チャン・ゴンジェ監督 映画『ひと夏のファンタジア』について【4/5】
第37回PFF 招待作品部門「映画内映画」サプライズ上映作品
今冬公開予定
公式サイト 公式twitter トレイラー (取材:深谷直子)
撮影現場1
撮影現場2――キム・セビョクさんは日本語が大変上手でしたね。
チャン 10年ぐらい前に独学で日本語を勉強されたということなんですが、元々すごく言語感覚に秀でた方なのではないかと思います。ただ、本人が言うには映画で話しているほどの日本語のレベルではないとのことで、日本語での演技をちょっとストレスに感じていたところもあったようです。第1章は通訳の役なので、上手く話さなければならないというのがストレスだったようですが、第1章はシナリオがあるので台詞を覚えて話したという感じで、第2章もずっと日本語で会話をしなければいけないのですが、こちらはちょっと日本語ができる旅行者の役なので、「たどたどしくてもそれがかえっていいんだ」という話はしていました。それでもやっぱり不安があるようだったので、リハーサルをしたり、その場で台詞を作って練習したりしながらやっていきました。
――この映画のためにかなり努力したんですね。岩瀬亮さんも見ていてすごく切なくなるいい演技をされていましたが、舞台中心に活動されている方なので今回とても新鮮な発見をさせていただいたという感じです。お二人ともこれから注目していきたいと思います。
チャン もうお二人とも20代ではないので、これからの若いスターという位置ではないと思うんですが、演技のいい中堅俳優に向かっていかれると思いますね。
宣伝担当 岩瀬さんは今度韓国映画に出るんですよ。今回のPFFに出席していないのは、今ソウルで撮影中だからなんです。
――えっ、すごいですね。『ひと夏のファンタジア』で注目されて、ということですか?
チャン (照れながら)そうだと思います。岩瀬さんは韓国で人気がありますし、韓国では日本映画も注目されてきているのですが、それは今韓国で映画を撮っている岩瀬さんにかかっています(笑)。
――(笑)。監督こそ、岩瀬さんや日本のことをとても素敵に紹介してくださってありがとうございます。今回の日本での撮影には、知らない土地で合宿気分で撮るという楽しさもあったとのことですよね。映画のエンディング・クレジットを見ていて、スタッフでは先頭ぐらいの位置に「ケータリング」として日本の女性のお名前がたくさん並んでいるのに気付き、多分現地の方が食事のお世話をしてくれて、それに感謝を表しているのかな?と思いました。
チャン 撮影期間中に寝泊まりしていたところでご飯を作ってくれたのは現地のおばあちゃんたちで、本当に毎食おいしいご飯を心を込めて作ってくださいました。スタッフみんなで朝も昼も「おいしい、おいしい」と言いながら食べていましたので(笑)、クレジットに名前を入れるのは当然のことだと思います。エンディング・クレジットの日本人スタッフの分に関しては、なら国際映画祭のほうからリストをもらったものを載せていますので、自分が順番を付けたわけではないのですが、そこは河瀬直美監督が協力してくださった方に細かく気を配ってくれたところではないかなと思います。
――現地の方との交流で印象に残ることはありましたか?
チャン そうですね、少し違う話になってしまうかもしれませんが、五條の町にロケハンで行ったときに河瀬直美監督と一緒に歩いていたら、町の人がみんな「あっ、河瀬直美さんだ!」とすごく注目してくるので、「ああ、すごい方なんだな」と感じたのと「河瀬監督がいないとここでは映画を撮れないだろうな」と思ったのが印象的でした(笑)。
――さすがですね(笑)。チャン監督のこれまでの経歴についてもお伺いしたいのですが、映画を学ばれた韓国映画アカデミーでは撮影を専攻されていたということですね。そこから監督に転向したということになりますが、そのきっかけは?
チャン アカデミーを卒業したあとも4、5年は撮影の仕事をしていて、撮影監督になることを考えていましたが、あるとき「自分の話を一度映画にしなきゃな」ということを考えて『つむじ風』を撮りました。それが監督としての始まりです。ただ自分としては、監督だとか撮影だとか、どのスタッフになるかというよりも、元々映画自体がすごく好きで映画作りに携わりたいという想いが強かったんです。アカデミーに入ったときには撮影に関心があったのでそれを専攻したんですが、撮影監督になりたいという夢があったというわけではないです。今は監督としてやっていますが、映画を作る人になっているということのほうに意味があります。