チャン・ゴンジェ監督 映画『ひと夏のファンタジア』について【5/5】
第37回PFF 招待作品部門「映画内映画」サプライズ上映作品
今冬公開予定
公式サイト 公式twitter トレイラー (取材:深谷直子)
――前作の『眠れぬ夜』は、小津安二郎監督作品へのオマージュが感じられるようなフィックスの撮影が特徴的だったと思います。撮影をされていたから構図などへのこだわりも強くお持ちなのかな?と思ったのですが。
チャン 『眠れぬ夜』は室内で撮っているのでそういう印象を受けた方が多いようで、「日本の映画のようだ」という意見を多く聞きました。他には現代の若いカップルの話であるということで「諏訪敦彦監督の作品のようだ」ということも言われたのですが、僕があの作品を撮るときに思っていたのは自分たち夫婦の生活を映画にしてみたいということで、撮影もそれに最適と思う方法で撮りました。
――『ひと夏のファンタジア』はインディーズ作品でありながら韓国で3万人以上の動員があったとのことですね。それにはもちろん監督の人気や日本映画への関心などもあったかもしれませんが、これだけヒットしたのはやっぱり熱心な映画ファンだけではなく一般の方が劇場に足を運んだからですよね。とても小さな作品ですが、どのようにこの現象が起こったのでしょうか?
チャン この映画がこれほど人気が出た要因というのは自分でも分からないのですが、おそらく映画館で映画を観るときに、他の映画はすべてアクションだったりスピーディーな展開だったりというエンターテインメントの要素があるのに比べてこの映画が特別なものに感じられ、そういう部分が人々の感性を刺激したのではないかなと思います。人気が広がっていった秘訣もよく分からないのですが、20代の女性がよく観てくれて、その人たちの感想を見ると「恋愛がしたいな」とか「旅行がしたいな」というものがとても多かったので、そういうところで共感を得て広がっていったのだと思います。
――日本ではそこがさらに新鮮に映るのではないかなと思います。日本では数年前から「草食系男子」という言葉が使われるようになっていて、それは若い男性が恋愛に淡泊になってきているのを表すものなんですが、ユウスケのちょっとモヤモヤしたものを抱きながら一途に女の子を想う姿というのは、女性が待ち焦がれていたものではないかなと(笑)。
チャン この映画を観て日本のみなさんも「恋愛がしたいなあ」とか思ってくれたらいいですね。僕は個人的に恋愛至上主義なので、そういうふうに思ってほしいです(笑)。
――(笑)。次回作の構想はありますか?
チャン 当分はゆっくり休みたいと思っています。次回作は今までとはまったく違うテーマの作品を撮りたいと思っているので、そのためにちょっと時間をかけて考えたいと思っています。これからしばらくの間の計画は育児です(笑)。娘が今2歳で、ずっと撮影や編集や公開などの仕事で忙しくて子育ては妻に任せきりだったので、育児をしたいですね。
――それは素敵ですね! 監督がご自分の生活を大切にしながらまたじっくりいい作品を作ってくださるのを楽しみにしています。
チャン (日本語で)ありがとうございます。
――今日はどうもありがとうございました。
( 2015年9月20日 東京国立近代美術館フィルムセンターで 取材:深谷直子 )