――希美の変わり方がすごくドラマチックですね。

毎熊　希美の役ってすごく重要だなと思って。SMとかを敬遠する人って割合でいうと多分多い、でも実際こじ開けてみたらわからない……という役割だと思うんです。最初は敬遠していた希美が「縛って」と言って、目黒が「やっぱり普通にしよう」というシーンがすごく面白いなと思って。希美が常識だと思っていたことに疑問を持って「縛ってもらったらどんなだろう？」という方に向いているのに、外でそういうプレイをしている目黒が、自分の愛している人には「普通でいいんだよ」と言ってしまう。最初は自分の方がしようとしていたのに。その微妙に変わってくる心理が面白いなと思いますね。

――人を思い通りに支配するご主人様って気持ちいいだろうなと思っていましたが、この映画を観たら大変そうで同情してしまいますね。調教を始めて最初のうちは目黒も調子に乗っているんですけど、いつの間にか心理上では逆転されていて。

毎熊　目黒の器が足りないというか。本当にご主人様って大変だろうなと思います。キャストに実際に奴隷になったことがある方もいらっしゃいますけど、どこかで「これ以上ないな」という別れのときが来るという話をしていて、それはそうだよなあ……と。ご主人様でもできることって無限じゃないから、関係を持続させるのはかなり大変なんだろうなと思います。「今日は何をしてあげようか」とプランを考える時間が必要で、ましてや自分の生活もある中でスケジュールをきっちり組んで。人を支配する立場の人ってそれぐらい大変なんだろうなと思いますね。

――外から見たらすごく羨ましい状況なんですが、当人はそれを保つためにどんどん消耗されていっていると。ポスターのビジュアルもすごいですよね（笑）。

毎熊　「いいなあ」とか言われるんですけど、いやいや……、あんなに女体に囲まれたらもう逆に……（苦笑）。

――（笑）。でもすごくスタイリッシュですよね。二部作にしたのはラース・フォン・トリアーの『ニンフォマニアック』（13）を意識しているところもあるようなんですが、アート映画の趣もある作品だと思います。

毎熊　そうですね。アートな感じになっているのが多分城定（秀夫）監督ならではという感じがしますね。

――城定監督は早撮りのイメージがありますが、この作品はいかがだったのでしょうか？

毎熊　城定監督としては時間をかけた方かもしれないですけど、「早いな」という印象がすごくありました。特に濡れ場に関しては「1回本気でやってみてください」とリハーサルをやって、それからカットを順番に撮っていく感じで、2回同じことをすることは滅多になかったです。