安藤桃子監督/『0.5ミリ』

安藤 桃子 (映画監督)
映画『0.5ミリ』について【2/3】

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2014年11月8日(土)より、有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー!

(取材・撮影:わたなべりんたろう)

『0.5ミリ』『0.5ミリ』場面1――その言葉は興味深いです。真逆に老人の問題を扱ったシリアスな映画と捉える人もいると思うからです。

安藤 リアルとファンタジーは表裏一体だと思うんです。どう意識して撮るかは作り手であり、観る側がどういう意識で見るかでジャンルはひっくりかえるかなと。ドキュメンタリーではないわけですから。

――冒頭の痰を取るシーンで優雅なクラシックを流しているのでファンタジーのように受け取れる方もいるとは思います。こちらは胃ろうもしていて介護度5の母親を介護しているので、そのあたりは理解しました。

安藤 介護を経験した人と経験してない人では今作の受け取り方が違うんです。今真っ只中の人と介護が終わった人とでも違うし。老人の問題のテーマを1つピンポイントで扱っているのもあるので、それぞれの立場によって見方が変わるし、その幅広さを受け入れるための描き方で上映時間が長くもなったんです。

――老人の問題を扱った「アウェイ・フロム・ハー君を想う」は観たのですか?

安藤 観ました。でも、あまり影響は受けていないかも。

――「0.5ミリ」のタイトルの由来は? 津川雅彦さんの台詞に「山を動かすような気持ち、0.5ミリでも動けば」があったりしますが。

安藤 それだけの意味ではなくて結局撮ってみて思ったのが、現場に来る役者さん、この映画を観るお客さんも含めて「これだ」っていう答えは無くていいと思っているんです。それぞれの「0.5ミリ」があっていいし、それが正解だろうなと。自分の中の「0.5ミリ」の答えは、もともとあるんですけど「心の尺度」を考えたときにどのぐらいなんだろうと思ったのがきっかけです。1つは子どもの頃に小学校にあがったら1センチ、2センチの目盛のある30センチ定規を渡されて習います。そして運動会で50メートル走もあります。大人になると車を運転したりして世界が広がる。自分の責任のもとに行動し始める。飛行機に乗っての海外旅行で何百キロと移動したりして世界感が広がる。人との距離感の取り方とか、人とのコミュニケーションはどんどん掴みにくくなってくる。その距離感を測るのはどんなものなだろうと考えたら1ミリの半分の0.5ミリウぐらいだろうなと思ったんです。触れてはいないけど体温は感じる距離、そして静電気も起きる距離なんです。

――始めに原作の出版広告を見たときに老人のセックス介護のような内容も含んでいるからコンドームの厚さかなとも思ったんです。

安藤 そう言う人もいます。それも正解だろうし。やっぱり、その人なりの0.5ミリの答えがあるんだろうなと思います。それがこの映画のタイトルのいいところで、分かりにくいといえば分かりにくいけど、映画を観た後に最初に出る議論がタイトルの意味だと思うので。それで意外とみなさん断言するんですよ、「こういう意味ですよね」とか。

――津川さんが言っているからそう思う人が多いかなとも思いましたが。

安藤 それは津川さんのキャラクターが思っている0.5ミリなんで、ほかにも答えは無限大にあると思っています。

『0.5ミリ』場面2――桃子さんはコミュニケーションのことをとても考えているんですか? 映画は実はコミュニケーションを描くメディアだとは思いますが、その点はどうですか。

安藤 映画と言うものを主体にして議論が生まれるのがコミュニケーションだと思うんです。そういう1つのツールであってほしいという思いも強くあります。今作は老人の話だという枠だけに括られたくないし、さっき言ったように結構観た人のそれぞれの立場で全く観点も感想も違ってくるんです。そこでさまざまな議論が生まれたらいいなと思いますね。

――日本以外の感想はどうですか? 海外で今作の上映はあったんですか?

安藤 この間、ニューヨークでありました。私は行けなかったので正確には分からないですが、嬉しいことに笑いが多く起きていたとは聞いています。

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0.5ミリ 2013/196分/カラー/ビスタサイズ
出演:安藤サクラ / 柄本明 坂田利夫 草笛光子 津川雅彦
監督・脚本:安藤桃子
エグゼクティブ・プロデューサー:奥田瑛二 プロデューサー:長澤佳也
アソシエイト・プロデューサー:畠中鈴子 原作「0.5ミリ」安藤桃子(幻冬舎文庫)
撮影:灰原隆裕 照明:太田博 美術:竹内公一 録音・整音:渡辺真司 音楽:TaQ フードスタイリスト:安藤和津 主題歌「残照」寺尾紗穂 作詞・作曲:寺尾紗穂(アルバム「残照」収録)(発売元:MIDI INC./Published by YANO MUSIC PUBLISHING Co.,Ltd.) 助成:文化芸術振興費補助金
企画:ゼロ・ピクチュアズ 制作:リアルプロダクツ 製作:ゼロ・ピクチュアズ,リアルプロダクツ,ユマニテ
配給:彩プロ 宣伝:『0.5ミリ』三姉妹 広報企画:道田有妃 © 2013 ZERO PICTURES / REALPRODUCTS
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2014年11月8日(土)より、
有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー!

2014/11/04/21:52 | トラックバック (0)
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