内藤 瑛亮 (監督)
映画『ドロメ【男子篇】』『ドロメ【女子篇】』について【5/6】
2016年3月26日(土)よりシネマート新宿にて2作品同時公開、以降全国順次
公式サイト 公式twitter (取材:深谷直子)
――本当に楽しい作品になりましたが、今回の映画作りは監督にとっても気分的に今までとかなり違っていたのではないですか?
内藤 そうですね。撮影自体すごくリラックスした気分で取り組めました。この作品は『ライチ☆光クラブ』の直後ぐらいに撮影しているんです。『ライチ☆光クラブ』は原作もので、原作者やファンの思い入れも強かったし、少ない予算である種SFみたいなフィクション性の高い世界観を構築しないといけないので、気苦労というかストレスが結構あったんです。芝居もある程度芝居がかったやり取りをしないと世界観が保たれないところがあり、そのリアリティとフィクション性のバランスを取るのが大変だったので、今回はいい意味でリラックスしてやりたいなというのがありました。楽しかった思い出が強い感じですね。
――学園ものが続いていますが、それ以外の路線に取り組みたいという気持ちはありますか?
内藤 子供の視点で話が進んでいく映画が最近続いているんですよね。『パズル』、『ライチ』と、今回のもそうですけど。『先生を流産させる会』のときから、子供の視点と大人の視点と、その両方を描きたいなという思いが自分の中にはあって。今あたためている企画にはそういうものが何本かあって、罪を犯す少年少女がいて、大人は彼らにどう向き合えばいいのか?社会は何をすればいいのか?という話を考えているので、それを今後実現できたらいいなと思いますね。
――大人の視線を入れつつも、やはり「罪を犯す子供」というのが監督の中でのテーマなのでしょうか?
内藤 今後もやっていきたいというか、どうしても気になってしまうんです。離れられない、というのが正直な思いですかね。実際に自分が10代のころ、毎日「みんな、死ねばいいのに」と思っている暗い少年だったので。なんで罪を犯さずに大人になれたんだろうな?って疑問もあるんですよね。大人になって演劇部の先生として子供と触れ合う機会ができ、逆転した視座から自分を見ている感じがあって。それをものづくりに反映させたいなと思っています。
――内藤監督が『牛乳王子』で映画祭に応募していたころは、ホラーが一般に受け入れられないものだと痛感して、それで社会問題になっている事件を題材にした『先生を流産させる会』を作ったということでしたよね。そこから状況が変わって今はホラーの話題作をたくさん手がけていらっしゃいますが、この変化をどう捉えていますか?
内藤 『先生を流産させる会』がある程度話題になって、プロデューサーさんからお声をかけていただくようになったんですけど、社会的な題材をモチーフにした映画で道が開けたのでそういう話が来るかな?と思ったら思いのほかジャンル映画が多くて。そこはちょっと意外に思っています。もうちょっと『先生を流産させる会』路線の社会的な事件をモチーフにした人間ドラマを撮りたいと思っているんだけどなぁ――と。企画を売り込んだりするんですけど、なかなか資金が集まらないとか、もうちょっとで撮影に入るというところで頓挫しちゃったりとか。自主映画時代は「ホラーばかり撮ってちゃダメだ!」と思って意識的に転換したんですけど、商業で依頼があるのはホラー寄りばかりで、なかなか思うようにいかないもんだなあと(苦笑)。
――観たいですね、『先生を流産させる会』路線の作品を。まあ内藤監督はホラーも本当に面白く撮られてしまうから。
内藤 ホラーとかジャンル映画自体は好きですからね。で、依頼されて作るというのは、自分の中にはないものがそこにあるわけで、その中でいかに自分なりの面白さを追求するかということをして、元々は想定していなかったものができる、というのもよさとしてあるかなあと思います。
監督:内藤瑛亮『先生を流産させる会』『パズル』 脚本:内藤瑛亮、松久育紀『先生を流産させる会』
主演:小関裕太,森川葵
出演:中山龍也,三浦透子,大和田健介,遊馬萌弥,岡山天音,比嘉梨乃,菊池明明,長宗我部陽子,木下美咲,東根作寿英
製作:「ドロメ」製作委員会(日本出版販売,TCエンタテインメント,TBSサービス,是空,レスパスビジョン)
配給:日本出版販売 宣伝:太秦 ©2016「ドロメ」製作委員会
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