インタビュー
石井裕也監督

石井裕也(映画監督)

映画『ガール・スパークス』について

11月17日~23日まで横浜ジャック ベティにて公開

『ガール・スパークス』公式Web
『ガール・スパークス』予告編(YouTube)


石井裕也(監督)
1983年、埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。主な監督作品に以下があり、この3年に4本の長編と3本の短編を完成させた注目株。
「ラヴ・ジャパン」(DV/27分/2003)「剥き出しにっぽん」(16mm/91分/2005)「蝉が泣く」(16mm/12分/2005)「八年目の女二人」(DV/23分/2005)「反逆次郎の恋」(DV/96分/2006) 「東京の空の雲はナタデココ」(16mm/20分/2006)「ガール・スパークス」(DV/96分/2007) 「ばけもの模様」(HD/100分/2007)

大阪芸術大学の卒業制作作品である「剥き出しにっぽん」が2007年度第29回ぴあフィルムフェスティバルでグランプリ&音楽賞を受賞した石井裕也監督が大阪市のシネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビション=CO2の援助資金のたった50万円の助成金で撮りあげた意欲作が「ガール・スパークス」である。青春時代の真っ只中で頭がスパークしている女子高生と、どうしようもないぐらい駄目な父親の関係を軸に展開する群像喜劇で、石井監督ならではの大胆かつ繊細な演出が秀逸である。
石井裕也監督2ガール・スパークス1 ――埼玉県出身なのに大阪芸大に行ったのは?

石井 映画は好きで観ていたんですが、高校卒業後にどうしようかと考えたときに映画をやっていこうと決めたんです。親にもそう言ったし、そのためには今までと違う場所の大学で映画を学ぼうと思ったんです。

――大阪芸大に行く前は映画は作っていた?

石井 いや、作っていなかったです。ただ決めたら行動あるのみですから。

――そういう行動力が、この3年に4本の長編と3本の短編を完成させたことからも分かる。大阪芸大はどうでしたか?

石井 意外と大した人はいないなと(笑)。すごいと思ったのは1年先輩の岡(太地)さんぐらいでした。岡さんの『トロイの欲情』では助監督しました。

――石井くんが面白いと思ったのは、作品を見せてもらって良かったので連絡したときに「好きな監督は?」と聞いたときに「チャップリンです」とまず答えたことです。今の若い人で映画を作る人には珍しいなと思ったけど、いい意味で「計算がなくて素直だな」と思った。

石井 だって、チャップリンは凄いですよ。『街の灯』とか大好きです。『街の灯』は中学の時にテレビで見て感動しましたね。後は今村昌平監督ですね。

――今村昌平監督の重喜劇の要素は、石井くんの作品にはあるね。

石井 そこは今村昌平監督の好きなところですから。ダメだって言う人もいますが、今村監督の後期の『うなぎ』や『赤い橋の下のぬるい水』はすごいですよ。大好きです。

ガール・スパークス2ガール・スパークス3 ガール・スパークス4――話しが前後するけど、もともとどういう映画が好きだった?

石井 普通にハリウッド映画とかを観ていましたね。

――いつもどういう映画を作りたいと思っている?

石井 かっこつけているのは何でも嫌いなんです。ダサイのがいい。いい意味のダササですけどね。そのダササの中にある光る瞬間を描きたい。

――石井くんの世代だとマンガを読んでいそうだけど、マンガはよく読む?

石井 あまり読まないですね。数少ない読んだマンガの中でもジョージ秋山の『浮浪雲』は大好きなので、自分がいつか映画化したいです。

――『剥き出しにっぽん』と『ガール・スパークス』は家族の話しともいえますが、石井くんは家族に対する思いが強い?

石井 母親が早くに亡くなったので、父親に育てられたのですが、家族に対する思いは強いです。父親は再婚しましたが、やはり新しい母親と実の母親では違いますし。父親は銀行員でしっかりした人です。しっかりしすぎるぐらいで、家族とも離れて大阪芸大に行って4年たっての父親に向けてのラブレターが『剥き出しにっぽん』なんだろうと思います。

――父親には『剥き出しにっぽん』を観せた?

石井 観せましたが、感想は「全然わけわからん」でした(笑)。屈折した愛情ですからね。いずれ分かってもらえるでしょう(笑)。

――『ガール・スパークス』はそういう思いも入れた?

石井 そうですね。「思いっきり親を殴りたい」という思いが入っています。もちろん愛情表現としてです(笑)。現代の日本では無視されがちな家族の愛情を描きたかったんです。キャッチコピーにもなっていますが、「ささやかで、かわいらしい(今の)テレビドラマへのいやがらせ」もあります。日本映画もそうですが、家族や親子ってそんな綺麗ごとじゃないだろってことです。

ガール・スパークス5
ガール・スパークス6
ガール・スパークス7
――『ガール・スパークス』はCO2の援助資金の50万円で完成させたようだけど、大変だったのでは?同じCO2の援助資金で作った『ジャーマン+雨』は自己資金の100万円を足して150万円で撮っています。

石井 もう50万円で長編は作りたくないぐらい大変でした(笑)。こういう低い予算で長編を作れる人だとも思われたくないし(笑)。予算節減もあって、俳優としても出ています。

――PFFで『剥き出しにっぽん』がグランプリを受賞したときに「卒業制作で、400万の資金を作るために仲間と煙を出しながらバイトに明け暮れて作りました。いわゆる合コンとか、大学生らしいことは何一つしたことがありませんが、青春を台無しにした甲斐がありました。これからもことごとく青春を台無しにしていきたい」とコメントしていたのを思い出しました。

石井 どんどん映画を作ろうと思いますが、経済的なことに縛られたくはないですから。

――精力的に活動していて多作ですが、脚本はどれぐらいで書くの?

石井 1週間ぐらいで第一稿を書いたら、12稿ぐらいまで直しますね。

――それじゃあ、第一稿はほとんど残っていないのでは?

石井 そういうことになりますね。第一稿はあくまで叩き台で、納得いくまで直したいんです。

――もう新作を完成させている?

石井 『ばけもの模様』というタイトルです。待っててもダメですから、自主制作しました。元宝塚の人も出ています。

――楽しみにしています。

石井 期待に応える作品に仕上がっていますので、楽しみにしていてください。

インタビュー終了後に、こちらも気鋭の若手の前田弘二監督に来てもらった。前田監督の常連俳優の宇野祥平くんが共通の知人で、同じく阿佐ヶ谷に住んでいるのに会ったことがないとのことで来てもらったのだが(住所はとても近かった)、映画制作における話しなので、その後も2時間ほど終電近くまで話しは続いた。

取材/文:わたなべ りんたろう

ガール・スパークス 2007年 日本
監督・脚本・編集:石井裕也 脚本:登米裕一 撮影:松井宏樹 美術:内堀義之
出演:井川あゆこ,猪股俊明,中村無何有,桂都んぼ,二宮瑠美,福岡佑美子,内堀義之, 山下大輔,潮見諭,宮川浩明,
HusseinSiddiqi,登米裕一,石井裕也,江坂育代,小川正子 木下亮子,ヨウラマキ,細田勇生,大原桃子,金亮治,丸山薫,
坪谷康一,岡大資,市原治郎
公式 『ガール・スパークス』予告編(YouTube)

11月17日~23日まで横浜ジャック ベティにて公開

2007/11/21/07:38 | トラックバック (0)
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