――心配症の詩織ちゃんのお父さんに京太が共感してしまうというのがつらい場面でした。『京太のおつかい』でも描かれていた場面なんですけど、子供もこんなに不安を感じているんだなあと。

大川　短編を観た方からは、「子供にこんなことを託すのは違うんじゃないか？　子供はこんなことを感じないと思う」という意見もいただいたんです。でも私としては、子供は子供なりに震災で怖がったり悩んだりしているんじゃないか？と思っていたんですよね。東日本大震災のときには、亡くなった方だとか不幸な目に遭っている方が多過ぎて、子供の心のケアのことがあまり言われていなかったと思うんです。それが熊本の地震のときにはすごく言われるようになって、地震はもちろん大変なことだけど、子供たちの心の傷に気付く環境になったことはよかったとすごく思いました。きっとお子さんと親御さんは大変だろうなと思っていたので、熊本の地震でそこに焦点が当たるようになってよかったです。

――そうですね。子供を守るために親も悩むでしょうし、子供は子供で悩みを抱えつつ親の思うとおりにしか動けないですし。

大川　『京太の放課後』を上映したドイツの映画祭のプログラマーに、「最近はこんな作品を撮りました」と言って、できあがったばかりのJリーグの映画『旅するボール』（13）のDVDをお渡ししたことがありました。『京太の放課後』をとても気に入ってくださった方で、「新作も子供の話です」と言って渡しました。その方から「どうして子供の映画を撮るんだ？」と訊かれて、そのときにパッと「子供は未来だし、彼らに責任はないから」って答えたんですよね。自分たち大人が決めたことの後始末を子供はしなきゃいけなくなっているっていう気がすごくしていて、それを子供の視点に立ってどう大人に伝えるかを考えていたら、子供の映画になったと。

――母親こそが持てるような視点ですよね。そのころは監督にはまだお子さんはいらっしゃらなかったんですよね？

大川　（おなかを触りながら）今もまだ出てきていないですけどね（笑）。生まれたらまた変わるのかなあって思います。

――これからも京太の物語は描き続けるのでしょうか？

大川　お話があったらまた撮りたいなあと思いますね。書いていて楽しいキャラクターなんですよね。今回はそこまでいかなかったんですけど、将来的にこの子供たちはどう育っているんだろう？っていうことを想像していて、詩織ちゃんはそのうち京太に恋をするだろうって（笑）。それで詩織ちゃんのお父さんは絹子さんと……（笑）。今回くっつかないかな？って思って、そういう方向で書いていたんですけど、撮影して編集して、ああ無理だと。まだ絹子さんは篤史を振り向いてはくれないな、と断念しました。

――（笑）。親子でカップルになるかもしれないんですね。新たな展開を楽しみに待っています。京太シリーズ以外では、これからどんな作品を撮りたいですか？

大川　やっぱりコメディをベースにしたドラマを撮りたいなと思っていて。京太シリーズをやって、自分が思っている問題意識とか、社会に対して、自分に対しての考えを、物語にどう乗せたらいいのかがちょっとずつ見えてきた気がするんですよね。それをお話にしてみなさんに届けやすい形、楽しんで観ていただきながら「楽しかったけどなんか考えさせられた」とか「共感できた」とか感じてもらえる作品作りを目指すときに、コメディってすごく大事だなって思うんですよね。ほのぼのと見ていて、それがキュッと締まっていって、ドラマがぐつぐつ煮えてきて……みたいなのが自分でも多分好きなのだと思うので、これからも作りたいと思います。