ロマン・ポランスキー初めての告白
ロマン・ポランスキーのドキュメンタリーが公開される。ポランスキーはもともと好きな監督だったが近年の精力的な活動からより興味を強く持つようになった監督だ。ポランスキーのドキュメンタリーは近年には「Roman Polanski: Wanted and Desired」 (08) 、「Roman Polanski: Odd Man Out 」(12) 、「Roman Polanski: A Film Memoir」 (11)があるが今作は「Roman Polanski: A Film Memoir」である。イギリスに渡ってからのプロデューサーであり長年の良き友のアンドリュー・ブラウンズバーグが2009年から2010年にかけてスイスの自宅でアメリカでの罪で軟禁中のポランスキーにインタビューしたものだ。
結論から先に書くと、とても見応えがある必見作だ。心を許す友人に話しているので、ポランスキーが感情を溢れさせて笑ったり泣いてしまったりと「人間」ポランスキーが随所に見ることができる。「人間」を感じさせるという意味では去年公開の「映画と恋とウディ・アレン」と同じだ。
上映時間の半分近くはナチス統治下の話しである。それだけ、この時の体験がポランスキー本人に影響を与えているのが分かる。だからこそ、生涯の1本は「戦場のピアニスト」だとも言う。リアルタイムの最初の作品が「フランティック」なので、そこから振り返ると映画監督としては波乱はあっても始めからかなり優秀な監督かと思っていたら違った。運命の偶然でまずは子役俳優になるが、教官との折り合いの悪さから大学として俳優学校へは複数の学校で不合格で恩師の「やってみなければ何事も始まらない」のアドバイスで受けた監督コースで天性の監督としての才能に気付く。今では傑作扱いの監督第一作の「水の中のナイフ」は本国ポーランドでは酷評。だが、海外の映画祭で評価されてイギリスでホラーの監督として契約して「反撥」「袋小路」を撮る。前者は「お金のために唯一撮った映画」、後者は「自由に撮れて満足のいく作品」というが「反撥」のほうが出来が良く後年も評価が高いのも興味深い(商業主義と戦いながら作った作品が後の代表作になるのはスピルバーグの「ジョーズ」も同様だ)。
その後のシャロン・テート事件やエマニュエル・セニエとの出会いも知ってはいたが本人の口から語られると知らなかったことも含み、これまた興味深い。今年のカンヌに出品した「La Vénus à la fourrure」(13)、「D」(14、ロバート・ハリス原作)と次々と新作が控える33年生まれの鬼才の今後の作品がより楽しみになった。今作上映に合わせて「ローズマリーの赤ちゃん」ニュープリント版、「水の中のナイフ」「反撥」「袋小路」デジタルリマスター版も上映されるので、こちらも楽しみだ。
(2013.05.30)
ロマン・ポランスキー初めての告白
製作:アンドリュー・ブラウンズバーグ 監督:ローラン・ブーズロー
2012年/イギリス・イタリア・ドイツ/ 94分/デジタル/ヴィスタ
©2011 ANAGRAM FILMS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
提供:角川書店 配給:マーメイドフィルム 宣伝:VALERIA
配給協力:コピアポア・フィルム 後援:ポーランド広報文化センター
http://mermaidfilms.co.jp/rp/
2013年6月1日(土)より、
渋谷シアター・イメージフォーラムにて6週間限定公開
「ローズマリーの赤ちゃん」ニュープリント版
「水の中のナイフ」「反撥」「袋小路」デジタルリマスター版
- 監督:ポール・モリセイ
- 出演:ジョー・ダレッサンドロ, ウド・キア, ロマン・ポランスキー, ヴィットリオ・デ・シーカ, アルノ・ジュエギング
- 発売日:2013/10/02
- おすすめ度:
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- 監督:ロマン・ポランスキー
- 出演:ミア・ファロー, ジョン・カサヴェテス, ルース・ゴードン, シドニー・ブラックマー, モーリス・エバンス
- 発売日:2013/02/08
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