えー、今回は一人だけ遅れてしまいまして大変申し訳ありませんでした。
皆様三者三様のレビューをすでにお読みになっていることと思われます。筆者も読みました。しかも書く前に。
なので遅出しの利みたいなものがあるかと思ったのですが、その逆でした。非常に書き辛いですね。
これからはきちんと決められた期限に観たいと思います。どうもすいません。と、たっぷり枚数稼ぎをしたところで「血と骨」です。
筆者はこの原作を発売当時に拝読しておりました。今でもそのインパクトは非常に強く残っております。なにせあのキャラクターですから。
暴力描写はもとより映画でも描かれておりましたが腐った臓物を食べるところとか。当時はまさか映画になるとは思いませんでした。
やれる役者がいないと思ったというのが大きな理由です。
で、いきなりもの凄い余談ですが、筆者の高校時代の部活の監督は、グラウンドに出てきた瞬間、
と言うよりもその車の音を聞いただけで部員をハンパじゃない緊張感に包み込んでしまう人でした。
(少し大げさに言えば車の音を聞いただけで震え上がるくらいです!)我々は監督の圧倒的な暴力の前に完全に支配されていました。
30mビンタ&グーパンでガラスに突っ込み血だるまになった奴もいました(ホント実話ですよ!)。とにかく現れただけで吐き気を催すのです。
まあ、そのような経験などから、なんと言いますか、男子は暴力というものに女子よりも敏感で、そしてほぼ一生(かな?)
その問題に付きまとわれてしまうような気がします。つまりなんだかんだ言っても、男子が一番怖いのは圧倒的な素手の暴力を有しており、
その力で有無を言わさず周囲に緊張感を撒き散らして押さえ込んでしまう人なのではないかと心のどこかで思っております。
主人公の俊平はそのような人物の最高峰なのではないかと原作を読んだとき思いました。ほとんどその暴力描写に圧倒されっぱなしだった筆者は、
「なんなんだよ、この怪物は・・・」とタメ息をつき、その圧倒的な暴力の前では差別など「うんこちんちん」
てなもんだくらいに感じた記憶があります。
そしてその俊平をビートたけしが演じると聞いたときには「そおかぁ!タケシかぁ!」というふうに思いました。「確かに他にいねえかあ・・・
」といった少し後ろ向きな気持ちです。
で、映画を観ました。久し振りに「役者、ビートたけしを見た!」という気持ちになりました。膳場も仙道もふれておりますが、
特に老いてからの芝居は志村ケンの婆さんに匹敵するというのはふざけた感想ではありません。ですが、仙道も鮫島嬢もふれておりますように、
「でも、あんまり怖くねーな」という印象でした。原作小説と映画の違いを述べることにほとんど意味はないのでしょうが、
原作の俊平に震え上がった身としてはやや物足りなさを感じました。こんな親父、
ガキの頃に近所にいたなあといった程度に感じてしまったのです。ただ、たけしが演じたことによって原作とは違った良さもあったことは事実。
映画はこの怪物の少年時代を演じる伊藤淳史が、ある野心を持って日本に渡ってくるところから始まる。
そしていつの間にか怪物になってしまい、そして怪物のまま生き、怪物のまま故郷に戻って行く・・・。そして死に、
またラストで伊藤淳史の顔が映る。なぜこのような怪物になってしまったのか、(そこにあったであろう、強烈な差別や貧困の説明など)
一切説明はない。だがたけしと伊藤淳史という、どちらかと言えば「かわいい」部類に入るこの役者たちが俊平を演じたことによって、
そんな部分も何となく想像でき、そしてなんと言ってもこの映画は怪物を描いた映画でなく、その家族、
あるいは周囲の人を描いた映画だと強調されたと思う。そのガツンとスクリーンに丸写しされた家族と人物たちは民族問題などを越えて、
とにかくそこに存在して暮らしている人間達であり、その各々が観客席ごと飲み込こんでしまうかのような力を放っていた。
(2004.11.16)
監督・脚本:崔洋一 脚本:鄭義信 撮影:浜田毅 美術:磯見俊裕
出演:ビートたけし,鈴木京香,新井浩文,田畑智子,オダギリジョー,松重豊,中村優子,濱田マリ,北村一輝,中村優子,唯野未歩子,柏原収史,塩見三省,國村隼,寺島進,伊藤淳史,仁科貴,佐藤貢,中村麻美 (amazon検索)
血と骨
コレクターズ・エディション
おすすめ度:
血と骨〈上〉
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血と骨〈下〉
おすすめ度:
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