佐々木昭一郎監督/『ミンヨン 倍音の法則』

佐々木 昭一郎 (映画監督)
映画『ミンヨン 倍音の法則』公開によせて
創りつづけるということ【4/4】

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2014年10月11日(土)より岩波ホール他 全国順次ロードショー

(聞き手・構成:佐野 亨 )

歌が映画を完成させた

『ミンヨン 倍音の法則』場面2 そうして2010年のクリスマスごろには、映画の98パーセントを撮り終わっていました。ところが年が明けてあの大震災が発生した。僕が宮城県育ちのせいもありますが、震災を口実にして編集を引き延ばすうちに文部省の助成金も棒に振ってしまった。撮り終わったラッシュを観る気も起らないんですよ。はらださんや秀さんをはじめとするスタッフには大変迷惑をかけました。ただ、それでもあのままつづけていたら、ただの「佐々木昭一郎の新作」で終わっていた気がするんです。そうこうするうちに、ふと母親がことあるごとに讃美歌を口ずさんでいたことを思い出した。兄弟喧嘩なんかしてると、横で「兄弟仲良く、一緒に遊べ」という歌を唄ったりする。それでミンヨンにもなにか唄わせるべきなんじゃないか、と思いついたんですよ。ちょうどそのとき、TVで市立船橋高校の吹奏楽部が全国大会一位になったというニュースを観て、よし彼らに演奏してもらおう、と考えた。
 周りの皆は、僕が「ジュピターでいこう!」とか「ここはジョージアマーチのメロディだ」
とか言っても、それが実際にどう作品に組み込まれていくのか、あまりイメージできなかったようですが。ただ、僕にはこの映画が歌によって完成に至るという確信があったし、根拠はわからないけれど「これで勝てる」と強く感じていたんです。

映像詩人にあらず

 僕の作品はよく「映像詩」と言われますが、僕自身はそういう表現をあまり好ましく思っていないんです。僕は詩人じゃないし、詩を書いたこともない。自分ではやはりシナリオライターという意識があるんですよ。フランスの作家でいえば、ジャン・クロード・カリエールのようなね。つねに科学的に、論理的に物事を見て書くタイプなんです。あと、詩的だといわれるけれど、僕の作品には劇的構造もちゃんとある。ただ、そういう理屈の部分はなるべく隠さなければ面白くない。それで僕のことを知らない人は作品だけを観て、いかにも詩を書きそうな青白い痩せ細った人を想像するらしいんだけど、冗談じゃない。作品をつくるにはエネルギッシュじゃないとできないんですよ。つくったあとで背後から斬りつけられる覚悟でいけなきゃいけないし、時には喧嘩もしなきゃならない。
 僕の作品ははたしてどのジャンルに属するものなのかよくわからないし、僕という人間もわからない。ただ、周りの人たちは佐々木昭一郎という人間に対して、あるイメージを持っているわけでしょう。だから、僕も取材を受けたり、誰かと仕事のうえで話をするときは、そのイメージを一緒にクリエイトしなければならないんです。たとえば「巨大な隕石」と書いてもらったってかまわない。ある日突然、地球に落ちてきた巨大な隕石で、絶えず震動を起こしている、とかね。実際本人に会ってもなお素顔がわからない謎の人物、というのでもいいわけ(笑)。わからないからこそ創りつづける。やはりそれが真実なんじゃないかな。

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( 2014年9月19日、岩波ホールにて 聞き手・構成:佐野 亨)

ミンヨン 倍音の法則 2014年/日本/140分
出演:ミンヨン ユンヨン 武藤英明 旦部辰徳 高原勇大 ほか
監督・脚本:佐々木昭一郎 撮影:吉田秀夫 音響:岩崎進 編集:松本哲夫 録音:仲田良平 音楽:後藤浩明
吹奏楽編曲:金山徹 助監督:黒川幸則 指揮:武藤英明 演奏:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、船橋市立船橋高等学校吹奏楽部 ピアノ:佐々木秋子 ギター:加藤早紀 音楽録音:村田崇夫、井口啓三
企画・プロデュース:はらだ たけひで 製作:山上徹二郎、佐々木昭一郎 製作:シグロ、SASAKI FILMS
製作協力:岩波ホール 配給:シグロ ©2014 SIGLO/SASAKIFILMS
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2014年10月11日(土)より岩波ホール他 全国順次ロードショー

2014/10/12/10:24 | トラックバック (0)
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