ファブリス・ドゥ・ヴェルツ (監督)
公式インタビュー
映画『地獄愛』について【1/2】
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2017年7月1日(土)より新宿武蔵野館他全国順次公開
映画『地獄愛』は、1940年代のアメリカで、3年間で20人以上の殺人を犯した実在の連続殺人鬼カップル、マーサ・ベックとレイモンド・フェルナンデスの関係性をエモーショナルに描いた異色ラブストーリー。全世界を震撼させた前作『変態村』(04)に続き、狂気の愛を描く<ベルギーの闇3部作>の第2弾となる本作の日本公開を控えるファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督への公式スカイプインタビューをお届けする。
STORY 出会ってしまったふたり。モラルとタブーに背き、欲と本能に従ったその先にあるものとは?
シングルマザーのグロリアは、ある日友人の薦めで出会い系サイトを通じてミシェルという男に出会う。ミシェルは寂しい女性を夢中にさせ、女性の性的欲求不満を満たすことで生計を立てている結婚詐欺師だった。ミシェルに出会った途端深い恋に落ちたグロリア。ミシェルの正体を知ってもその恋は冷めることはなく、そばにいるため兄弟と偽り共に結婚詐欺をする道を選ぶ。しかし、募る嫉妬心がグロリアを狂気へと向かわせ、ついには殺人を犯してしまう。強い愛情で結ばれたふたりの行動はエスカレートしていき……。
――レイ&マーサをモデルにした理由は?
ファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督(以下、FDW) 映画のテーマを探していたとき、2人を題材にしたアルトゥーロ・リプステイン監督の『深紅の愛 DEEP CRIMSON』を偶然に観て衝撃を受けた。そこで、このテーマを元にして、ベルギーを舞台にすれば、面白い作品ができるのではないかと考えた。愛し合っている恋人2人の孤立と孤独はいいテーマになると。そしてすぐに脚本に取りかかった。もちろんオリジナル作品『ハネムーン・キラーズ』の存在も知っていた。すでに有名な題材を使って、自由に脚色したいと思ったのがきっかけだったんだ。
――同じ事件を元にした作品はいくつかありますが、他の作品と比べて「地獄愛」の特徴や違いは?
FDW まず社会的背景に違いがある。『ハネムーン・キラーズ』では、事件が起きた60年代の時代背景が重要な要素になっていて、『深紅の愛 DEEP CRIMSON』ではスタイルが重要視されている。演劇的とも言えるし夢のようなクオリティも醸し出している。今回の作品は愛し合う2人の孤立感をリアルに描くことが重要だった。孤独な人間が偶然出会い、孤独を分かち合いながら、反道徳的で自分勝手な方法で、社会との関わり方を見つけてしまう。その軌跡を映画で検証してみようと思った。今回の題材は、何度も映画化されていることを考えても、古典的題材とも言える。しかしそれに新しい解釈や見方を加えて、全く新しいものを創造することができる。それが「地獄愛」における試みだったんだ。
――ロラ・ドゥエニャスの演技が強烈ですが、どのような演出を現場でしたのですか?
FDW ロラは非常に敏感で繊細、かつ情熱的で本能的な俳優だ。キャスティングが決定した時点で、彼女を想像しながら脚本を練り直した。なので現場ではすごくスムーズにいったと思う。彼女には アンジェイ・ズラウスキー監督の『ポゼッション』を観てもらって、いろいろディスカッションもした。演技の参考としてではなくて、あのエネルギーを如何にしてこの作品で創りだすことができるかについて語り合った。
――16ミリで撮影した理由は?
FDW フィルム特有の粒子が荒い質感をあえて強調している。フィルムの有機性みたいなものを醸し出したかった。子供の頃、『悪魔のいけにえ』を観てショックを受けたけれど、まさにああいう質感を創りだしたかった。まるで匂いまで伝わってきそうな質感だね。デジタルは好きじゃない。まさにウソの世界だ。シネマのポエジーを台無しにしてしまう。映画作家はある意味では錬金術師のようなもの。いろいろイメージで実験しながら、限界に挑戦するべきだ。でもデジタルはフラットで冷たい。ミステリーもない。ただフィルムで映画を撮り続けることは非常に難しくなってきている。それでも毎回フィルムで撮りたいと考えているんだ。すごくフィルムが好きだから。デジタルにはミステリーがない。ポエジーもコントラストもない。
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監督・脚本: ファブリス・ドゥ・ヴェルツ 脚本:ヴァンサン・タビエ、ロマン・プロタ
撮影:マニュエル・ダコッセ 編集:アンヌ=ロール・ゲガン 音楽:ヴァンサン・カエイ
出演: ロラ・ドゥエニャス、ローラン・リュカ、エレーナ・ノゲラ、ピリ・グロワ-ヌ
配給・宣伝:アンプラグド/提供:キングレコード
©Panique / Radar Films / Savage Film / Versus Production / One Eyed - 2014
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