児童支援の為の映画上映イベント
特集上映:サム・フリークス Vol.5
2019年7月6日(土)、渋谷ユーロライブにて開催!
不眠症になった女性のまどろんでいるかのような真夏の日々と「ここではないどこかへ」という想いを描いた『まどろみの二コール』&トム・マッカーシーの監督デビュー作『ステーション・エージェント』を2本立て上映!
『まどろみのニコール』『ステーション・エージェント』 2018年秋からスタートした「はみ出し者映画」の2本立て上映イベント「サム・フリークス」の第5回が、2019年7月6日(土)に渋谷ユーロライブでされる。
今回上映されるのは、不眠症になった女性のまどろんでいるかのような真夏の日々と「ここではないどこかへ」という想いを描いた『まどろみの二コール』。2本目は『スポットライト』でアカデミー賞作品賞を受賞したトム・マッカーシーの監督デビュー作『ステーション・エージェント』。両作品ともソフト化の予定がなく、今回を逃すとなかなか劇場では観ることができないであろう貴重な作品なので、ぜひ劇場まで足を運んでいただきたい。
なお、今回も有料入場者1名につき250円が、すべての子供達が社会から孤立することなく暮らしていけるようになることを目的に学習支援や自立支援を行っている「認定NPO法人 3keys」に寄付される。寄付の詳細に関しては本イベント主催者の岡俊彦氏が運営するブログ「マフスのはてな」で、後日報告されている。
<開催概要>
日時: 2019年7月6日(土) 会場:ユーロライブ(渋谷)
タイムテーブル
13:00~ 当日券販売開始 13:30~ 開場
13:45~『まどろみのニコール』上映(日本初上映)
15:18~ 休憩 15:30~『ステーション・エージェント』上映(16:59上映終了予定)
前売り券は、主催者がそろそろ借金取りに殺されそうな状況なので、
特別価格1374(悲惨な死)円でPeatixにて販売中。
当日券料金: 2本立て1500円 ※入れ替えなし ※全席自由席
監督:ステファヌ・ラフルール 出演:ジュリアン・コート、カトリーヌ・サンローラン
2015年 カナダ・アカデミー賞 作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演女優賞、助演男優賞ノミネート
ケベック映画『まどろみのニコール』は、不眠症に悩まされているニコールの大学卒業後のモラトリアムな日々をモノクロで描いている。彼女は両親が長期休暇で不在の間、実家で気ままに過ごしたり、「老夫婦」のようにいつも一緒にいる金髪の親友ヴェロニクとあてもなくぶらぶらしているが、兄がバンド仲間を引き連れて戻ってきたことで生活に徐々に微妙な変化が生じていく。『フランシス・ハ』や『ゴーストワールド』を特に彷彿とさせるが、ここでは(『ストレンジャー・ザン・パラダイス』等の影響で採用された)白黒の画面は、永続的な夢のような感覚として機能している。劇中でSF映画『姿なき訪問者』へのリファレンスがあるが、『さよなら、退屈なレオニー』の編集も手がけている監督のステファヌ・ラフルールは、声変わりの最中にある少年に成熟した中年男性の声を当てるなどSFのような遊び、あるいは無表情喜劇的なシュールなユーモアの要素を溶け込ませているのだ。そして「間欠泉」のような怒りとともに、疎外感に捕らわれたニコールは「ここではないどこか」へと目覚めるのである。(映画ライター・常川拓也)
監督:トム・マッカーシー 出演:ピーター・ディンクレイジ(『エルフ ~サンタの国からやってきた~ 』『ゲーム・オブ・スローンズ』)、パトリシア・クラークソン(『エイプリルの七面鳥』『しあわせへのまわり道』)、ボビー・カナヴェイル(『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』)、ミシェル・ウィリアムズ(『マンモス』)
2003年 サンダンス映画祭 観客賞、脚本賞受賞/2004年 インディペンデント・スピリット・アワード 新人脚本賞、ジョン・カサヴェテス賞受賞
『ステーション・エージェント』もまた気だるい夏の風景とはぐれ者への共感を静かな叙情で湛えている。ピーター・ディンクレイジ初主演作となったこの映画で監督のトム・マッカーシーは、もともと「小人」を想定していたのではなく、世界から孤立することを選んだ鉄道愛好家の物語を企図していたと言う。マッカーシーは彼を怒りもロマンティックな感情も内包した多面的な生身の人物として扱っている一方で、「見えない」存在として嘲笑の対象にされている側面をあえて強調している。思えば、彼の近年の主演作『孤独なふりした世界で』は一人でいることと孤独であることの違いに言及していた。標準から外れている者に対して差異をあげつらうボディ・シェイミングが蔓延する社会の中では周囲から浮いている方が疎外感を抱かせるわけである。だから彼は一人でいることを好む。そんな中で社会の一部になれない者たちが互いの疎外感を分かち合いながら、思いがけない友情を形成していく。以降も疑似家族の物語を真摯に紡いでいくことになるトム・マッカーシーの原点にして、クリント・イーストウッドも称賛した傑作。(映画ライター・常川拓也)