世界一美しいボルドーの秘密
デヴィッド·ローチ、ワーウィック·ロス )
こちらがワインに興味を持ったのは日本人女性がフランスでワインを作り、フランスで評価を受けている記事を読んだことだった。その女性はワイン作りの経験も無いのにワインが好きなだけで挑戦し、大きな失敗を経験しながらもワイン作りをしていた。「何でそこまでワインに惹かれるのか?」「そこまで人を惹きつけるワインの魅力とは何だろう?」と強く興味を持った。近所のフレンチレストランでバイトをして、ワインの魅力を探ろうとしたこともある(そのバイトでワインの試飲イベントに行きテスティングもした)。こちらの経験がまだまだでワインの魅力を探りきれていないが新たにワインのドキュメンタリーが日本で上映されると知り楽しみにしていた。それが今作「世界一美しいボルドーの秘密」である。
始めはボルドー地方のワインがなぜ魅力的なのかをボルドーのワイン生産者やワイン評論家が語り、通常のワインのドキュメンタリーのようである。ボルドー地方のワインの魅力的な理由は独特な肥沃な土地であり、歴史、ワイン生産者のワインへの並々ならぬ愛情などであるのだが自らもワイン生産者であるフランシス・フォード・コッポラは次のように語る。
「ワインは様々な物語を語ってくれる。喜びや満足を感じさせてくれると同時にワインは歴史について語ってもくれるんだ。それが造られた当時の世界の状況を教えてくれる。生産された場所や土壌、当時の気候についてもね。単なる農作物でなく、まさに奇跡に近いものなんだ」
そしてワインの現代の歴史=現状が語られ始める。ワイン業界の中国への進出である。中国でのワインブームの過熱はワインが中国の新興の金持ちにとってステイタスであることも大きい。常軌を逸したようなワインコレクター(逆光になっているポスターの人物)や中国にボルドー地方のような城と共にワイン畑を作った者なども出てくる。ワインが現代の資本の状況と密接であることが如実に語られ、原題の「Red Obsession」の「Red」は「赤」ワインだけでなく「中国」を指していることも分かってくる。ウィグルにまでワイン畑が出来ていることには驚いたが、中国資本の勢いと貪欲さもあらわしている。
「モンドヴィーノ」(04)ではヨーロッパ、アメリカ、南米のワイン業界と世界的なワインブームの真相を追っていたが、そこでは中国の進出はまだであった(カリフォルニア・ワインが認められるきっかけになったパリ・テイスティング事件を描いた「ボトル・ドリーム」と共にワイン関連なら必見の作品)。視点も新鮮な今作は面白いドキュメンタリーになっている。
ジョニー・トーの「エグザイル」でのワインに言及した台詞が中国本土だけでなく中国の下に入った香港をもあらわしているのは興味深い指摘だった。酒好きで知られるのでおそらくワイン好きのラッセル・クロウの渋いナレーションも映画ファンには嬉しい。エンドクレジットに流れるペギー・リーのヴァージョンの「Fever」も歌詞の熱をワインに置きかえればワインの魅力に取りつかれた人たちのことであり巧い選曲だ。
(2014.10.13)
【STORY】 何世紀にもわたって、富、権力の象徴とされてきた、世界一と称されるボルドーワイン。しかし、その繁栄の裏には、刻々と変化する世界市場とグローバル経済とが密接に結びついている。そして今、ボルドーは、大きな危機に直面している。欧米の伝統的な顧客は減少し、中国を筆頭とする新興国の富豪によって、ボルドーは凄まじい価値まで押し上げられている。2013年に赤ワインの消費量が世界一となり、すべて“を手に入れようとする中国の需要に対し、果たして伝統あるボルドーのシャトーたちは、この状況にどのように立ち向かうのか。移り変わる時代の中で、世界最上級の品質と誇りを維持してきたボルドーの知られざるワインビジネスと、ワインに熱狂し、魅入られた人々の姿に迫る――。
監督:デヴィッド·ローチ、ワーウィック·ロス/製作:ワーウィック・ロス/製作総指揮:ロバート・コー
撮影:スティーヴ・アーノルド、リー・プルブロック/編集:ポール・マーフィー
音楽:ブルクハルト・フォン・ダルウィッツ ナレーション:ラッセル・クロウ
©2012 Lion Rock Films Pty Limited 配給:アットエンタテインメント
▶公式サイト
2014年9月27日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町
ほか全国順次公開
- 監督:アレクサンダー・ペイン
- 出演:ポール・ジアマッティ, トーマス・ヘイデン・チャーチ, ヴァージニア・マドセン, サンドラ・オー
- 発売日:2013/10/02
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- 監督:ランドール・ミラー
- 出演:クリス・パイン, アラン・リックマン, ビル・プルマン, フレディ・ロドリゲス, レイチェル・テイラー
- 発売日:2011/07/02
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