脳内i-pod・サウンドトラックコーナー繁忙記

『大激闘』放送休止、『大都会』#28

第十六回

佐藤 洋笑

燃える恋ほど、脆い恋。
――と、唄ったのはちあきなおみさんでいらっしゃいまして、でも、実はオレが愛聴しているのは作者・友川かずき氏のヴァージョンでございまして、つまり回転扉の季節は廻り、あのヒトとオレはすれ違う定めなのさ、うーん、と納得しようとしてはみたものの、ギシギシと眠れずに夜を数えているのが実態でありまして、アイスピックごときでココロが砕けて、ネオンの海に飛び散る次第ですが、崩れかけたオレを見てもあのヒトは顔色も変えません。


3月6日

The French Connection [Original Motion Picture Sounddtrack] [Soundtrack] [Import] [from US]

“10 秒に1発撃ち、1分に一人死ぬスーパーポリスアクション”『大激闘 マッドポリス'80』#07「地下銀行襲撃」(脚本:宮田雪 監督:村川透)を観る!

――と、意気込んでいたら、放送休止でやんの。

グレてやろうか、火でもつけてやろうか、とゲンコ書きがはかどらないヤサグレたアタマがさらに殺伐となる。気を紛らわせるべくブラス・セクションがブリブリと不協和音を鳴らす『フレンチ・コネクション』のサントラを引っ張り出し、変拍子ビッグ・ジャズの鬼才ドン・エリスの世界に耽溺する。

…泣いてたまるか! 闘えマッドポリス! 来週こそ、撃て!殺せ!ブチ壊せ!

なお、今後の放送予定はこちら


3月7日

『大都会―闘いの日々―』#28「不法侵入」(脚本:斎藤憐、監督:舛田利雄)を観る。

佐藤慶以下、城西署四課が麻薬密売ルート撲滅に精を出す最中、殺人事件発生。老刑事・丸山米三こと高品格と知遇を持つチンピラ・大門正明が自首してくる。大門は身代わりであると見抜いた丸さんは、麻薬密売ルートの末端・ポルノの百恵ちゃんこと伊佐山ひろ子の取調べを黒岩君に任せ、大門の取調べに夢中。大きな事件放りやがってと冷やかな佐藤慶だが、殺された男が麻薬の密売人との情報を得て態度を一変。大門の恋人・桂木梨江はもちろん、老父・下條正巳、老母・初井言栄も動員した過酷な取調べを丸さんに強要。心ならずも組織の末端として命令に従う丸山米三。結果、麻薬密輸ルートの全貌はつかめるも、大門一家の平穏は警察権力とマスコミが一丸となって破壊しつくす。傷心の丸さん、憤りを隠せぬ黒岩君の前に、さらなる不幸がライフル片手にやってくる――。

倉本センセ、永原秀一とともに、作劇の中心を担った斎藤憐氏最後の登板。以前からオレのアイドル・老刑事丸山米三=高品格の魅力を描いたらズバ抜けていた(逆に、黒岩君の妹=仁科明子の設定には乗り切れなかったのか、初期は何らかの理由をつけて妹・不在にしていましたな)斎藤氏が最後に満を持して放ったのは、待望の高品格主演作でした。

自ら体を張って現場に臨み、厳しく容疑者を追及しても浪花節は忘れない。そして、刑事仕事に悩み苦しむ黒岩君には達観した助言。――後に出目徳という当たり役を得る名優・高品格の魅力炸裂! オレも思わず折れたタバコを湿したティッシュで巻いて喫ってみました。これがまずいことまずいこと。男子たるもの一度はやってみたい“この世の不幸をすべて背負った顔で不味そうにタバコを喫う”の図に一歩近づけました。大きくなったら高品格になりたい。

ドラマとしても、警察権力、マスコミの横暴、それに追い詰められるアウトサイダーの悲哀を主題としつつ、組織の歯車である刑事、記者の哀愁にも目配せする、斎藤氏が『大都会』で描いてきた題材の集大成のような濃い内容でした。また、高品格にスポットをあてつつも渡主演という線をキープするための対策だったのでしょうが、複数の事件を平行して描いていくあたりの構成も近年のドラマのさきがけのようで興味深いものがあります。

少々詰め込みすぎの感も拭えませんが、諸々の要素を見事捌いて、各人の人となりを描く視線は斎藤脚本ならではの味。そして、この題材は後によりソリッドに研ぎ澄まされ、警察権力が末端の人間を追い詰める様を一切の逃げ場なしに描いた『大都会PART Ⅱ』の衝撃エピソード「別件逮捕」を生み出します。

なお、今後の放送予定はこちら

次回から、倉本脚本、村川透演出による終幕・三部作です。

2008/03/10/17:58 | トラックバック (0)
佐藤洋笑 ,脳内i-pod
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