澤田 正道 (監督) 映画『人間爆弾「桜花」-特攻を命じた兵士の遺言-』について【2/3】
10/1~名古屋シネマテーク、11/26~青森・シネマディクト、12/3~ 鹿児島・ガーデンズシネマ、12/10~横浜シネマ・ジャック&ベティ、1/28~千葉・キネマ旬報シアター、大阪・第七藝術劇場、京都みなみ会館、兵庫・元町映画館、広島・横川シネマにて近日公開
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――なぜボネロだったんでしょうか?
澤田 僕としてはフランス人で戦争を知らない若い世代のボネロが日本のカミカゼすなわち「死」をどう捉えてどう近づいていけるかを映画で見てみたいというのがありました。何度か日本に行き、林さんを撮影しました。しかし、その後ベルトランも別の映画の企画が動き出してあまり進まなくなり、2010年頃に僕が引き取るという話になりました。
――それが2014年の完成になるまでのいきさつはいかがだったのでしょうか?
澤田 僕もさまざまな映画のプロデュースで忙しくなり、しばらくそのままにしておきながらも林さんを撮った映像は気になっていたんです。ある時に友人と一緒に撮影した30時間のラッシュを見直したら「貴重な証言で心を動かされた。これはきちんと映画にするべきだ」と言われたんです。そこで、再度じっくり見てみようと思って、2013年頃に友人知人を集めて大人数であらためて見たら全員が30時間集中して見ていて「この感覚を映画に落とし込めないかな」と思ったのは大きかったです。そして誰か新しい監督を探していた時に「なんで澤田が監督をやらないんだ?」とある人に言われて「確かにそうだな」と思ったことも監督したきっかけですね。
――そうだったんですね。
澤田 ただ、それからが大変でしたね。戦争、しかも特攻のカミカゼがテーマで、あるのは30時間の撮影データのみ。僕が戦争、ひいては生と死をどう捉えるか?、人に見せる形にどう落とし込むか?ということも自問しました。何度も見直すうちに埼玉県入間市の林さんの自宅にうかがって林さんと共有した時間を思い出して「林さんと僕の共有した時間を映画に焼き付けることで、僕が 味わった体験を観客と共有できればこの映画は作れるかもしれない」と考えたんです。
――その点はとても成功していたと思います。ナレーションや音楽もなく林さんが淡々と語り、そこには静謐とも言える時間が心地良い緊張感と共にある。
澤田 始めはフィクションとドキュメンタリーを混ぜ合わせたような映画を作ろうとも思ったんですけど、考えていくうちにそれは林さんにとってとても失礼だと気付いたんです。そこで素材の30時間のインタビュー映像だけでいこうと決めたんです。
――こちらが監督したドキュメンタリー「3.11日常」も基本的に今作と同じ手法にしました。その点も今作に強く共感した点で、取材対象者が淡々と話しているだけで2つのカメラで撮ったインタビューも視点がブレるので1つのカメラの映像のみにしました。こちらの質問は全部文字の表記のみでこちらの声は消ししました。それは観る者が取材対象者と直接話しているように感じてほしかったからなです。
澤田 そのアイデアも面白いね。そのドキュメンタリーにも興味あるな。
――今日持参しましたのでインタビュー後にお渡しします。
澤田 でも林さんが話ているか沈黙しているかしかないので始めはボネロにも「これで映画になるのか?」と言われていました。でも何とかなるだろうと時間がある時に折りを見てアシスタントを入れて一緒に編集していました。、まず1時間45分のバーションができてそれも良かったんだけど、1人の人間がずっと話をしている内容なら人が見るのには1時間15分ぐらいがいいだろうと思って1時間16分まで縮めました。もっと短いバージョンも作ってみたのですがテンポは良くなったけど結果として余韻が残らなくなってしまった。
監督:澤田正道 出演:林冨士夫
取材:澤田正道、ベルトラン・ボネロ プロデューサー:澤田正道、アンヌ・ペルノー
ラインプロデューサー:天田暦(日本)、ローラン・アルジャニ(フランス)
撮影:ジョゼ・デエー チーフ助監督:古堅奎 録音:高田林 編集:渡辺純子、大木宏斗
音編集:アレクサンドル・エケール ミキシング:マチュー・ラングレ カラコレ:ニコラ・ペレ
挿入歌:ロベルト・シューマン「二人の擲弾兵」
特別協力:筑波海軍航空隊記念館 岩波書店(小林照幸著『父は、特攻を命じた兵士だった。』)
原題:PAROLE DE KAMIKAZE 配給・宣伝:太秦 © Comme des Cinemas
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