『おろかもの』芳賀俊監督画像

芳賀 俊 (監督) 映画『おろかもの』について【4/4】

2020年12月4日(金)~10日(木) テアトル新宿にて、
12月18日(金)~21日(月)シネ・リーブル梅田にて公開

公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

『おろかもの』場面画像4 『おろかもの』場面画像4
――この映画のテーマには”シスターフッド”、女性同士の連帯というものがあり、ありがちな女の子のイメージで女性を描きたくないという思いもお持ちだったということです。女性を描くことについて、今あらためて思うのはどんなことですか?

芳賀 この映画は2018年に撮影したんですが、当時から、特に僕と沼田くんは「女の敵は女」という言葉に疑問を持っていて。映画やドラマに美沙のような不倫相手が出てくるとまるで泥棒猫みたいに扱われ、すぐに裁かれて退場する、そういうキャラクターがすごく多くて「なんだよこれ」という思いがありました。それは実際の社会でもそうで、芸能人の不倫報道とかがあると、当人同士の問題なのにバッシングが起こり、人の命に関わるような言葉も平気で発する。今も同じようなことがたくさん起きていて根本的に変わっていないので、もっといろんなことを発信したくなっていますね。みんな他人をジャッジしようとするけれど、人って白黒つけられるものじゃなく、いろんな面を持っていて、混じってる色だと思うんです。森達也さんが言っていたんですけど、コップは上から見たら円で、横から見たら長方形で、たかがコップでこんなに矛盾するのに人間が矛盾しないわけがないと。そりゃそうだよなって。そういう矛盾している感情や心を愛してほしいなと思って作った映画です。女性と男性の間の格差も日本では縮まっていない部分がたくさんあるので、そういうことをずっと発信したいです。

――健治と美沙の関係を知った洋子も、兄にではなくまず美沙に「別れて」と言いに行くんですよね。それが世間の一般的な反応でもあって、そこからいろんなことを知って心が大きく揺れていく感じで。

芳賀 それがまさに矛盾ということです。洋子は両親の仏壇の前で「兄さんはクズに成り下がりました」と言うんですが、美沙には「兄はクズじゃない」と言ってしまう。それは感情の矛盾というか、洋子自身が自分の心の奥底にある感情をわかっていなかったと思うんですよ。証拠写真を集めてもどちらに突き付けようとしているのかわかっていなかった。こういう局面に遭遇したら、人は一つの感情ではいられなくなると思うんです。愛や憎しみが入り乱れる矛盾した感情を描きたいと思ってました。

――小梅のセリフに、洋子と美沙が「いい百合だった」というのがあって(笑)。洋子はそういう感情を抱いていたのかもしれないなあと。

芳賀 ああ、僕としては単純に、小梅にとっては二人の関係がすごく素敵で、それをコミック調にそう言ったと思うんですけど、好きに受け取ってもらえればと思います。

――田辺・弁慶映画祭などですでに何度か上映され、評価も受けていますが、観客からはどんな感想をいただきましたか?

芳賀 人によって全然違う感想を得られる映画になればいいなと思って作ったんですが、実際いろんな感想や意見が出ているのですごく嬉しいです。美沙の気持ちになって泣いた人もいれば、果歩に感情移入した人もいれば、ある種の冒険映画として撮ったものでもあるんですが、先の読めない展開が面白かったという人もいて。自分のことに重ね合わせて考えてくれた証拠でもあるし、観た後一つでも世界が広がれば嬉しいなと思って作ったので、そういう映画になってよかったです。

――初監督作を作り上げて、監督ご自身はどんな想いを抱いていますか?

芳賀 監督って人を巻き込むのも仕事の一つかなと思っていて、自分一人でできないことは山ほどあるので助けをお願いして、台風の目みたいにみんなを巻き込んで作り上げました。映画のエンドロールって、ものすごくたくさんの名前が出てくるじゃないですか。映画はそれだけ大きな数の助けを必要とするもので、監督というのはいろんなものに感謝する生き物なんだなと実感しています。この映画のエンドロールには10年前からの知り合いの名前がいっぱい並んでいます。10年かけて作ったチームであり、映画です。誇りに思える作品ができたなと感謝しています。

――次回作も楽しみです。

芳賀 まだまだこの世界で言いたいことは山ほどあるので、それを全部言い切るまでは死ねないなと思って(笑)。ワクワクするような面白い映画をこれからもたくさん生み出したいなと思っています。

( 2020年11月13日 赤坂・ムービー・アクト・プロジェクトで 取材:深谷直子 )

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おろかもの (2019年/日本映画/96分/16:9/カラー)
出演:笠松七海,村田唯,イワゴウサトシ, 猫目はち,葉媚, 広木健太,林田沙希絵,南久松真奈
監督:芳賀俊・鈴木祥 脚本:沼田真隆 主題歌:「kaleidoscope」円庭鈴子
配給・宣伝:MAP+Cinemago © 2019「おろかもの」制作チーム
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2020年12月4日(金)~10日(木) テアトル新宿にて、
12月18日(金)~21日(月)シネ・リーブル梅田にて公開

2020/12/01/21:14 | トラックバック (0)
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