インタビュー
『おろかもの』芳賀俊監督画像

芳賀 俊 (監督)
映画『おろかもの』について【1/4】

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2020年12月4日(金)~10日(木) テアトル新宿にて、12月18日(金)~21日(月)シネ・リーブル梅田にて公開

2019年の田辺・弁慶映画祭にてグランプリを含む5冠を受賞、その後も国内外の映画祭を席巻してきたインディーズ映画の話題作『おろかもの』が、「田辺・弁慶映画祭セレクション」を開催中のテアトル新宿を皮切りに全国で順次公開される。共同で監督を務めた芳賀俊と鈴木祥、脚本の沼田真隆は日本大学芸術学部映画学科の同期であり、『空(カラ)の味』の笠松七海、『密かな吐息』の村田唯ら現場で見初めた俳優たちとともに熱量高く作り上げた。細やかな視線の演技が織りなすシスターフッドの物語は、常識に凝り固まった感性を揺さぶってくれるはず。新型コロナの影響は続くが、一人でも多くの人に劇場で体感してほしい快作だ。そんな本作の発案者である芳賀俊監督にお話をうかがった。 (取材:深谷直子)
芳賀 俊(はが・たかし) 1988年生まれ、宮城県出身。日本大学芸術学部映画学科撮影コース卒業後、『舞妓はレディ』(14)で撮影助手デビュー。以降、映画・CM 等で撮影助手として活動。近年の参加作品は『モリのいる場所』(18)、『少女』(16) 等。撮影を務めた作品に田辺・弁慶映画祭で4冠受賞した『空(カラ)の味』(16)、『ボーダー』(11)がある。本作『おろかもの』が初監督作品。
STORY 高校生の洋子は結婚を目前に控えた兄の健治が、美沙という女性と浮気をしている現場を目撃する。両親を早くに亡くし、2人で支え合って生きてきた兄の愚かな行為とそれを隠して何食わぬ顔で生活している様子に洋子は苛立ちを募らせる。一方洋子は健治の婚約相手・榊果歩に対して、兄と2人だけの関係の中に突然入ってきた存在として言い様のない違和感と不満を感じていた。衝動と好奇心に突き動かされて美沙と対峙した洋子は、美沙の独特の物腰の柔らかさと強かさ、そして彼女の中にある心の脆さを目の当たりにして、自分でも予期せぬ事を口走ってしまう。「結婚式、止めてみます?」2人の女性達の奇妙な共犯関係が始まる。
芳賀俊監督画像1
――監督はこれまで撮影スタッフとして商業作品を含む様々な作品に参加してこられて、今回自主で監督にチャレンジされたわけですが、監督をしたいという想いも以前からお持ちだったんですか?

芳賀 はい、娯楽映画を作りたいなとずっと思っていました。大勢のお客さんに楽しんでもらえる作品、身近なところで言うと僕の家族はあまり映画を観ないんですけど、そういう人にも観てもらえる作品を作りたいと。僕も『ターミネーター2』(91)を観て面白いなと思ったところから映画に夢中になっていったので。

――日大芸術学部映画学科の撮影コースに進まれたんですよね。

芳賀 高校時代に放送部で監督や撮影を結構やっていて、撮影の奥の深さに惹かれて大学で勉強したんですけど、卒業後に現場に出たり商業映画を観たりするうちに「自分でやったらもっと面白く作れるのにな」ってフラストレーションが溜まっていって。「革命軍を作るか!」と思ってゲリラみたいな感じでこの映画を作りました。

――共同監督の鈴木祥さん、脚本の沼田真隆さんは日芸の同期だそうですね。卒業後もずっとつながりがあったんですか?

芳賀 そうですね、すごく仲のいい3人組なんです。脚本の沼田くんとはルームシェアもしていました。彼はもともと撮影コースだったんです。最初は現場に見習いに行っても全然お金がもらえなくて、「これでは生きていけないな」ってお互い協力しながら二人三脚でやっていました。沼田くんは、特殊機材、「特機」と言うんですけどクレーンとかドリーとかをやって、僕は撮影部で撮影の基礎を勉強して、そんな感じで経験を積んでいきました。カメラまわりのことを勉強していると監督をやったときに自分がイメージした映像を作る過程がわかっているので、すごく助かりましたね。

――印象的なビジュアルがいろいろあって、撮影出身の監督ならではだなと思いました。オープニングの、ホテル街のカラフルなネオンが主人公の洋子の顔を照らす映像にまず惹きつけられましたね。

芳賀 光って映画にとってすごく大事なので、「あそこにこういう光源があるな」というのを見つけてきたり、あと撮影にも工夫を凝らして、あのカットだけでもいろんなトリックを仕込んでいます。実際あの場所に行くと光の印象が全然違って同じ場所には見えないと思うんですけど、あそこで撮ったのかと自分でも思うぐらい上手い切り取り方ができたなと思って。それはやっぱり現場でいろんなマジックを見てきたからできたことだと思います。

『おろかもの』画像 『おろかもの』画像2
――鈴木祥さんとの共同監督にしたのはどうしてですか?

芳賀 鈴木くんをすごく信頼していて。大学4年間のうちに、2年実習、3年実習、卒業制作と授業で映画を3本作るんですが、3本ともずっと同じコンビで作りました。普通はコンビを変えていくんですけど、僕と鈴木くんは1年生で出会った瞬間から「運命の出会いだ」という感じで(笑)。明らかに波長が合って、好きな映画や嫌いな映画、好きなポイントまで大体同じです。よく言うんですけど、沼田くん含めて3人キングギドラみたいだなって。頭が3つあって胴体は一つという。

――(笑)。本当に仲がよさそうですね。その3人で力を合わせて作りたいと。

芳賀 そうです。バイブスが合って決断力があるからどんどん進んでいきました。まず沼田くんに「素晴らしい女優が二人いるから彼女たちを基に面白い脚本が書けないか?」ということを話して、ほどなく「オープニングとクライマックスのシーンを思いついたから」と読ませてくれたんですが、それがあまりにも面白くて「間を早く埋めようよ」って。クライマックスのこのビジュアルはすごいなと、イメージがどんどんふくらんできて。

――3人で意見が割れるようなことはないんですか?

芳賀 生産的な話ができる3人なので。共同監督をすると分裂するという話をよく聞くんですよね、お互いのプライドが邪魔するとか。僕らのプライドというのは自分の可愛さではなく作品の可愛さに帰結するので、「俺のアイデア使ってくれよ」みたいな非生産的な話し合いはなく、意見を聞いて「それ面白いね、採用しよう」といった感じで。それがすごくうまくいった秘訣なのかなと思います。

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おろかもの (2019年/日本映画/96分/16:9/カラー)
出演:笠松七海,村田唯,イワゴウサトシ, 猫目はち,葉媚, 広木健太,林田沙希絵,南久松真奈
監督:芳賀俊・鈴木祥 脚本:沼田真隆 主題歌:「kaleidoscope」円庭鈴子
配給・宣伝:MAP+Cinemago © 2019「おろかもの」制作チーム
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2020年12月4日(金)~10日(木) テアトル新宿にて、
12月18日(金)~21日(月)シネ・リーブル梅田にて公開

2020/12/01/21:11 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー

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