脳内i-pod・サウンドトラックコーナー繁忙記

『大激闘』#12、『大都会PART II』#03

第二十壱回

佐藤 洋笑

そ行きの顔をして、似合わない服を着て――


4月17日

殺しの烙印日々をやり過ごすのが辛いから――“10 秒に1発撃ち、1分に一人死ぬスーパー ポリスアクション”『大激闘 マッドポリス'80』#12「潜行大作戦」(脚本: 峯尾基三 監督:長谷部安春)を観る。

以下、予告より抜粋。

――東京湾に浮かぶ悪の巣窟に、マッドポリスは挑戦する。ジャパンマフィアの巨大な資金源、ヘロイン密造工場を破壊せよ! 闇を突く潜入、華麗な冒険、必殺のガンプレイ。彼らの目的は唯一つ、純度99%の雪ネタを消滅させることだ!――

今回は予告に一切偽りなし。#03以来となる脚本:峯尾基三、監督:長谷部安春のタッグがクールに良識を踏みにじるアクション巨編。捜査や聞き込みなんて言葉知らんよとばかりに冒頭から潜入シーンが展開し、暴力が炸裂。取調べなどは後回しにマズは拷問。いいのかこれで? マッドポリスだからいいんです! 哀れMPの餌食と化したJMの末端・元科学特捜隊員・黒部進の迫真のジャンキー演技が胸に染みます。

一方で、MPのみならずJM側も悪逆非道。潜入してきた片桐竜次、中西良太コンビを自動車の排ガス攻めにする過酷な尋問をクールに遂行するのは悪役商会代表・八名信夫の仕事。さらにその上に君臨する悪ボスには、オレの大好きなキングコブラこと南原宏治大センセイが登板。端正な顔をニヒルにゆがめ、ダブルのスーツにポケットチーフを決めつつ、マシンガン構えるその雄姿! サスガは『殺しの烙印』の殺し屋No.1! モゴモゴしていて何をおっしゃっているのか聞き取れない部分も多々ありましたが、そんなことはさておいた威圧感でMPを圧倒。クライマックス、腕を撃たれるシーンで、明らかに間違ってお腹に手を当てる瞬間がありましたが、何事もなかったようにポジション・チェンジするお茶目ぶりも魅力です。スタッフの皆さんも南原センセイの貫禄の前にNGなど出せなかったのでしょう。

というわけで、相変わらず快調な一本でした。ラスト、時間と予算があまったと言わんばかりに銃を乱射してセットを破壊しつくすマッドポリス御一行様の凛々しい姿に胸がきゅんとなります。しかし、先週まで“マッドポリスの闘いは果てなく続く!”みたいなノリだったエンディング・ナレーションが、突然、“ジャパンマフィアは重要な資金源を失った!”とか、風呂敷を畳む方向に傾いていて、まあ、再放送ゆえ、先刻承知していることなんですが、淋しい限りですやな。

とまれ、闘えマッドポリス! 来週も、撃て!殺せ!ブチ壊せ!

なお、今後の放送予定はこちら

次回は、長谷部監督と永原秀一氏のタッグが、難攻不落、天然の要塞を舞台に、ジャパンマフィア対マッドポリスの24時間の攻防を華麗に展開する「スカイライダー大作戦」です。


4月18日

刑事魂~TV刑事ドラマソング・べスト
刑事魂~TV刑事ドラマソング・べスト
『大都会PARTII』主題歌「ひとり / 渡哲也」収録
大都会PART II』#03「白昼の狂騒」(脚本:永原秀一、監督:村川透)を観る。

――城西署捜査一課の一員・最近は湾岸署勤めの小野武彦がマスコミに口を滑らせたことから、情報が漏れ、殺人犯検挙が失敗する。怒りに任せ、小野の人格を否定しつくし、鉄拳制裁を加える黒岩君。緊急配備のおかげで無事に犯人は検挙され、課長・小池朝雄の仲裁もあり、いったんコトは沈静化する。

そんな折、津軽弁丸出しの労務者・モヒカン刈りでキメた三上寛(!!)が、ショットガン片手に、片思いしていたウェイトレス・伊佐山ひろ子を人質として喫茶店に篭城する凶悪事件発生。BGMにクリエイションのハードロックを要求し、伊佐山にストリップを強要。ついでながら制服警官を射殺と歯止めの効かない三上の凶行。

思うところありの小野は独断で人質交換に挑み、無事、伊佐山の解放に成功する。だが、三上の暴走は止まることを知らず、何故か六本木通りでの大カーチェイスを経て、舞台は東京タワーへ以降、小野は絶対絶命の危機に。責任を感じる黒岩君の決死の小野救出作戦は成功するのか――。

村川透の初の本格的アクション演出作品。様々な意味で伝説と化している『大都会PART II』初期の大傑作が再び野に放たれました。後に数々の映画で組む名カメラマン・仙元誠三とのコンビの躍動感と緊迫感に溢れる映像がまずは圧巻。冒頭の既に事件は始まっている!と言わんばかりの手持ちカメラによる映像から、時折飛び出す舞台調の照明演出。キャスト・スタッフともどうかしているとしか言いようのない東京タワーでの大ロケーションと空撮。こんな映像が茶の間に殴りこんでいたとは…。

また、すでに散々に語られているところですが、出演者達の熱演がとにかく圧巻。津軽弁丸出しの三上は何を言っているかさっぱり聞き取れませんが、漲る殺意で全編を引っ張ります。その人質としてステテコ一丁で東京タワーの非常階段を登る小野武彦の雄姿。私はこれで、三上寛小野武彦の名前を覚えました。お二人の一世一代の熱演といって過言ではありますまい。黒岩君の感情の揺れも妙なリアルさがあり、目が放せません。

そして、殺気溢れる緊迫感をさらに盛り上げるのが、シャブの発作のように挿入されるブラックなギャグ。音楽を要求する三上に「ヤツは音楽好きなんすかね」と、トボケタことを抜かして黒岩君に張り倒される粟津號、黒岩君の命令にボヤきまくる峰竜太、人質交換に自ら臨んでもいいと男気を見せるようでいてやはり役立たずな小池朝雄課長。トドメに相変わらず不謹慎にアドリブをかます松田優作。

事件解決後、あまりに殺伐とした展開に疲れたか、東京タワーの上でタバコ一服しつつ、主題歌「ひとり」を唄う黒岩君――。このアナーキーなノリが私がこの時代のアクションものを偏愛する所以であります。

なお、私事ながら――オレは以前『ロック画報』という雑誌で「映画×ロック」という特集を企画しました。70年代から80年代の映画とロック系音楽のかかわりを実際に役者活動も盛んに行っていたミュージシャンらへの取材も交えて探求する企画です。

その中で、杉作J太郎氏を聴き手とする三上寛氏インタヴューを行いました。その際、「白昼の狂騒」の裏話をはじめ、村川監督や松田優作との交流などもたっぷり聞かせていただきました。もし、興味おありでしたら、ご一読ください。

なお、今後の放送予定はこちら

次回は、石原プロが初の空撮に挑んだ衝撃作。村川透のアクション演出のもと、三上寛が東京タワージャックを敢行する「白昼の狂騒」です。

殺しの烙印
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出演:宍戸錠,真理アンヌ,
南原宏治,小川万里子
監督:鈴木清順
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2008/04/21/12:37 | トラックバック (0)
佐藤洋笑 ,脳内i-pod
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