2009年7月25日。ヤスミン・アフマドが51 歳の若さで亡くなった。
あれから10年。私たちのこころに彼女の映画は生きている。

2009年7月25日に、わずか 51 歳の若さで亡くなったマレーシアのヤスミン・アフマド監督。
2003年の45歳の時に『ラブン』で映画監督デビューした後、実妹と同じ名前で自身を投影した女性オーキッドを主役にした三部作『細い目』（04）『グブラ』（05）『ムクシン』（06）を発表し、東京国際映画祭やベルリン国際映画祭での受賞をはじめ、国内外で大きな注目を集めた。続く『ムアラフ-改心』（07）では東京国際映画祭アジア映画賞スペシャル・メンションを受賞。さらなる活躍が期待される中、6作目の長編となる『タレンタイム～優しい歌』（09）公開直後に、脳内出血により急逝した。映画監督としての活動期間はわずか6年、残した長編も6本と少ないが、母国マレーシアで今も親しまれている伝説的な映画監督である。

民族、宗教、言語が混ざり合う多民族国家マレーシアを舞台に、厳しい現実に直面しながらも、決して微笑みを忘れないヤスミンの映画世界は、日本では東京国際映画祭をはじめとする映画祭上映や自主上映を重ねて多くのファンに愛され、2017年に『タレンタイム〜優しい歌』が初めて劇場公開されてロングランヒットを記録した。

今回、ヤスミン監督の没後 10 周年を記念して、全長編作品を一挙に上映する特集上映が渋谷シアター・イメージフォーラムで開催される。期間中には、ヤスミン作品に欠かせない女優として知られるシャリファ・アマニや、『タレンタイム〜優しい歌』などのヤスミン作品に楽曲を提供している、ヤスミン監督の盟友ピート・テオの来日を予定している。さらに、ピート・テオが製作し、ヤスミン監督も参加したオムニバス長編『15マレーシア』とミュージックビデオ短編2作も特別上映される。『15マレーシア』に収められた短編「チョコレート」がヤスミン監督の遺作とのことで、ヤスミン監督ファンはこの貴重な機会をお見逃しがないよう劇場に足を運んで欲しい。