――岩瀬亮さんと息がぴったりだなと思いました。岩瀬さんとのお芝居はいかがでしたか？

セビョク　もし第2章をいきなり撮っていたら、ああいう雰囲気は作りにくかっただろうなと思います。第1章を撮影しているとき、岩瀬さんは自分の撮影がないときもみなさんと一緒に五條で寝泊まりをしていて、撮影の合間にいろいろお話ができました。先ほどの康すおんさんみたいに、岩瀬さんもまわりの人を和ませる雰囲気を持っている方でした。私が分からない言葉のことを、例えば「この言葉とこの言葉のニュアンスの違いは？」と訊いたりすると、私が理解できるまでいろんな例を出して丁寧に説明してくれました。そういう時間がたくさんあって、だんだん仲よくなっていったところで第2章の撮影が始まったので、それによっていい雰囲気が出せたのじゃないかな？と思います。また、お芝居のリアクションがすごく上手な方だとも思います。私が何を考えているかをすぐに感じ取り、それに合わせたリアクションをしてくださるのですが、それは計算ではなく岩瀬さんが感覚的に身に付けていることだと思います。一緒にお芝居をしているときも「すごいなあ」と思っていましたし、完成した映画を観たときもそれを感じました。

――私が岩瀬さんにインタビューをしたときは、逆に「セビョクさんは懐が深くて、何を言っても受け止めてくれる」ということをおっしゃっていたんですよ。

セビョク　……（沈黙）。そうなんですか。

――（笑）。今も沈黙が流れましたが、映画にも沈黙が映っていますよね。ちょっと心配になるんですけど、そのあとちゃんと返してきて、その間相手が言っていたことをしっかり考えていたのが分かる沈黙で。ゆっくりした誠実なコミュニケーションに心を打たれました。

セビョク　韓国でも「二人の沈黙の瞬間がとてもよかった」という観客の方からの反応がすごくたくさんありました。チャン・ゴンジェ監督の撮り方だから、沈黙をそのまま使って映画にできたんじゃないかなと思います。

――キスシーンも素晴らしかったです。そこでキスすることはセビョクさんには知らされていなかったということですが、観ている方からしたら、このシーンのヘジョンと友助は「何か起こるだろうな……？」というムードを漂わせていました。演じていてそういう予感のようなものは感じていましたか？

セビョク　ああいうシーンになるとは全然知らなかったんですけど、でも恋人同士が一緒にいるときに、気持ちが高まってちょっといい雰囲気になってくることはあると思います。あのシーンを撮っているときもそういう雰囲気だとは感じていました。それがそのまま映されたのですごくよかったと思います。自分で観てもそういう雰囲気がすごく出ているなと思いますし、観客の方からもあのシーンがとても好きだということをよく言われるのですが、二人の間の微妙なニュアンスがうまく出ていたので共感してくれたのだと思います。そうなったのは、やっぱりまったく知らずに撮ったからだと思います。