地曵豪 椎名遼 伊藤峻太監督 ウダタカキ

笛吹き師マグス役の地曵豪は、オールデ役のウダタカキとともに、頼れる兄貴分として現場を支える存在だったそう。「SF映画に思い入れがあったので完成を楽しみにしていて、毎年『いつできるの？』ってメール送っていました。でも一向にでき上がる気配がないので、そのうち『生きてるか？』って（笑）。心配でしょうがない」と、面倒見のよさがわかるエピソードを明かすと、伊藤監督は「最初はそんな感じだったんですけど、だんだんちょっと怒ったような……」と苦笑い。地曳は「こだわり抜けよ、俺いつまでも待つぞ」と、ラブレターのようになっていく文面を紹介して場を沸かせ、伊藤監督も「それに救われました」と笑顔を見せた。

『虹色★ロケット』では音楽を担当した椎名遼は、現在アメリカ在住ながら、本作では撮影、音楽、VFX他、様々な役割を伊藤監督と分かち合って務めたキーパーソン。舞台挨拶のために帰国し、ギリギリまで伊藤監督と調整の作業をしていたとのこと。「形にして公開できるのがいまだに信じられない」と実感のこもったコメントを述べた。

伊藤監督も感無量の表情で「この映画を考え始めたのは2006年のことなので、厳密に言うと完成まで12年ぐらいかかっていますが、あまり考えたくないので10年ということにしています（苦笑）。僕の中では『ユートピア』という世界は本当にあるものだと思って作っています。結果的には詰め込みすぎたようなところがあり、1回観ただけではなかなか伝わりにくいかもしれないけど、何回か観るといろんなことがわかる映画です。僕は何回も見ているうちに一体自分が何を作ったのかわからなくなっています。みなさんからのフィードバックでそれがわかるような気がしているので、ぜひ感想を聞かせていただきたいです」と呼びかけた。

そんな伊藤監督に、オールデ役のウダタカキは、「監督、おめでとうございます！」とお祝いの言葉をかけ、「映画を観て正直『わかんねえよ！』って思いました（笑）。僕は台本を読んでどういう世界なのか考えていたからわかるけど、お客さんにはわかりにくいだろうなと。でも混乱しているところはいっぱいあるけど、いろんなものが詰まっていて、自分が作った世界を妥協なく表現しようとしているところに感動しました。何度も観たくなるし、探求したくなる作品だと思います」と熱く語った。

ちなみにそんな複雑な本作を読み解くために、パンフレットならぬ「公式資料集」が販売されており、リピーター割引もあるとのこと。松永と伊藤監督が代わる代わるそれらのアピールをして息の合ったところを見せたあと、伊藤監督が「インタビューや取材では『監督がひとりでがんばって作った』という書かれ方をされることが多いんですが、ここにいない人も含めて、少人数ですがみんなでがんばって作りました。この作品をたくさんの方に観てもらいたいと思っています」と、記念すべき初日初回の舞台挨拶を結んだ。