特集『R18 LOVE CINEMA SHOWCASE』

R18 Love Cinema Showcase Vol.1

今回の上映作品を紹介にするにあたって、一年で300本のピンク映画を見たロック青年・とくしん九郎、三十路のピンク映画ファン・安倍まりあ、ピンク映画業界に脚本家として棲息する針部ろっくの三氏に、各作品の魅力を語っていただいた。
筆者個人としては、爆笑のあとに温かい涙が待ち受ける人情喜劇『団地の奥さん、同窓会へ行く』(サトウトシキ)、故・林由美香の哀しき名演に胸が詰まる『たまもの』(いまおかしんじ)、切なくてやさしいラブストーリー『言い出しかねて』(後藤大輔)の三本を、特に必見の傑作だと強くお勧めしておく。(膳場岳人)

2006年5月20日(土)~6月2日(金)21:00~
ポレポレ東中野にて二本立てレイトショー上映

上映スケジュール
R18 LOVE CINEMA SHOWCASE 公式blog

Aプログラム : 恋する団地妻 5.20.(土)~5.23.(火) 21:00~
団地の奥さん、同窓会へ行く
「団地の奥さん、同窓会へ行く」
2004|監督:サトウトシキ|脚本:小林政広
出演:佐々木ユメカ、川瀬陽太、向井新梧、風間今日子、小林節彦、女池充

れないピンク俳優のカワセ(川瀬陽太)とその妻、明子(佐々木ユメカ)は、社会の隅っこに暮らす慎ましい夫婦。久々に主役の仕事が舞い込んだカワセだが、監督はダメ出しを連発。一方の明子は、出かけた同窓会で昔の恋人(向井新悟)に再会し……。サトウトシキ×小林政広のゴールデンコンビが描く、夫婦のとある一日。独特のペーソスとユーモアで笑いっぱなしの65分。夫が妻をカニバサミでベッドに引き倒すとこなんて最高です!  即物的に笑わせるだけじゃなく、この夫婦の空気感がしっかり現れていましたし。とにかく夫婦が同じフレームに収まったときのカットが、ものすご~くあったかいのです。まあ、成り行きとして浮気なんかもしちゃったりするけれど、最後はやっぱり「このいい人とコツコツやっていこう」なんですね。この映画はひとことで言えば、「ああ、夫婦っていいなあ」と実感せずにはいられない、穏やかでやさしい「あい」(ここはあえてひらがなで表記したい)の物語です。それぞれがうたかたの夢を見たあと、月明かりの中で互いの肉体をいとおしむように抱くクライマックス。よかったなあ……。観終わったあと、 幸せな気持ちをくれる映画です。ああ、もう一回観たい!

(安倍 まりあ)

草叢
「草 叢」 (原題:不倫団地 悲しいイロやねん)
2005|監督:堀禎一|脚本:尾上史高
出演:速水今日子、吉岡睦雄、伊藤猛、森田りこ、佐々木ユメカ、マメ山田

年半ほど前に初号試写で見たきりの映画です。細かいことは忘れてしまいました。よく忘れます。すいません。もっともどんな映画も試写後の打ち上げなどの段階ですでに細部について思い出すのは困難で、「ここがどうだ、あそこがあぁだ」と言える人を見かけると、なんてすごいんだと感心しきってしまいます。ぼんやり見すぎなんでしょうか。 しかし、そのぼんやりした印象で言えば、「草叢」は相当におもしろかった。ちょっと悔しいぐらいにおもしろかった。 中でも脚本のよさは抜群で、書いた尾上氏も書かせた堀監督も、すごい。なかなかこれだけ粘れるものではないと拙者などは思うわけです。ついでに言えば、公開タイトルの「不倫団地 悲しいイロやねん」もハマってたんじゃないでしょうか。ところが、「草叢」の素晴らしさはあまり広く評価されていないような気がします。謎です。みんなあまり見ていないのでしょうか。今回の特集上映で多くの方に見ていただき、この映画のよさを感じてもらえたらいいなと、関わってもいないのに思うわけです。そして、願わくば、堀監督がもっと映画を撮れるような状況が生まれてくればいいなと、勝手次第に思うわけであります。

(針部 ろっく)


Bプログラム : オタクとヒモの愛し方。 5月24日(水)~26日(金)21:00~
悶絶!!電車男
「悶絶!!電車男」
(原題:痴漢電車 挑発する淫ら尻)
2005年度ピンク大賞ベスト10・第3位
映画秘宝誌上ベスト10・第1位
2005|監督:友松直之|脚本:大河原ちさと
出演:北川明花,武田勝晴,北川絵美,華沢レモン,飛田敦史,中村英児

車の中で出会った美人OL(北川明花)に恋をし、 痴漢をしてしまう童貞オタク青年(武田勝晴)。そんな彼に、成仏できない五人の霊が取り憑き、 いざ筆下ろしまでの物語が始まる──。早い話が、『電車男』+『愛が微笑む時』(93/米)なのだが、 ご本家とは決定的に違う点がある。それは「電車男」と「エルメスさん」の関係が、「痴漢をした男」と「された女」 ということ。そんな二人が恋に落ちるなんて、現実ではまずありえない。特に女性の方々にとっては、怒り心頭の設定だろう。 作品としても、せっかく「童貞喪失を最終目標にできる」というピンク映画の利点を活かしているのに、 同時にピンク特有の安易さを捨て切れなかったため、結局「オタクが現実を歩みだすという妄想」 を描くに留まってしまっている。ただ、それだけで欠陥作品としてしまうのは、ちと惜しい。この点にさえ目をつぶれば、 後に広がるのは、初恋に奮闘する不器用な男と、彼を励ますうちに自らが癒されてい五つの魂の姿を描いた、 ウェルメイドなヒューマン・ストーリーだ。良くも悪くも今回の八作品中、最も「ピンク映画らしい」作品。 これを機に観てみるのも、一興ではないだろうか。

(とくしん 九郎)

ヒモのひろし
「ヒモのひろし」
(原題:SEXマシン 卑猥な季節)
2004年度シナリオ大賞入選作品
2004|監督:田尻裕司|脚本:守屋文雄
出演:吉岡睦雄,平沢里菜子,藍山みなみ,佐野和宏,川屋せっちん,小林節彦

ロシ(吉岡睦雄)は、偶然出会ったシングルマザー・はるか(平沢里菜子) の家に転がり込み、ヒモ生活を始める。その街では「コオロギ相撲」が男の格付けを決めており、やがてヒロシは、 はるかの愛人でもある首領・安西(佐野和宏)に挑むことになる──。「P-1グランプリ」(2000年開催) の冊子に瀬々敬久監督が、下元史朗・佐野和宏・伊藤猛→ 川瀬陽太 → 佐藤幹雄というピンク映画を支えてきたヒーローの姿に、時代の変化を重ね合わせた文章を寄せている。明確な敵がいた時代。 敵が見えなくなった時代。敵が消えてしまった時代。でも彼らは戦い続けていた……。あれから五年。現在、 ピンク映画を支えるのは、吉岡睦雄である。彼は、全くもって戦っていない。流されるまま気の向くまま。敵どころか、 ヒーローすらも不在になってしまった。きっと、そんな時代なのだろう。そしてそれは、 現在のピンク映画の状況を表してもいるのかもしれない。なるようになれ、と。ただ、そんな彼も、 ホレた女のためなら立ち上がるのである。頑張ってみるのである。そんなとき、奇跡は起こる……。 男が最後に忘れてはならない「何か」を、子供を近所の大人たちが見守って育てるという日本が忘れた風景の中に描き出す、 不思議な魅力に溢れた作品。オフビートだけど、とても温かい。

(とくしん 九郎)


Cプログラム : 不器用で歪な、男と女。 5月27日(土)~29日(火)21:00~
ふ・た・ま・た
「ふ・た・ま・た」
(原題:悶絶ふたまた 流れ出る愛液)
2005|監督:坂本礼|脚本:尾上史高
出演:夏目今日子,藍山みなみ,石川祐一,佐野和宏,あ子,岸田雅子

リーターの亮介(石川祐一)は、恋人・美紀(夏目今日子) と一見順調な交際をしているが、彼女には学生時代から不倫関係にある恩師・田中(佐野和宏)という存在がいた──。弱冠25歳でデビューして以降、ピンク界で最も青臭い映画を撮り続ける坂本礼監督。『1-3』(99年)の元野球少年、『豊満美女したくて堪らない』(03年)のダメ男三人組……。彼らが導き出す答えは、いつも「アツく生きる」というもの。 本作においても、主人公は最終的に同じ回答に辿り着くことになる。しかし過去の作品と本作との決定的な違いは、女性の描き方だ。前出の二作品には、男を優しく受け入れてくれる、理想的な存在の女性がいた。しかし本作における美紀は、 恋人と愛人、それぞれの前でまるで違った二面性を見せる。正直、コワイ。でも、 現実の女性なんてみんな複数の顔を持っているもの。これからの時代、強くなった女性たちは、 その多面性をよりハッキリ打ち出すようになっていくだろう。そのとき、 一面しか持たない単純でバカな男に出来ることといえば……やっぱりアツくなるしかないのである。結論は一緒だけど、 過程が少し違う。坂本監督が新たなステップを踏み出した作品かもしれない。

(とくしん 九郎)

たまもの
「たまもの」 (原題:熟女・発情・タマしゃぶり)
2004年度ピンク大賞ベスト10・第1位
監督賞(いまおかしんじ)
女優賞(林由美香),新人女優賞(華沢レモン)
2004|監督・脚本:いまおかしんじ
出演:林由美香、吉岡睦雄、華沢レモン,栗原良,桜井一紀,佐藤宏

ウリング場で働く愛子(林由美香)は、無口で侘しい35歳。ある日、郵便配達員の良男 (吉岡睦雄)と出会い、恋に落ちる。毎日のお弁当や晩御飯を作って甲斐甲斐しく世話をする愛子だが、 芳男はそんな彼女が疎ましくなり……。過剰な愛に生きる女を故・林由美香が演じ、 04年度ピンク大賞主演女優賞を受賞しましたが、それも納得の圧倒的な存在感です。折れそうに儚げな容姿でありながら、 どこまでも一途に、換言すればふてぶてしく恋をする女を、言葉を発することなく体現しています。恋する愛子は、 半分ストーカーのように良男にお弁当を差し入れて愛情を押し付けるのですが……ええ、思い出しましたとも。筆者もン年前、 好きだった男子にお弁当を届けておりました。最初こそ男子は喜んでいましたが、ある日「もうええ。邪魔や、チンカス!」 と吐き捨てられました。この映画でも、愛子は良男にとって徐々にチンカス状態になっていくわけですが、 その過程にピチピチ同僚女子(華沢レモン)の登場アリという、愛子にとってはあまりに残酷な現実が待っています。 本編の結末については賛否両論あるかと思いますが、チンカス同盟としては「よくやった!」 と力いっぱいねぎらいたいものです。卑近な例で勝手にチンカスにしてしまいましたが、 この映画での林由美香の演技は神がかり的ですよ。必見!

(安倍 まりあ)


Dプログラム : 強く生きる、ということ。 5月30日(水)~6月2日(金)21:00~
痙攣
「痙攣」(原題:淫らな唇~痙攣)
2004年度ピンク大賞ベスト10・第3位
女優賞(佐々木ユメカ)

2004|監督:田尻裕司|脚本:芳田秀明
出演:佐々木ユメカ,真田幹也,北の国,堀正彦,大葉ふゆ,はやしだみき

勢のいい広島弁を操る女性カメラマンのみのり(佐々木ユメカ)は、 仕事先の編集長、櫛田(堀正彦)と不倫の間柄。ある時、一緒に仕事をした櫛田の部下、樫山(真田幹也)と恋に落ちてしまい……。不安定な三角関係を通し、強がって生きる女性の心の移ろいを繊細に描いた本編は、言ってみれば「女性のためのピンク映画」でありましょう。しかもちょっと仕事に情熱を燃やす20代後半から30代前半ぐらいの独身女性 (ええ、ワタシ、思いっきりストライクゾーンですが、何か?)にとっては、 自分をみのりに投影できてそりゃもうタマランものがあるのではないでしょうか。男のほうから「しよ?」 とちょっと媚びた感じで言ってきたりとか(萌え)、自分に忠実に行動する、いわば我侭放題の「私」 をまるごと愛してくれたりとか(さらに萌え)、つきあっている女と別れてでも「私」を求めてきたりとか (どうしようもなく萌え)、ひょっとして男側からしたら文句のひとつも言いたくなるのかもしれませんが、充分に楽しめます。 なんといっても佐々木ユメカの演技が素晴らしいの一言。彼女がリアルだからこそ、 この映画から伝わる息遣いも生温かいのです。女性が観るならコレ! 萌え!!

(安倍 まりあ)

言い出しかねて
「言い出しかねて」
(原題:わいせつステージ 何度もつっこんで)
2005年度ピンク大賞ベスト10・第2位
女優賞(向夏)
2005|監督・脚本:後藤大輔
出演:向夏、小滝正太,川瀬陽太,望月梨央,森田りこ,狩野千秋

目の少女(向夏)は、憧れの売れない腹話術師(小滝正太)の声と、その弟子(川瀬陽太)の体を取り違える。しかし、思わず"言い出しかね"てしまったがため、"二人で一人"の芸人と少女との、おかしくて切ない恋物語が始まる──。老人が義理の娘を牛だと思い込み、乳を搾ろうとする衝撃的なシーンから始まる『夜明けの牛』(03年)といい、後藤大輔監督の作品は奇抜なアイデアに満ちている。でも、もっとスゴイのは、その後の緻密な描写力にある。ちょっと変わった状況に身を置かれた登場人物の心情を丁寧に丁寧に追うことで、彼が鮮やかに浮かび上がらせるのは、「愛とは」とか、「幸せとは」とか、「生きるということとは」とか、人生において普遍的で最も奥深いテーマだ。この『言い出しかねて』もまさしくそんな作品である。二人の男たちが真実を"言い出しかね"てしまうのは、一方は自分の外見に、もう一方は自分の内面にコンプレックスを抱いてるから……。想っているだけでは伝わらない。ちゃんと言わなきゃ伝わらない。勇気を持とう。勇気を持って生きよう。そんなシンプルで力強いメッセージが、野島健太郎氏の奏でる素敵なメロディと共に、 すぅーっと心に沁み込んで来る逸品です。

(とくしん 九郎)


2006年5月20日(土)~6月2日(金)21:00~
ポレポレ東中野にて二本立てレイトショー上映

上映スケジュール
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2006/05/10/06:13 | BBS | トラックバック (0)
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