい限りだ。魅惑的な悪夢が味わえる作品なので是非観てほしい。

(2014.10.13)

≪日本初公開!世界のどす黒い危険な闇映画≫第一弾!!
サム・ペキンパー『わらの犬』+ジョン・ブアマン『脱出』の衝撃ふたたび!
同時代に南半球に存在した恐るべき野蛮作『荒野の千鳥足』が、40年以上の時を経て遂に日本初上陸!人類は、ビールの旨さには、ひれ伏すしかないのか!?

荒野の千鳥足 1971年/オーストラリア=アメリカ合作映画/109分/ビスタサイズ
監督:テッド・コッチェフ 製作:ジョージ・ウィロービー
製作総指揮:ハワード・G・バーンズ,ビル・ハーモン 原作:ケネス・クック 脚本:エバン・ジョーンズ
撮影:ブライアン・ウェスト 編集:アンソニー・バックレイ 音楽:ジョン・スコット
出演:ドナルド・プレザンス,ゲイリー・ボンド,チップス・ラファティ,シルビア・ケイ,ジャック・トンプソン
提供・配給:キングレコード 配給協力・宣伝:ビーズインターナショナル
©2012 Wake In Fright Trust. All Rights Reserved.
公式サイト

2014年9月27日(土)より全国順次公開

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2014/10/13/19:29 | トラックバック (0)
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