インタビュー
ローラ・アルバート/『作家、本当のJ.T.リロイ』

ローラ・アルバート (作家)
映画『作家、本当のJ.T.リロイ』について【1/2】

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新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷にて上映中!/4月29日(土)大阪シネ・リーブル梅田、5月13日(土)仙台チネ・ラヴィータ、5月20日(土)横浜シネマ・ジャック&ベティ、熊本Denkikanほか全国順次公開

90年代にアメリカの文壇に現れるや『サラ、神に背いた少年』『サラ、いつわりの祈り』という自伝的小説で時代の寵児となり、セレブたちも夢中にした美少年作家のJ.T.リロイが、実は40歳の女性が作り出した架空の人物だった――。2006年のニューヨーク・タイムズの暴露記事によって起こった文学スキャンダルから10年、ジェフ・フォイヤージーク監督がドキュメンタリー映画『作家、本当のJ.T.リロイ』を発表した。この作品は、架空作家の正体であるローラ・アルバートがいかにしてJ.T.リロイというキャラクターを生み出し、そのアバターを操るという離れ業を成功させたかを、本人へのインタビューと、セレブや関係者との電話の録音テープなどで再構築するもの。まさに“小説よりも奇なり”な事実の奇想天外さに驚くとともに、彼女をそこへと突き進ませた心の傷の深さに直面させられ、だが当人の主観のみという視点から描いていることで逆に観客に冷静な見方を要求するという、多層にわたって問題を突きつけてくる作品だ。このたび、公開に合わせて来日したローラ・アルバートさんにインタビューを行った。切々とした言葉から虐待を受けた人が背負うものの深さをあらためて感じる一方で、神秘的な発言に煙に巻かれる思いにも。虚実を操る作家であることを見せつけられた気がした。 (取材:深谷直子)
ローラ・アルバート 1965年、アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン生まれ。J.T.リロイ名義で発表され、世界的なベストセラーとなった『サラ、神に背いた少年』(2000)、 『サラ、いつわりの祈り』(2001)の著者。他の作品に『かたつむりハロルド』(2004/J.T.リロイ名義)がある。
ローラ・アルバート1 『作家、本当のJ.T.リロイ』 『作家、本当の J.T.リロイ』場面1
――ジェフ・フォイヤージーク監督と映画を作ることにした理由を教えてください。

ローラ ジェフ監督から映画を作りたいという連絡をもらって、彼の前作の『悪魔とダニエル・ジョンストン』(05)を観ました。とても評判になった作品であることは知っていましたが、観たら主人公のダニエルと私にはすごく似ているところがあることがわかりました。ダニエルも私も小さいときからあらゆるものを録音していたんです。また、狂気と創造性が交差するジェフ監督のスタイルにすごく興味を惹かれ、この監督ならセレブがどうとかいったセンセーショナルな描き方をせず、非常に複雑なストーリーをありのままに、有機的な形で語ることができるんじゃないかなと思って彼と組むことにしました。

――ローラさんがたくさんの録音物や写真や映像をお持ちなので、とても説得力あるドキュメンタリーになりました。子供のころの写真もたくさんあって、ご両親の愛情を感じるのですが、この映画やローラさんの小説に表れているように、子供時代はつらい体験をされてきたわけですよね。

ローラ 両親は私のことをとても愛してくれたと思います。母はもうこの世にはいないんですが。でも子供を愛していても、彼らは子供を守ることはできなかった。私にとっても、両親の愛情を感じていても、自分が受けた虐待も忘れることができず、それについて感情をコントロールできなくなってしまうというのは別のことなんです。児童虐待と愛情は関係のないことだと思います。私は是枝裕和監督の『誰も知らない』(04)が大好きなのですが、それは育児放棄する母親についても思いやりを持って描いているからです。彼女も子供たちのことを愛しているということが理解できますよね? 私がああいう小説を書いたのは、虐待を取り上げる本には「虐待を受けた子供は善良で、虐待した親は悪者」と白黒を付ける書き方のものが多く、それに疑問を覚えたからです。個人的で複雑な話を正直に語ることで、そういう風潮に変化が起きるのではないかと思いました。

――映画の中でもローラさんは当時のことをたくさん語っていますね。インタビューはどんなふうに行われたのですか?

ローラ 監督がカメラの後ろから質問するので、私は彼を見て答えていくわけですが、私は考えるときに上を見るクセがあるので難しかったですね(笑)。「自分の中に入り込んで、上を向かないでカメラを見て喋ってください」と言われました。基本的に監督の質問に沿って話しているのですが、「多分こんな話が聞きたいのかな?」というようなことを私から話してあげるようなこともありました。でもその話がどういうふうに映画になっていくのか、日記やテープなども全部渡していましたが、それがどう使われるのかはまったくわかりませんでした。できあがった映画を観て、素晴らしいストーリーになっているなと思いました。J.T.の話があって私の話があって、その後二つが合わさっていくという、映画自体がメタモルフォーゼしていくようなすごく上手い作り方をしています。

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作家、本当のJ.T.リロイ (2016年/アメリカ/111分/カラー、一部モノクロ/1.85:1/DCP)
原題 : Author: The JT Leroy Story
監督・脚本:ジェフ・フォイヤージーク
製作総指揮:ロバート・シェアナウ、ロバート・デビテット、ジェームズ・パッカー、マリー・テレーズ・ギアギス、エディ・モレッティ、シェーン・スミス、ヘンリー・S・ローゼンタール
制作:ジム・ザーネッキ、ダニー・ガバイ、モリー・トンプソン、ブレット・ラトナー、ヘンリー・S・ローゼンタール 協力プロデューサー:ルーカス・セラー、キャシー・フェルドマン
撮影監督:リチャード・ヘンケルズ 編集:ミシェル・M・ウィッテン
出演:ローラ・アルバート、ブルース・ベンダーソン、デニス・クーパー、ウィノナ・ライダー、アイラ・シルバーバーグ
配給・宣伝:アップリンク
© 2016 A&E Television Networks and RatPac Documentary Films, LLC. All Rights Reserved.
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新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷にて上映中!
4月29日(土)より大阪シネ・リーブル梅田、5月13日(土)より仙台チネ・ラヴィータ、
5月20日(土)より横浜シネマ・ジャック&ベティ、熊本Denkikanほか全国順次公開

2017/04/26/21:41 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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