大川 五月 (監督) 映画『リトル京太の冒険』について【5/6】
シアター・イメージフォーラムにて4月28日まで絶賛上映中!
名古屋シネマテーク、京都・立誠シネマにて5月27日(土)より上映 以降、全国順次公開予定
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――外国人の教師との異文化交流が描かれるのも大川監督ならではの気がします。小学校に外国人の英語教師がいるっていうのは多いんでしょうか?
大川 はい、最近はこういう先生がいるらしいです。何か震災のことを描く映画を作りたいと思っていたときに、そういう外国人の先生が震災後に帰国していってしまい、残された生徒たちが寂しがっているというのをニュースで見て、私は震災のときに海外に住んでいたので「そうだよな」って思っていたんです。でも帰国して何ヶ月かして日本に戻ってくる先生たちもいたという記事を読んで、そういう先生を軸にした話を書こうと思い、最初はティム先生を主人公にする話を考えていました。京太はそこで出会うひとりの生徒として考えていたキャラクターだったんですけど、練っているうちにこっちのほうがいろんな葛藤もあって面白いなと思って、最終的には京太を主人公にする映画になりました。最初に外国人の先生の話を描こうとしたというのは、今から思うと、震災のときに私は日本にいなかったので、外からニュースを見ながら忘れられていくさまも見ていて、それで「忘れない人もいる」っていうのをどこかで言いたかったのかもしれないですね。海外から戻っていく人もいるし、震災の傷はまだ残っているんだっていうことを言いたかったという気がします。
――外国人が住んでくれるから“safe”だと感じるという京太の思いがとても切実に響きました。実はとても重い感情だと思うのですが、これはどうして思い付かれたのですか?
大川 子供さんがこういうことを感じるかは分からないんですけど、長編を準備していたころ、今から2年前ぐらいに、街を散歩しているときにふと思ったんですよね。原発のニュースを見たあとだったと思うんですけど、何が起こっているかよく分からなくて、知りたいけど知るのも怖いし、何をしたらいいのかも分からない。そういう漠然とした不安が東日本を覆っているような気がして、でも目を背けていてもダメだし……、ということを考えながら歩いていたら、ふとまわりに外国人がたくさんいたんです。小さいお子さん連れとかもいて、明らかに日本で暮らしている感じの人たちで。それを見て「わざわざ海外から来て暮らしている人がいるってことは大丈夫なのかな」ってふと感じたんですよ。何の理屈も裏付けもないんですけど、この発想は京太が持ってもおかしくないな、ティム先生に固執する理由にそれがわりとはまるのかもしれないなと思いました。
――確かに子供が持つ感情として違和感がなく、本当に純粋にすがり付くようで胸が痛くなりました。でもここまで託されても先生も困ってしまうし……と複雑な思いになりますね。
大川 京太が先生にいてほしいのは、ただ先生を好きだからというだけじゃなくて、それが不安に対する自分なりの解消法でもあって、でもそれが正しくはないことを学んでいくっていう。自分も海外で生活してみて、行く前に思っていたのは「まわりの人が何とかしてくれるだろう」ってことでした。託せばなんとかなるというよく分からない気持ちがあって、でもいざ行ってみるとそんなに外国の人は自分のことを見向きしてくれるものじゃないっていうのをすごく感じたんですよね。それは震災が起こる前でしたが、震災の後でもやっぱり気にするのは自分たちだけであって、自分たちの問題を解決するのは自分たちなんだっていうのをすごく感じたんですよね。それを映画の物語にも反映させたくて、ティム先生が帰る理由は自分の国の抱える問題のためなんだということにしました。先生には先生の大事なことがあって帰っていく。その姿を見ることで、状況を変えるのは自分だっていうのを京太にも気付いてほしいというのがありましたね。
――京太とお母さんとの関係も1作ごとに前進がありますね。
大川 人と人ってやっぱり支えられてというものだと思うんですよね、金八先生じゃないですけど(笑)。今までは京太も幼かったから、京太とお母さんの関係は一方通行で、お母さんがキャッチャーみたいな感じで受け取る一方だったけど、お母さんから投げられたのをちゃんと取れるようになったという、そういう理解で撮りました。
出演:土屋楓,清水美沙,アンドリュー・ドゥ,木村心結,眞島秀和,ステファニー・トゥワイフォード・ボールドウィン ほか
監督・脚本・編集:大川五月
プロデューサー:杉浦青 音楽:HARCO
撮影:千葉史朗 照明:上野敦年 録音:長村翔太 美術:宇山隆之 助監督:清水艶
製作:リトル・ネオン・フィルムズ 制作プロダクション協力:テトラカンパニー
特別協力:わたらせフィルムコミッション,桐生市,みどり市,公益社団法法人 桐生青年会議所
特別協賛:コトプロダクション 配給:日本出版販売 宣伝:キャットパワー ©2016 Little Neon Films
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