2人合わせて162歳!
伝説の喜劇俳優・柳澤愼一× 高橋長英
W主演の“超シニア世代の青春寓話”
兄消える
人生の終着点を迎えてもなお葛藤は続く
町工場を細々と続け、100歳で亡くなった父親の葬式を終えたばかりの76歳の真面目な独身、鉄男のもとに、40年前に家を飛び出した80歳の兄・金之助がワケあり風の若い女、樹里を連れて突然舞い戻ってきた。その日以来、奇妙な共同生活を始める3人。やがて金之助の過去や樹里の素性が明らかとなる中、兄と弟それぞれの胸中に静かな確執とともに「故郷」や「家族」への思いが蘇っていく――。
2019年5月25日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開!
『八月の鯨』に触発されてから約10年……
日本映画には珍しい“超シニア世代の青春寓話”
信州上田を舞台に、40年ぶりに再会した兄弟の確執と絆を、ほろ苦い笑いと共に瑞々しく描いた映画が誕生した。国外では、いまもシニア世代の主演作が制作され、近年でもクリント・イーストウッド監督、主演の『グラン・トリノ』(08)はじめ、『最高の人生の見つけ方』(08)、『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(12)、『手紙は憶えている』(15)などの名作が生まれている。しかし、若手俳優の主演作がつづく日本映画では、『兄消える』は稀有な一作である。
企画の発端は、プロデューサーの新田博邦がリリアン・ギッシュとベティ・デイヴィス主演の『八月の鯨』(87)を観た頃にさかのぼる。小さな島に暮らす老姉妹の夏の日々を描いたこの作品に触発されて、老主人公の物語を10年以上前から構想。理想的なベテラン俳優二人を主演に迎えたことで、ついに映画化が実現した。
柳澤愼一 × 高橋長英 W主演
名優二人が織りなす、軽妙かつ滋味あふれる演技のアンサンブル
放蕩無頼の兄・鈴木金之助と謹厳実直な弟・鈴木鉄男という、対照的な兄弟を演じるのは、日本の映画、演劇、軽演劇界を支えてきた二人の名優。金之助役には、日本人らしからぬ軽妙洒脱な演技で昭和の喜劇王・榎本健一の後継者ともいわれ、「奥様は魔女」のダーリン役の吹き替えでも有名な柳澤愼一。三谷幸喜監督『ザ・マジックアワー』(08)で、その健在ぶりを示した柳澤にとっては、『酔いどれ幽霊』(58)以来、60年ぶりの主演作。「これを遺作にしたい」という思いで日常生活に欠かせない杖を手放し、軽やかなステップを披露しながら軽妙に演じている。鉄男役には、俳優座養成所出身で、『マルサの女』(87)などの伊丹十三監督作品の常連でもある高橋長英。善良な庶民から冷酷な悪人まで、数多くの映画やドラマで幅広い役柄を演じる一方、舞台でも紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞している。
芸歴も演技のタイプも異なる二人が織りなす、軽妙かつ滋味あふれるアンサンブルは、同じく性格の異なる男同士の友情を描いたニール・サイモンの傑作戯曲「おかしな二人」や、晩年のジャック・レモンとマルチェロ・マストロヤンニの共演で、米伊を跨いだ男二人の再会を描いたイタリア映画『マカロニ』(85)をも彷彿させる。現在、86歳の柳澤と76歳の高橋、二人あわせて162歳というコンビが見せる名演は、バディ映画の系譜に新たな歴史を刻むだろう。
文学賞受賞作家・戌井昭人初の書き下ろし脚本
ベテラン演出家・西川信廣初監督作は、
地方都市を生きる人々の人間賛歌
監督の西川信廣は、文学座のベテラン演出家。養成所時代の同期でもある新田プロデューサーの「しっかり芝居を見せる映画を作りたい」という、たっての希望で初監督に臨む。脚本は、第40回川端康成文学賞、第38回野間文芸新人賞受賞作家で、祖父に文学座の演出家・戌井市郎を持つ、戌井昭人。文学座養成所出身で西川の教え子でもある彼は、西川自身の自伝的エピソードをモチーフにオリジナル脚本を書き下ろした。音楽には、黒澤明や今村昌平を支えてきた池辺晋一郎が参加。静謐な中にも叙情性あふれるスコアがドラマを引き立てる。撮影には、信州上田フィルムコミッションが全面協力。いまも昭和の匂いが残る袋町の歓楽街と千曲川畔の工場を中心に、オールロケが敢行された。
主演の柳澤と高橋を取り巻くキャストにも、個性的な顔ぶれが揃った。金之助が連れ帰る謎めいた女・吉田樹里には、オウム真理教元信者の菊地直子の逃亡生活を描いた『潜伏 SENPUKU』で主演を務めた土屋貴子。無邪気な明るさの奥にもう若くもない女の憂いを覗かせて、兄弟にとってのファムファタル(運命の女)を堂々と演じる。上田出身の土屋は、当地の観光大使でもある。さらに、江守徹(特別出演)はじめ、金内喜久夫、たかお鷹、新橋耐子ら文学座のベテラン俳優陣が袋町の住人として脇を固める。上田市もまた多くの地方都市同様、少子高齢化と若者の都市部への流出で後継者不足が問われている。そんな中、老いてなお町を支える人々の姿が、力強い人間賛歌として描かれている。
雪村いづみ(特別出演),江守徹(特別出演)
監督:西川信廣 脚本:戌井昭人
音楽:池辺晋一郎 企画・製作:新田博邦 エグゼクティブ・プロデューサー:井上元文
撮影監督・編集:小美野昌史 助監督:平波亘 照明:淡路俊之 美術:橋本千春 仕上げ:荷田一隆
整音:松本能紀 音効:藤田昌 衣装:深野明美 メイク:渡辺祐子 スチール:谷川真紀子
協力プロデューサー:増田徳也 AP:春山智 協力:上田市 特別協力:文学座
企画・制作:ミューズ・プランニング 製作:「兄消える」製作委員会
配給:エレファントハウス、ミューズ・プランニング
2019/日本/カラー/5.1ch /シネスコ/104分 ©「兄消える」製作委員会
2019年5月25日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開!
日本公開30周年記念
ニュー・デジタル・リマスターBlu-ray
- 監督:リンゼイ・アンダーソン
- 出演:リリアン・ギッシュ, ベティ・デイヴィス,
ヴィンセント・プライス, アン・サザーン,
ハリー・ケリー・ジュニア - 発売日:2018/11/21
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