インタビュー
山田あかね監督/『犬に名前をつける日』

山田あかね 監督 映画『犬に名前をつける日』について【6/6】

シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

――あとは、後半で出てくる震災の被災地のことにも考えさせられました。取り残された犬や猫たちのことだけではなく、避難所で暮らしている人たちもいまだに孤独を抱えたままなんだなと。

山田 震災から4年も経つのに、被災して自分の家を失われた方が、避難所で犬も飼えないでいることに矛盾を感じるんです。「ポチっこ」のおばあちゃんとか、おばあちゃんも一人暮らしでポチっこも1匹で、もうそんなに若くはないその残りの人生を犬と離れ離れに暮らさなきゃいけないというのはおかしいですよね。どうして避難所に犬がいてはダメなのか、犬が飼える避難所をひとつ作るだけでもいいのに。ただ、そのことを告発するような表現ではなく、「そういう人がいる」というのを伝えたかったので、あのシーンを入れました。

――犬のことも考えていないですし、人のメンタルの部分も考えていないですよね。物理的にただ避難させればいいだろうと。

山田 そうですね。犬の話をしていると、「犬1匹ぐらいどうでもいいだろう」っていう空気がありますけど、犬の問題って実は人間の問題なんです。犬に助けられている人とか、犬を支えにしている人ってたくさんいて、その部分が大事です。例えば、この映画には「さくらの里山科」という犬と暮らせる老人ホームが出てきますが、ここは特別なところです。普通は犬と一緒に一人暮らしをしていたお年寄りが病気になって施設に入るときに犬は連れていけなくて、そうするとその犬は処分されることになるわけです。自分が生きるために昨日まで一緒にいた犬を処分するなんて、精神的には耐えられないですよね。だけどどうしようもない、他に方法がない。その人は介護施設に入っても「自分のせいであの犬が死んだ」と思って鬱になったりするんです。それでは何も救っていないですよね。身体を救っても心を救っていない。だから犬とか猫とかっていうと小さい問題だと捉えられがちですが、そうじゃないと思いますね。人間の心の問題だと思います。

――この映画を観たことで本当にいろいろ考えさせられました。今は戦争が近づく気配もあって人間の命が軽く扱われているなと思うことが多いのですが、人間を大事にできなかったら動物も大事にするはずはなく、社会全体の問題に繋がるなと思いました。

山田あかね監督2山田 そうですね。この映画を観てもらったphaさんっていうニートのブロガーの方が「犬猫の問題というのは資本主義の問題だよね」っていうことを言っていたんですが、戦後のごく最近までは犬と人間の間にお金というものは介在しなかったんですよね。野良犬がいたりだとか、生まれた子犬をもらってきて飼うとか。犬は番犬になったり、何らかの形で人間の役に立ち、人間はご飯をあげて世話をする、っていうお金が介在しない関係でした。それが、バブルのころから、犬でお金を儲けられるということを知ってしまった。犬と人間の関係にお金を介在させたことに犬の不幸の一端があると、phaさんが読み解いていたんですけど、ああ、そうだなあと思って。犬問題って「保護」とか「命」とかだけではなく、資本主義の別側面でもあるんだなということに最近気が付きました。何にでもお金が介在し、犬の命もそうなってしまっているから、犬ははただ生きていただけなのに知らないうちに商品にされちゃっていたんですよね。ペットショップだとかブリーダーとかによって大量生産されるというのは本当に犬と人間の間にお金が介在したことによる不幸であるというのを考えました。

――突き詰めると経済にも原因があるということですね。根が深いですが、いろいろと議論ができる素晴らしい作品だとあらためて思いました。この映画はかなみの「まだまだ取材中」という言葉で終わるのですが、監督としてもこのテーマをライフワークのように続けていきたいと思われているのですか?

山田 そうですね、犬が好きですし、「ちばわん」や「犬猫みなしご救援隊」の活動を追ううちに、この4年間で犬を巡る状況というのがどんどん変わっていくのを目の当たりにして、このあとも変わっていくと思うんですよね。それを見続けたいです。日本の犬猫環境がどうなっていくのか見ていきたいですね。

――私もこれからもいろいろ勉強していきたいと思います。今日はありがとうございました。

( 2015年10月31日 シネスイッチ銀座で 取材:深谷直子 )

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犬に名前をつける日 2015年 / 107分 / カラー / 16:9 / 5.1CH
出演:小林聡美(『かもめ食堂』『プール』『マザーウォーター』『紙の月』ほか)、
上川隆也(『東京夜曲』『梟の城』『二流小説家 シリアリスト』ほか)、
渋谷昶子監督(カンヌ国際映画祭短編部門グランプリ『挑戦』)、
動物保護団体「ちばわん」「犬猫みなしご救援隊」
製作:スモールホープベイプロダクション
監督・脚本・プロデューサー:山田あかね(『すべては海になる』『むっちゃんの幸せ』)
構成:松谷光絵 撮影:谷茂岡稔 編集:大泉渉 ラインプロデューサー:竹内暢生
音楽:つじあやの 主題歌:「泣けてくる」ウルフルズ © スモールホープベイプロダクション
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2015/11/11/18:16 | BBS | トラックバック (0)
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