大川 五月 (監督) 映画『リトル京太の冒険』について【2/6】
シアター・イメージフォーラムにて4月28日まで絶賛上映中!
名古屋シネマテーク、京都・立誠シネマにて5月27日(土)より上映 以降、全国順次公開予定
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――最初の短編から時間も経っているのに、同じキャストがよく集まってくれましたね。
大川 本当によく戻ってきてくれたなあと思います。
――京太役の土屋楓くんはどうして選ばれたのですか?
大川 1本目のときに、子役さんを何人か呼んでオーディションをしたんですけど、彼がいちばん私のイメージに近かったんですね。パッツン髪の坊ちゃんカットで、映画にも出てくるウェスタンブーツみたいな長靴を履いていて。演技経験はほとんどなかったんですけど、「英語はできる?」と訊いたら「英語は勉強しています。じゃあ英語の歌を歌います!」と言ってボン・ジョヴィを歌い出したんですよ(笑)。おじさんがファンらしくて。「面白い子だね」って話して、頭巾をかぶってもらったらすごく可愛くて。京太役って、いるだけで可愛いとか微笑ましいという子を自分の中でイメージしていたんです。悲壮感が漂ったらダメだなって。話自体はほのぼのしているけど、言っていることはとてもシリアスなので、そこを超えられる子を探していて、彼に決めました。
――子役さんへの演出はいかがでしたか?
大川 この映画の前にお子さんを演出したことはほとんどなかったんですが、コロンビア大学の授業で演技指導のコースがあって、子供への演出方法として先生が言っていたのは「子供を楽しませること。『面白いことをやっているな』って思わせなさい」ということでした。私は日本の映画学校にも行ったのですが、日本だともっと「気力でがんばれ」みたいな、子役に対してもわりと厳しい感じかな、と傍から見ていて感じます。イギリスやアメリカの方式だと、子役に楽しんで演技をしてもらう、遊んでいるっていう感覚でやってもらうんですね。楓くんの場合は、彼が関連付けやすいことに例えて台詞を言ってもらうようにしました。台詞はもう覚えてきてもらっているんですが、最初はお芝居するのにすごく手こずって。初めて撮影したシーンは、長編には出てこないんですが、お茶屋さんでの清水美沙さんとのシーンで、カチカチに緊張しちゃっていて。どうやら楓くんは嵐のファンで、メンバーの誰かが清水さんと共演しているドラマを観ていて、「あの嵐と共演している人なんだ」とビビっちゃっていたようなんですね。そういうことで撮影が全然進まないので、「何とかしよう、楽しませなきゃ」と思ってお母さんに楓くんの好きなものを訊いたら、宿舎の近くにドン・キホーテがあって、そこでガチャガチャをするのがそのときの楓くんのブームだったそうなんです。 それで楓くんに「この後ドン・キホーテに行くんだって?」と話しかけて、そのときやっていたシーンが「頭巾を取れ」と言われているシーンだったんですけど、それを「『ドン・キホーテに行くな』って言われているんだとしたらどう?」と例えてみたら、「やだ!」って言って。それで自分の中で突破口が見えたみたいで、それからも「ドン・キホーテに行きたいか?」「はーい!」ってやっていたらみんなが笑うからリラックスをして。最初の緊張がほぐれたら、映画に映っているとおりの素敵なお芝居をしてもらえました。
――なるほど、本当に効き目があるんですね。やっぱり子供への演出にはいろいろ工夫をされて。
大川 はい、すごく楽しかったですね。私はケン・ローチ監督が好きで、ドキュメンタリーでの子供の演出がとても上手いので、「こうするのかな?」と試行錯誤でやってみました。詩織ちゃん役の木村心結ちゃんには脚本を渡していなかったんですね。心結ちゃんはこの役が決まったときには演技経験がかなりあって、上手いんですけど、やっぱり子役っぽい演技になってしまうかもしれないなって思っていて。オーディションのときに、ラケットを使ってボールを叩きながら単純な台詞を言ってもらうということをしたんですが、演技のスクールに行っている子役さんでも同時にはできないんです。でも心結ちゃんはボールを叩きながらもちゃんと相手を見て伝えようとしていて。その伝えようとする感覚がとても大事だと思うんですよね。それは相手の言うことを聞こうとすることでもあるし。それで「この子だったら大丈夫じゃないかな」と選びました。脚本を渡さなかったので、お父さんに怒られるシーンでは、パンフレットで心結ちゃんがコメントしているとおり、怖い思いをさせてしまいました(苦笑)。そこは一応「怖いよ」とは振っていたんですね。「でも何があっても『もっと遊びたい』という気持ちは伝えなきゃダメだよ」と。本番ではどなられるわ、目の前で京太は突き飛ばされるわで本当にビックリしたと思います。でもカメラがあるのを意識していて、そこを振りむいちゃいけないってがんばっていました。
出演:土屋楓,清水美沙,アンドリュー・ドゥ,木村心結,眞島秀和,ステファニー・トゥワイフォード・ボールドウィン ほか
監督・脚本・編集:大川五月
プロデューサー:杉浦青 音楽:HARCO
撮影:千葉史朗 照明:上野敦年 録音:長村翔太 美術:宇山隆之 助監督:清水艶
製作:リトル・ネオン・フィルムズ 制作プロダクション協力:テトラカンパニー
特別協力:わたらせフィルムコミッション,桐生市,みどり市,公益社団法法人 桐生青年会議所
特別協賛:コトプロダクション 配給:日本出版販売 宣伝:キャットパワー ©2016 Little Neon Films
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