インタビュー
ヤン・スヴェラーク監督/映画『クーキー』

ヤン・スヴェラーク (監督)
オンジェイ・スヴェラーク (主演)
映画『クーキー』について

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2015年8月22日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!

1996年のアカデミー賞外国語賞を受賞した『コーリャ 愛のプラハ』(96)で知られるヤン・スヴェラーク監督の最新作で、持ち主の少年と離れ離れになったぬいぐるみが繰り広げる大冒険を描いた感動作『クーキー』(10)が、来る8月22日より5年越しの日本公開を迎える。チェコの伝統的なパペット(人形)と実写を組み合わせた本作は、『トイ・ストーリー3』(10)などのハリウッド作品を抑えるヒットを飛ばし、チェコのアカデミー賞と言われるチェコ・ライオン賞で4部門を受賞するなど、高い評価を獲得している。今回は、ヤン・スヴェラーク監督に加え、本作が映画デビューとなった監督の実子オンジェイ君に、本作に込めた想いや、今日におけるチェコについてお話を伺った。 取材:岸 豊)
監督・脚本・製作:ヤン・スヴェラーク 1965年チェコスロバキア生まれ。プラハの映画大学でドキュメンタリー映画制作を学んだあと、88年に卒業。父親ズデニェク・スヴェラークが脚本を書き、出演した『Obecná škola』(91)で長編劇映画デビュー。戦後のチェコを舞台にした感動作は第64回アカデミー賞®最優秀外国語賞にノミネートされる。その後、TVの恐ろしいパワーを描いたアクションファンタジー『アキュムレーター1 』(94)を監督。再度、父親ズデニェク・スヴェラークが脚本を担当したこの作品は、当時としてはチェコ映画では最高額の予算で製作され、94年のヴェネチア国際映画祭や当時のゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭などで賞を受賞。また自国でもヒットとなり、最も人気のある作品に贈られるチェコ・ライオン賞を受賞した。さらに父親が脚本と主演を担当して三度目のタッグを組んだ『コーリャ 愛のプラハ』(96)はアカデミー賞®最優秀外国語賞を受賞。続く次回作『ダーク・ブルー』(01)は父親が脚本を担当し、チェコ映画最大の製作費をかけた作品としても有名。3年ぶりの映画となった『クーキー』ではマリオネットを森に持ち込み撮影したことで話題となる。最新作は初のミュージカル作品『TRI BRATRI(英題Three Brothers)』。

オンドラ役&クーキー(声):オンジェイ・スヴェラーク 2001年チェコ生まれ。本作の監督ヤン・スヴェラークの実の息子であり、本作で映画俳優としてデビュー。クーキーの声だけでなく持ち主であるオンドラ役を演じた。次回作は祖父ズデニェクが脚本を務め、父ヤンがメガホンをとる『TRI BRATRI』(14)。


ストーリー 弱虫で甘えん坊のテディベア、クーキーの必死の大冒険!
オンドラは体が弱く、ぜんそく持ちの男の子。小さなころからテディベアのクーキーとずっと一緒に遊んできた。しかし古くなってしまい、汚れがぜんそくにも悪いということで、ある日母親がゴミと一緒に捨ててしまう。町から遠く離れたゴミ捨て場に捨てられ、ショベルカーに潰されそうなった瞬間、クーキーはひょっこりと動き出してゴミ捨て場を駆け下り森に逃げ込んだ。森の中には邪魔ものが次々現れ、クーキーの行く手を阻む。はたしてクーキーはオンドラの待つ家にたどり着くことができるのか?
ヤン・スヴェラーク監督――まず最初に、今回クーキーというぬいぐるみの冒険を描くことには、どんな想いや狙いがあったのでしょう?

スヴェラーク監督 もともと私が作品に取り組むときは、具体的なアイディアやメッセージを伝えようと思ってスタートするわけではないんです。大体、いつも衝動的なモチベーションが多いんですけども、これやってみたい、あれやってみたいというところから始まって、どういう意味やメッセージを持つのかは後で付いてくるんですね。なので今回は、実写ではできない、自然界のとても小さなディテールにフォーカスして、どういうものを見せることができるんだろうかということを、きちんと映像として、映画として捉えてみたいというのが最初にあったんです。そして実際に脚本を書く段階になって、無意識の内にだと思うのですが、色々なメッセージ性だったり、はっきりとしたアイディアが、もちろん当時の色々な状況に左右されたと思うのですが、形になっていきました。私は毎回そういうプロセスを経ているのです。

――本作では、アマニタ・デザインによるキャラクターデザインが極めて独特でした。オンドラの空想が生んだキャラクターの多くは自然物や人工物ですが、心を持っています。本作の舞台が森であることから、彼らはアニミズム(精霊信仰)に基づいて形成されたキャラクターのように思えました。

スヴェラーク監督 そうですね。確かに彼らを森の精霊として描いています。しかし、もともとチェコの人々はあまり信仰心が無く、無宗教の人が多いんです。でも敢えて今回はデザイナーと共に、それぞれのキャラクターに宗教性のようなものを与えて、敢えて精霊として描きました。そして森の全てのものには、何らかの魂が取り付いているという点を強調するようにデザインしました。

――昨今は科学技術が絶え間なく発展しており、合理主義的な社会が形成されています。そんな中、本作で描かれたアニミズムやオンドラの自由な想像力は、ある種の抑圧を受けているように思えます。

『クーキー』メインイメージスヴェラーク監督 確かに我々が今生きている文明は、壁に突き当たっていると思います。やはり物質主義が世の中に浸透しており、利益を上げることが最大の目標となっており、行き詰まっていると思います。そんな中で、今後文化や文明がどういった方向に向かっていくのかということについては、明らかに、そうしたものとは違った方向を求めるべきだと思います。なので、この作品ではなるべく監督としても子供の視点から、子供だったらどう考えるだろうか、どう思うだろうかという、子供の行動原理とか観察眼といったものをとても大切に描きました。大人には考えもつかないような新しい何かを模索するような形で、現場では取り組んでいたんです。

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クーキー (2010/チェコ/原題:KUKY SE VRACI/95分/カラー/5.1ch/16:9)
監督・脚本・製作:ヤン・スヴェラーク(『コーリャ 愛のプラハ』『ダーク・ブルー』)
撮影:ブラディミル・スマトニー グラフィック・アーティスト:ヤクブ・ドヴォルスキー
音楽:マイケル・ノビンスキー キャラクター・デザイン:アマニタ・デザイン
主演:オンジェイ・スヴェラーク
提供:メダリオンメディア 配給:アンプラグド
©2010 Biograf Jan Svêrák, Phoenix Film investments, Ceská televize a RWE.
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2015年8月22日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!

2015/07/12/18:31 | トラックバック (0)
岸豊 ,インタビュー
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