ローラ・アルバート (作家)
映画『作家、本当のJ.T.リロイ』について【2/2】
新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷にて上映中!
4月29日(土)大阪シネ・リーブル梅田、5月13日(土)仙台チネ・ラヴィータ、
5月20日(土)横浜シネマ・ジャック&ベティ、熊本Denkikanほか全国順次公開
公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)
――ご自身の身に起きていたことについて、映画を観てあらためて思うところはありましたか?
ローラ こうやって日本に来てインタビューを受けるたびにもいろんな情報を得ていますし、もちろん映画を作ったことで、いろんなレベルで自分を理解し、より統合できた気がします。人間というのはどんな人でも、自分にとって自分が最大の謎なのではないかと思います。自分の中にある種の正面玄関みたいなものはありますけど、他にもいろんな違う面があって、それも結構あちこちにバラけていて。それで何かひとつのくくりがあるものだと思うんですが、その全体が何なのかを見れないまま終わってしまう人が多いような気がします。私は自分の複雑なOSがどうやって動いているかをこういう機会に見ることができてとても幸運でした。
――ローラさんはご自分の太った容姿にコンプレックスがあり、それがJ.T.リロイのアバターを生み出す要因ともなったわけですが、その後やせられます。こうした体験もとても劇的なものと思われるのですが、外見の変化に関して何か感じたことはありますか?
ローラ 私が少女時代に太っていったのは、自分のことを恥じていたからです。それは性的虐待を受けたから、その恥ずかしさから逃れるために食べることに走ったんです。性的虐待を受けた人には過食症などの摂食障害になる方が多いと思うんですが、ドラッグやアルコール中毒は隠せるんですけど、たくさん食べると体重に反映されるので隠せないですよね。隠せないのでいじめられる、いじめられるから安らぎを求めて食べる……という悪循環があるわけです。また、自分を変えようとして身体だけ変える人がいますが、例えばマイケル・ジャクソンのように肌を白くしたり整形したりしても、内面に向き合うことをしていないと外観が変わってもクレイジーなままなんですよね。彼も子供のころに虐待を受けたわけですが、そういうみじめさ、苦しさは外見がどんなに変わってもあんまり変わらないもので、内面から治していくことが必要なんです。それは骨折したところを編んで繋いでいくように時間がかかる作業なのですが。私は最初、J.T.を利用し、いわば彼を絵筆にして表現することで自分と向き合って感情面での傷を癒していきました。その後自分自身の身体を通じて自分が表現したかったことができるようになったわけです。「みにくいアヒルの子」の話ができるようになり、「他者に思いやりを持ってください」という話ができるようになりました。
――そうやって一歩一歩強くなっていったローラさんだからこそ、暴露にも立ち向かうことができたのですね。とても勇気の出る映画でした。
ローラ ありがとうございます。本当に誰もが自分を恥じることなく、自分が誰なのかを語ることができるようになればいいなと思います。それには希望が必要なのですが、私は一時期希望をなくしたことがありました。でも、ある人から「気を付けていれば次にどの道を行けばいいかのサインが出ているものだから、それを見つけなさい」と言われて、それがとても救いになりました。常に神様というか宇宙のようなところからのメッセージがあって、どんなことがあっても私には語るべきストーリーがあるんだと思えたのです。いつでも希望を忘れずに、あなたも書き続けてください(笑)。
――(笑)。はい、どうもありがとうございました。
( 2017年4月6日 アップリンク渋谷で 取材:深谷直子 )
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原題 : Author: The JT Leroy Story
監督・脚本:ジェフ・フォイヤージーク
製作総指揮:ロバート・シェアナウ、ロバート・デビテット、ジェームズ・パッカー、マリー・テレーズ・ギアギス、エディ・モレッティ、シェーン・スミス、ヘンリー・S・ローゼンタール
制作:ジム・ザーネッキ、ダニー・ガバイ、モリー・トンプソン、ブレット・ラトナー、ヘンリー・S・ローゼンタール 協力プロデューサー:ルーカス・セラー、キャシー・フェルドマン
撮影監督:リチャード・ヘンケルズ 編集:ミシェル・M・ウィッテン
出演:ローラ・アルバート、ブルース・ベンダーソン、デニス・クーパー、ウィノナ・ライダー、アイラ・シルバーバーグ
配給・宣伝:アップリンク
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