加藤 行宏 (監督)
映画『アイドル・イズ・デッド-ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』について
2014年1月11日(土)より、テアトル新宿にてレイトショー他全国順次公開
新鋭・加藤行宏監督によるアイドル・グループBiS(新生アイドル研究会)主演映画の続編『アイドル・イズ・デッド-ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』が間もなく公開を迎える。前作ではやむなき事情からアイドルを名乗ることになった女子たちがアイドルの研究を積みファンを掴むまでをホラーとアクションを交えて描き、BiSの過激で破天荒な魅力に迫りながら感動を呼ぶ痛快な作品になっていた。その後BiSはメジャー・デビューを果たして大ブレイク。絶頂の最中2014年に解散することを宣言し、アイドルの理想形を体現してしまうつもりらしい。そんな中作られたこの続編は、原発推進アイドルが大衆を操る恐怖のパラレル・ワールドをブラック・ユーモアたっぷりに描く前作以上の意欲作となり、アイドル界と日本映画界の殻を壊そうという二者のタッグは最強だとまたも思い知らされた。加藤監督にBiSの魅力を絶妙に引き出すストーリー作りや撮影法、原発問題というテーマに取り組んだ理由を語っていただいた。(取材:深谷直子)
――いいですよね、ノンちゃん。メガネっ子の風貌もかわいいし、やっぱり一生懸命なのがすごく伝わります。プー・ルイも今回は洗脳されて原発推進アイドルのエレクトリック★キスのメンバーになるという役で、かなりハラハラさせられました。
加藤 『アイドル・イズ・デッド』を作り終わって、パート2を作るか作らないかまったく分からないときに反省会みたいなのをスタッフ同士でやって「こうすればもっと面白くなっただろうな」という意見の出し合いをしていたときに、「プー・ルイはサイボーグみたいな役がいいんじゃないか」っていうのが出て。「見た感じがお人形さんみたいだし、『ブレードランナー』(82)のレプリカントみたいなキャラクターがいいんじゃないですか?」って言われて「それはいいかもな」って思っていて。で、次を作るとなったときに、レプリカントは無理だけど、洗脳されて無表情な感じのキャラクターができないかなというのがアイディアとしてありました。
――冒頭ではスケ番みたいに出てくるのに、真逆ですよね。それも面白かったですけど、じゃあプー・ルイにはレプリカントとして役作りをしてもらって。
加藤 まあ役作りというより、まんまですね。多分そっちのほうが素に近いんじゃないかな。アイドルゆえに大人たちの言うことを聞いてやっているというのがプー・ルイの生きざまだと思うので。
――あ、BiSでも大人たちから言われるがままにやっている感じなんですか? 本人たちのやりたいようにやっているように思っていました。
加藤 それはメンバーそれぞれあると思うんですけど、プー・ルイはリーダーなので上の指示をちゃんと聞いて他のメンバーに伝えるという部分で。だからエレ★キスになって以降のプー・ルイのキャラクターのほうが素に近い気がしますね。
――身体に特徴があるキャラクターも前作に続き登場しますね。エレ★キスのジュンは脚に杭が刺さって、そこが機械化しているんですけど、ああいう身体が変わってしまうというのは塚本晋也監督の影響を受けているということをお聞きしましたが。
加藤 僕は塚本晋也監督がすごく大好きで、映画を作りたいというきっかけが『東京フィスト』(95)を観て、人体改造願望っていう、ボクシングでハードな身体を作るとかそういうのにすごく憧れて、それを題材にしたものを撮りたいと思ったんです。そういう人間改造というのがジャンルとして合っていると思ったので結構入れましたね。
――ミッチェル(ミチバヤシリオ)ちゃんもすごい体型で、ユニークでしたね(笑)。
加藤 ミッチェルは普通の女の子なんですよ。特徴がないんでマネージャーに「ミッチェルってどんな子なんですか?」って訊いたら「ミッチェルは普通の子です」って(笑)。普通、普通でどうしましょう?ってなったときに、ミッチェルのインタビューで「アイスクリーム屋で働いていました」っていうのを読んで、アイスクリームが好きそうな顔をしてるからアイスクリームを食べ過ぎて太った、っていう設定に。まあ妄想ですね(笑)。本人はデブが嫌いで、太っている自分を見て「いやだ~~」って言ってたらしいんですけど。
――あれはアイドルがやるには厳しい役ですよね。ゲロを吐いたり(笑)。
加藤 それができるのがやっぱりBiS。作ってて楽しかったですね。
――抵抗なくやってくれたんですか?
加藤 本人たちがどう思ってたかは分からないですけど、現場ではとにかく僕たちに言われたことに「大丈夫です」って答えるのがBiSで。脚本にOK出た時点で覚悟が決まってたのかは分からないですけど、「ミッチェル、あれやって、これやって」って言うたびに「大丈夫です」って。会話の7割8割は彼女の「大丈夫です」っていう言葉が耳に残っていますね。
――ミッチェルちゃんのファッションもオーバーオールとか懐かしい感じで強烈でしたが、あれは何か参考にしたものがあるんですか?
加藤 参考にしたのは……、僕は『グーニーズ』(85)が好きで(笑)。『グーニーズ』の中のチャンクです。オーバーオールと赤いセーターはチャンクの服です。
――ああ、そうなんだ(笑)。ミッチェルちゃんにはなごみました。道にまいたアイスを拾っていって捕まるとか、古典的なギャグがおかしくて。
加藤 昔の映画がすごく好きなんですよね。
――そんな感じがしますよね。誰が観ても笑えるような笑いがちゃんと入っていますね。
加藤 今の映画ってすごくリアルを大事にする、それはいいことなんですけど、それが主流になればなるほど、昔の映画ってすごくサービス精神に満ちていたんだなあと。トロッコに乗ってカーチェイスとか昔いっぱいあったと思うんですけど、そういうのはもうなくなっちゃっているなあって。だからなくなっている分反動があったのかな、80年代の『グーニーズ』とか、そういうアドベンチャー映画を参考にしたりしましたね。
出演:BiS(プー・ルイ,ヒラノノゾミ,テラシマユフ,ミチバヤシリオ),
三浦透子,柳英里紗,金子沙織(ex- バンドじゃないもん!),國武綾,大島葉子,三輪ひとみ,水澤紳吾
監督・脚本:加藤行宏|挿入歌・主題歌:BiS(avex trax)|企画:直井卓俊|プロデューサー:加藤行宏, 南陽
特別協力:強瀬誠(深谷フィルムコミッション) 製作:『IID2』製作委員会
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS|カラーシネマスコープ|5.1ch|84分 © 2014『IID2』製作委員会