インタビュー
加藤行宏監督/『アイドル・イズ・デッド-ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』

加藤 行宏 (監督)
映画『アイドル・イズ・デッド-ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』について

公式

2014年1月11日(土)より、テアトル新宿にてレイトショー他全国順次公開

新鋭・加藤行宏監督によるアイドル・グループBiS(新生アイドル研究会)主演映画の続編『アイドル・イズ・デッド-ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』が間もなく公開を迎える。前作ではやむなき事情からアイドルを名乗ることになった女子たちがアイドルの研究を積みファンを掴むまでをホラーとアクションを交えて描き、BiSの過激で破天荒な魅力に迫りながら感動を呼ぶ痛快な作品になっていた。その後BiSはメジャー・デビューを果たして大ブレイク。絶頂の最中2014年に解散することを宣言し、アイドルの理想形を体現してしまうつもりらしい。そんな中作られたこの続編は、原発推進アイドルが大衆を操る恐怖のパラレル・ワールドをブラック・ユーモアたっぷりに描く前作以上の意欲作となり、アイドル界と日本映画界の殻を壊そうという二者のタッグは最強だとまたも思い知らされた。加藤監督にBiSの魅力を絶妙に引き出すストーリー作りや撮影法、原発問題というテーマに取り組んだ理由を語っていただいた。(取材:深谷直子)
加藤 行宏 1981年生まれ。ニューシネマワークショップで映画制作を学び、映画を作り始める。 NCW 制作部で作った長編『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』(2010)が、第4回田辺・弁慶映画祭で特別審査委員賞等を受賞、2011年に劇場公開される。「MOOSIC LAB2012」の企画で制作した『アイドル・イズ・デッド』(12)が同映画祭の観客賞ほか数々の賞を受賞。他の主な作品に『痩せる薬』(06)、『機械人間、11号。』(08)、『善人』(11)、『ラジオデイズ』(13)がある。
加藤行宏監督――『アイドル・イズ・デッド-ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』、面白く拝見しました。1作目はMOOSIC LABという自主映画の映画祭の出品作として撮られて、アイドル・グループのBiSが主人公のチャレンジ精神あふれる作品として評判になりましたが、その続編が劇場公開作として作られるという展開には驚きました。すごい快挙でもありますが、続編は監督に撮りたいという思いがあって撮られたんですか?

加藤 いや、『1』(=『アイドル・イズ・デッド』・12)を作ったときはもう「おしまい!」となっていたんですよ。もう何も出てこない、という状態で。でもそれから半年後ぐらいかな? つばさレコーズに呼び出されて「続編を作りましょう」っていう話になって。まあ僕のほうでは次回作の話はまったくなかったので、映画を作れるんだったら、っていうので一旦終わりとなっていたのを撤回して続きの話を無理に作りました。

――確かに完結する作品だからこそ、殺し合いを含めいろんなことを遠慮なくぶち込めたというようなお話で、あの続きを作るのは難しいですよね。

加藤 リライトを重ねる上で大変だったのは、「『1』を観ないで新しく観る人たちにも理解できるお話作りをしなきゃだめだよ」ということを受けて、それは今まで映画を作ってきた中で考えたこともない課題だったので、「ああ、それってどうやればいいの?」と。で、レンタルビデオ屋さんでまだ観ていない映画のパート2だけ借りて、理解できるのか?って(笑)。続編映画の作り方の勉強を重ねるのが僕の中で初めての体験でしたね。

――ああ、そういう苦労があったんですね。準備期間はどれぐらいあったんですか?

加藤 脚本を書き直していた時期は8ヵ月ぐらいかな? 半年以上はありましたね。

――では割とじっくり作れる感じで。

加藤 そういう感じではあったんですけど、途中でメンバーがやめちゃいましたから(苦笑)。それが大変でしたね。

――ああ、作品が完成してからも出演していたメンバーが二人脱退していますが、撮る前にも……?

加藤 そうなんです、一人やめまして。シナリオ第5稿ぐらいかな、徹夜して書き上げて「書き終えた!メール送信!終わったー!」ってパッと寝て。それで昼間に起きてツイッターを見たら、「ワッキーがどーたらこ―たら」というツイートがバーッと並んでて。「えええ~」となって、BiSのHPを見たら「ワキサカがやめました」って……。うぉぉぉー!

――もう言葉も出ない(笑)。衝撃ですよね。じゃあせっかく書いたキャラクターもそれで書き直しという感じですか?

『アイドル・イズ・デッド-ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』加藤 まあそんなに大変でもなかったですけど、キャラクターは書き変えて何とか、という感じでした。最初は「やってられるか!」って感じでしたけど(苦笑)。メンバーがやめて書き直し、というのはちょっとしんどかったです。

――ストーリー自体はしっかりできていますもんね。今回は、前作で人を殺めたメンバー二人は留置場にいて、ノンちゃん(ヒラノノゾミ)が一人BiS復活のために奮闘しているというところから始まります。映画の中でノンちゃんの存在感がとても高まっていますが、こういう設定にしたのはどうしてですか?

加藤 まずBiSの中でノンちゃんのようなアイドルって他にいる?っていうのがあって。BiSを好きになるか嫌いになるかの価値判断には多分ノンちゃんを好きか嫌いかということも関わるんじゃないか、というぐらいBiSの特徴になっている子だと思うんですよね。前作の『アイドル・イズ・デッド』を観てくれた人の間でノンちゃんの評価がすごく高かった。それとノンちゃん自身、アイドルをやってはいますけど女優志望なんですよ。女優さんになりたいというモチベーションがあったというので、それを有効利用できないかと思って、ノンちゃんメインで映画を作れないかなというのがきっかけとしてありましたね。

――ノンちゃんのハードな過去なども描かれますよね。前作でも昔いじめられていたという設定でしたが、今回は実際の描写が出てきて、こんなことをされていたんだなあと。

加藤 ノンちゃん自身もひきこもりをやっていたんですが、そういう社会になじめなかった子という特徴的な実体験を背負っていることも、主人公にする上でお話の設定に使えないかなあと考えました。

――弱い立場だった子が、最後にはみんなを巻き込んでいくという逆転劇がすごく感動的でした。1作目のころからノンちゃんに注目していたんですか?

加藤 注目するようになったのは作品ができてからです。作っている途中は、これはきついなあということだけで。BiSって学芸会ですらお芝居をしたことがない子たちだったので。「うわ~、こんなにきれいな棒読み初めて聞いた!」って(笑)。それはプー・ルイなんですけどね。とにかく撮ってるときは「やべーやべー、どうしよう」って、どうにか彼女たちの演技を形にしようというので精一杯だったんですよ。味わっている余裕なんてなかったんです。編集してるときも「やべーやべー」って思ってて、で、完成した作品をお客さんに観てもらったときに、BiSのファン以外の方たちからも「ノンちゃんいいね」っていうレスポンスが来て「あ、いいんだこれ」って(笑)。それで心のゆとりが出てきたときに観たら「ノンちゃんいいな」と。あとで気付いた感じでした。

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アイドル・イズ・デッド-ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-
出演:BiS(プー・ルイ,ヒラノノゾミ,テラシマユフ,ミチバヤシリオ),
三浦透子,柳英里紗,金子沙織(ex- バンドじゃないもん!),國武綾,大島葉子,三輪ひとみ,水澤紳吾
監督・脚本:加藤行宏|挿入歌・主題歌:BiS(avex trax)|企画:直井卓俊|プロデューサー:加藤行宏, 南陽
特別協力:強瀬誠(深谷フィルムコミッション) 製作:『IID2』製作委員会
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS|カラーシネマスコープ|5.1ch|84分 © 2014『IID2』製作委員会
公式

2014年1月11日(土)より、テアトル新宿にてレイトショー他全国順次公開

2014/01/07/17:11 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー

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