ジャコ・ヴァン・ドルマル (監督)
映画『神様メール』について【2/2】
2016年5月27日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他全国公開
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――――ちなみに映画監督になろうと思ったきっかけは?
ドルマル 他にやれることがなかったから……。映画って、大きくなってどんな仕事に就いたらいいのか分からない人がやるものじゃないかな(笑)。最初は動物写真家になろうと思っていて、それでカメラになじみができていました。一方で演劇もやっていて、その両方を合わせて映画を作るようになりました。
――カトリーヌ・ドヌーヴ演じるマルティーヌとゴリラが恋に落ちるエピソードがとても素敵でした。どのように思い付かれたのですか?
ドルマル パリで同性愛者の結婚に反対するデモがあったとき、カトリーヌ・ドヌーヴがテレビのインタビューで「他人がとやかく言えることではないでしょう? 愛の形は千差万別で、誰でも自分の好きなように人を愛していいはずよ」と言っているのを聞いて、自分の考えをはっきり言う人だと感心したんです。それでこの役を依頼しました。ゴリラのシーンのアイディアは、私の友人の体験が元になっています。ベルギーの140シアターという劇場でフランスの歌手が公演をしたとき、その歌手がチンパンジーを連れてきていたんです。それを私の友人が自宅で預かることになったんですが、チンパンジーは嫉妬深いので女性を近付けず、彼はずっとチンパンジーと一緒に寝ていたそうです(笑)。そういう変なできごとがヒントになりました。映画で使ったゴリラのスーツは顔に20ヵ所ぐらい可動部分があって、それを二人が遠隔操作して表情を作っています。中にはマドリッド出身の体操選手が入って動かしていたのですが、暑くて大変だったようです。私はスペイン語が分からず、彼はフランス語が分からないので、カトリーヌが通訳をしてくれていました。
――劇中に手の指を脚に見立てたダンス・シーンが出てきますね。これは振付師である監督の奥様のパフォーマンスで、最近行われた舞台公演には監督も参加しているそうですね。
ドルマル そうです、私の妻(本作に出演もしているミッシェル・アン・ドゥ・メイ)は振付師をしているのですが、この映画を撮る前、『ミスター・ノーバディ』のすぐあとに、『Kiss & Cry』(11)という舞台の公演を行いました。彼女は「指でダンスができないか?」ということをすごく考えていて、私は「台所のテーブルの上でまったく予算をかけずに映画を作れないか?」ということを考えていて、実験的に指のダンスの映像作品を作り、『Kiss & Cry』のオープニングに取り入れたところ、とても評判がよかったんです。それで今回映画にも入れました。『Kiss & Cry』は残念ながら日本には紹介できていないのですが、韓国を含め、9つの言語の国や地域を回って公演を行いました。
――ぜひ日本でも観たいですね。その公演と、監督の次回作を楽しみにしています。
ドルマル はい、機会があったらまたお会いしましょう。これが5回目の来日なんですが、毎回「また来たいな」と思います。みなさんとてもあたたかく迎えてくださって、優しさを感じるとともに、ミステリアスなところもあって、「次回はもっと分かるかな?」と思うんですが、次に来るともっと分からなくなっている感じの国ですね(笑)。
( 2016年4月12日 六本木・アスミック・エースで合同取材 取材:深谷直子 )
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監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル「トト・ザ・ヒーロー」「ミスター・ノーバディ」「八日目」
脚本:ジャコ・ヴァン・ドルマル、トーマス・グンズィグ
主演:ブノワ・ポールヴールド「ココ・アヴァン・シャネル」、ヨランド・モロー「ミックマック」、ピリ・グロワーヌ「サンドラの週末」、カトリーヌ・ドヌーヴ「8人の女たち」
配給:アスミック・エース 【PG12】 © 2015 - Terra Incognita Films/Climax Films/Apres le deluge/Juliette Films Caviar/ORANGE STUDIO/VOO et Be tv/RTBF/Wallimage
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