ファブリス・ドゥ・ヴェルツ (監督) 公式インタビュー
映画『地獄愛』について【2/2】
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2017年7月1日(土)より新宿武蔵野館他全国順次公開
――「変態村」でも印象的なミュージカル的な場面がありますが、今回でもグロリアが歌を唄う場面が非常に印象的ですね。
ファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督(以下、FDW) あの死体を前にして歌う場面だね。最初は歌を唄う場面ではなかった。撮影の数週間前になにか音楽的な要素を取り込めないかと考えて、自分で歌詞を書いて、作曲家に渡して曲にしてもらった。実はあの歌を唄っているのはロラではなく、吹き替えなんだ。現場ではプレイバックを流して、口パクで演じてもらった。現場でもうまくいくかどうかは、わからなかった。でも編集の段階で、歌を盛り込んだ形でうまくまとまったのでよかったよ。テストで周囲のスタッフにも観てもらったら、反応がすごくよかった。『変態村』でも、当初は酒場の場面にミュージカル的要素はなかった。でもなにか出来ないかと思って作曲家に頼んで、実験してみようと思って、最終的にはああいう場面になった。とてもうまくいったと思っているよ。
――火の周りで踊るようなインパクトの強い場面がありますが、インスピレーションはどこから得るのでしょう?
FDW 現実をリアルに描くよりは、映画においてのポエジーを大事にしようと思っている。なので、歌や踊りといった象徴的な要素が、自然と印象的な場面になっているのかもしれない。
――影響を受けた映画監督は?
FDW 本当に映画が大好きだから、名前を挙げるのさえ難しいね。大好きな監督や作品がたくさんありすぎて。『地獄愛』に限って言うのであれば、ズラウスキーの作品は参考にした。塚本晋也監督作品のエネルギーにも触発された。フランジュ、コクトー、メルヴィル、ポランスキー、溝口、黒澤、ベルイマンも大好きだ。たくさんいるから、数人だけ挙げるのは難しい。ベルイマンは20代のとき観るのが辛かったけれど、40代に入ってみると非常に興味深く観れる。
――『ハネムーン・キラーズ』と同時上映ですが、どちらを先に観ればよいでしょう?
FDW オリジナルだね。傑作だから見る価値がある。まずそれを観て、詩的な解釈を加えた『地獄愛』を観て欲しいね。オリジナル作品の方が、実際に起きた事件にもっと忠実だね。
――子役ピリ・グロワーヌが迫真の演技をみせますが、どのようにして演出したのですか?
FDW 虐待したんだ。それは冗談だけど、時間をかけて探した。そこで素晴らしい役者をみつけたのがラッキーだったね。とにかくがんばってもらった。
――『地獄愛』を観て、ギャスパー・ノエ作品を思い起こさせるという批評家がいます。
FDW ギャスパーとは知り合いで、彼は人格者でもあるし才能もある。でも作品に共通点があるとは思わないね。たしかに2人とも映像の可能性を信じている点では似ているかもしれない。処女作からその評判はつきまとっているけれど、フェアでもないし、自分では正当性のあるものだとは思わない。ギャスパーの作品はエッジの効いたコンセプトムービーだ。僕の作品はもっと人間の本能に基づいたものだと思う。テーマの関連性という点でも類似点はないと思う。
――日本のファンにメッセージを。
FDW 日本映画の大ファンなんだ。溝口や黒澤も大好きだ。なので、日本で公開されると聞いて凄く嬉しく思っている。ぜひこの作品を楽しんで欲しい。
( 5月12日 スカイプにて )
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地獄愛 (2014年/ベルギー=フランス合作/93分/カラー/5.1ch/2.35:1/R15+/原題:Alleluia)
監督・脚本: ファブリス・ドゥ・ヴェルツ 脚本:ヴァンサン・タビエ、ロマン・プロタ
撮影:マニュエル・ダコッセ 編集:アンヌ=ロール・ゲガン 音楽:ヴァンサン・カエイ
出演: ロラ・ドゥエニャス、ローラン・リュカ、エレーナ・ノゲラ、ピリ・グロワ-ヌ
配給・宣伝:アンプラグド/提供:キングレコード
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