新作情報

思秋期

http://tyrannosaur-shisyuuki.com/

2012年10月20日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!

傷つける男と癒す女――悲哀に満ちた“人生の秋”に出会った2人。
生きることに戸惑う大人たちの、どん底から再起へと向かう破滅と希望の軌跡

ジョセフ(ピーター・ミュラン)は、失業中の男やもめで飲んだくれ。キレやすいうえに、怒りの感情を抑えられず、酒を飲んでは周囲に因縁をつけて大暴れを繰り返す。自分ではどうにもならない衝動的な怒りと暴力。そんな日々に精神が消耗し、彼はもはや自己崩壊寸前に追い込まれていた。ある日、いつものようにいざこざを起こし、失意のどん底で駆け込んだチャリティ・ショップ。ジョセフは、その店で働く女性ハンナ(オリヴィア・コールマン)と出会う。明るく聡明な彼女の存在は自暴自棄なジョセフを癒し、やがて心を打ち溶かしていく。しかし、ハンナも また人知れずある闇を抱えていた。それは、2人の人生に衝撃をもたらす事件へと発展する・・・。

INTRODUCTION

世界の映画祭、映画賞で25部門以上受賞&ノミネート!
英国発、痛々しくも美しき人間ドラマの真髄に世界中が打ちのめされた!

『思秋期』2011年、各国の映画祭でひときわ注目を集めた映画があった。
サンダンス映画祭監督賞&審査員特別賞のW受賞、英国アカデミー賞(BAFTA)新人作品賞受賞など国際映画祭、映画賞にて25部門以上の受賞&ノミネートを果たし、インディペンデントでありながらオスカーの可能性も囁かれるほどに賞レースを席巻した映画――それが『思秋期(原題:Tyrannosaur)』である。
描かれるのは、せちがらい世の中で孤独と傷を抱え、もがくように生きてきたある男女の出会いと絆。激しく痛烈な描写、そして心を打ちのめされる予期せぬ展開。人生の折り返し地点“思秋期”を迎えた男女の、単なる甘く切ないラブストーリーとは一線を画す厳しさをたずさえながら、その先には暗闇に射す一筋の希望と胸のすくような感動が待ち受ける。

K・ローチの観察眼とC・イーストウッドの精神を併せ持つ、驚異の新鋭長編デビュー作!
俳優から映画監督へ――英国が生んだ多才人パディ・コンシダインの新境地

本作で監督&脚本を務め、強烈かつパワフルな長編デビューを遂げたのは『ボーン・アルティメイタム』『ブリッツ』などに出演し、俳優としてその顔を知られるパディ・コンシダイン。
役者としてのキャリアを重ねながら、映画作家として自分が本当に作りたいものを模索し続けてきた彼は、短編映画『DOG ALTOGETHER』でベネチア国際映画祭銀獅子賞、英国アカデミー賞最優秀短編賞を受賞し、華麗なる映画監督デビューを果たす。「憧れの監督はケン・ローチ」と語る彼の“演じること”で研ぎ澄まされてきた感性は、初の長編映画となる本作にして再び世界中の喝采を巻き起こし、今後の映画界を牽引する逸材として確立されることとなった。映画監督パディ・コンシダインは、“人間”を読み解くその鋭い観察眼と深みのある描写力をもって新境地を切り拓いたといえるだろう。

数多の演技賞を総ざらい!英国の一流俳優陣が織りなす絶妙なコントラスト
最高の布陣で魅せる、“傷ついた大人たち”のリアリティ

『思秋期』場面1衝動的な怒りと暴力を抑えられない男ジョセフ役には、『マイ・ネーム・イズ・ジョー』でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞し、また俳優だけにとどまらず『マグダレンの祈り』で監督・脚本・主演を務め、ベネチア国際映画祭金獅子賞受賞の経歴を持つ、英国の名優ピーター・ミュラン。その圧倒的に冴えた存在感から決して目が離せない。そして、本作で各映画祭の主演女優賞を総なめにし、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』でサッチャーの娘キャロル役が記憶に新しい実力派オリヴィア・コールマンが、光と闇を合わせ持つ非常に難解なハンナ役を見事に演じきった。また、その特徴ある風貌で『シャーロック・ホームズ』シリーズや『ハンコック』などのハリウッド大作に引っ張りだこのエディ・マーサンが強烈な存在感でスパイスを添える。英国が誇る一流の役者陣が結集し、今を生きることに戸惑う“等身大の大人たち”を確かな演技で体現している。

インタビュー

パディ・コンシダイン監督 インタビュー

――あなたはこれまで俳優として活動してきましたが、今回、長編映画の監督として素晴らしいデビューを果たしました。その経緯は?
もちろん、俳優としてはとても楽しい時間を過ごしていたよ。でも、カメラの前に立つ事が次第に僕にとって心地良い事ではなくなっていったんだ。僕は、パヴェル・パヴリコフスキーやシェーン・メドウズ、ジェームズ・マッシュといった監督達と仕事をした経験があったし、彼らに映画監督について相談出来ると言う特権があった。僕は、自分の中に自らの言葉で表現すべき物語があることを知っていたし、実際にそれを表現する必要があったんだよ。しかも、心の中で、自分は俳優よりも監督や脚本の方にむいている事を知っていたしね。最良のコーチはしばしば最良の選手じゃない。映画を監督する事は、僕がこの業界に居続けるために絶対に必要なことだったんだ。

――そういった想いが、あなたの映画監督デビュー作となる短編『DOG ALTOGETHER』の制作へと繋がり、見事にベネチア映画祭銀獅子賞、英国アカデミー賞最優秀短編賞を受賞したわけですが、どのようにしてジョセフとハンナというキャラクターを構築したのですか?
『思秋期』場面2ジョセフは、僕の実父がモデルなんだ。だから、『DOG ALTOGETHER』を作っている時、ジョセフというキャラクターを深く理解し、心の中でとても近くに感じていた。ハンナについては、僕がエミリー・ブラントと共演した映画『マイ・サマー・オブ・ラブ』の時にリサーチした内容から作った。そのリサーチによって僕は、キリスト教のチャリティーショップについて知ったんだ。そして、どの様にして人々が飲んだくれ、その怒りをボランティアにぶつけるのかを知ったんだよ。ある女性は彼らのために店を閉めて祈った。彼女は恐ろしかっただろうが、全てを乗り越える信仰を持っていた。彼らは日々やって来るが、時にはシラフで申し訳なさそうにする。そのショップは言わば救済の場所で、彼女にはそういった人々を惹きつける何かがあったんだ。

――『DOG ALTOGETHER』のいわば続編と言える物語が『思秋期』ですね。同じ設定でジョセフとハンナが登場しますが、短編を長編へと成長させたのにはどんないきさつがありましたか?
『DOG ALTOGETHER』を観た人々は、物語に入り込んだ分、ラストを唐突に感じたと思う。そして、ハンナに一体何が起こったのか知りたがっていると思ったんだ。この短編で、僕は自分のアイディアをきちんと表現できるか確かめたかったのだけど、それは上手く達成できたと感じた。そして、そのときすでに僕は、ハンナというキャラクターを基に別の短編を書いていて、それを映画化する方向で考えていたのだけれど、人々が『DOG ALTOGETHER』の行く末にとても関心を抱いている事が嬉しくて、書き始めていたその短編を『思秋期』の形に変えることにしたんだよ。

――『思秋期』の脚本を書き上げるためにどんな努力をしましたか?
まず僕は物語を広げて、ジョセフとハンナというキャラクターを創造的に描く事に着手した。ジョセフに関してはかなり理解していたので、彼の中に何か新しい発見をする事はほとんどなかったけど、ハンナに関してはもっと知る必要があった。僕は、彼女がどんな人生を送ってきたのか知りたかったんだ。僕達は皆、その人がどの様な風貌かとか、どれほど財産を持っているのかとか、どこで暮らしているのかといった上辺の情報だけで人物を推測して判断しがちだ。例えば、銀行の窓口であなたと会話した女性が、実は地獄の様な日常を生きている可能性など、一秒たりとも考える事なく、自分の人生に満足しているだろう?だから僕は、ハンナの人生に一体何が起こるのか、探求を始めた。そうやって自分を追い込んで、『思秋期』を1週間半で書きあげた。

――『思秋期』は、ジョセフとハンナという男女の、孤独で傷つき思うようにならない人生の葛藤を描いたシンプルな物語ですが、捉え方によって非常に多面的な広がりを持つ物語のようにも思えます。
『思秋期』場面3僕は、誰かの人生がぶっ壊れる事に興味は無い。そりゃ生きていれば時には大変だし、時には恐ろしい事もある。でも、希望もある。誰も希望無しに人生を乗り切る事は出来ないし、僕だってそうだ。登場人物たちは、異なるバックグラウンド、異なる状況を抱えているが本質的には同じだ。彼らは共にナイフを取って戦う事を厭わない。彼らの間には、お互いの痛みを理解している戦友同士の様な、無言の了解があるんだ。帰還兵の間に見られるようなそれは、とても動物的で興味深い。彼らは物語の終わりにお互い愛し合っている。彼らは深い悲劇によって結び付けられるんだ。だから、僕は最初から、ラブストーリーを作ったんだと皆に言ってきた。悲惨な状況は彼らの物語にとって副次的な要素でしかありえないんだよ。

――劇中では、直接的な暴力や精神的な残酷さ、繰り返される家庭内の虐待が描かれていますね。
僕は、計画通りに脚本を書く事は出来ないし、それが何を描いた物なのか具体的に言うことも出来ない。あらかじめ考えたマニフェストにそって脚本を書く様な事は出来ないんだ。だから、僕はこの映画をアルコール依存症と家庭内暴力の映画だと言うことは出来ない。ジョセフは飲んだくれるけど、それが日常だからだ。飲むことは彼の生活の一部なんだ。実際彼は自分でもうんざりしていると思うしね。ハンナが飲むのは、それが彼女の感覚を麻痺させてくれるからだ。それは彼女の心が自分の状況に対応するためのクッションの様なものと言えるね。しばしば映画の作り手は、話を手っ取り早く進めるために家庭内暴力を利用する。だけど僕は『思秋期』がそうなっていない事を願うよ。僕は家庭内暴力の実態を知っているし、それにつけこむ様な事はしたくなかった。虐待を演出の手段の様に使いたくなかったんだ。これはとても繊細な問題で、僕の知る多くの人々にも影響を与えた。僕自身は虐待の経験はないけど、非常に多く起こっている問題でもある。僕が読んだ幾つかの事例はあまりにもグロテスクで、『思秋期』にはその様な描写を持ち込めなかった。人々もそれを望まないと思ったしね。この映画はフィクションだけど、虐待は実際に起こっていて、被害を受けている女性たちは十分な支援を得ているとは必ずしも言えないんだ。

――ジョセフ役にピーター・ミュランをキャスティングした理由は?
最初から、ジョセフ役にはピーター・ミュランしか考えていなかったよ。ピーター・ミュランは唯一のチョイスだったんだ。彼のスケジュールを待って、映画の撮影が遅れるのも厭わなかった。彼ほどに高いクオリティを持つ俳優は、今日見つけるのが困難だ。彼は僕が大好きなリー・マービンやジャック・ニコルソンなどの世代の俳優を思わせる。彼らに容易に肩を並べる存在なんだ。ピーター・ミュランを信じられない瞬間など無い。彼はカリスマ的で、本能的に動物的にジョセフを理解していた。彼の演技にはとても感情移入させられる。彼は私のお気に入りの俳優の一人で、この地球上でただ一人この役を演じられる人物なんだよ。

――キャラクターを構築するうえで、あなたが一番重要としたハンナ役をオリヴィア・コールマンが演じていますね。とても難しい役どころですが、彼女を起用したのはなぜですか?
『思秋期』場面4僕がオリヴィアと出会ったのは、彼女と共演した「ホット・ファズ」の時だった。僕の場合、出会ってすぐ誰かに好意を抱く事はほとんど無いのだけど、オリヴィアはとても率直で誠実な人物であると感じた。僕は彼女の中に自分との共通点をたくさん見出すことができたんだ。オリヴィアは英国ではコメディだけで知られていたけど、出会った当時は脇役ばかりだった。でも、それでは彼女の魅力は十分に生かされないと思って、僕はほとんど本能的に彼女をハンナ役に起用した。その判断は正しかったね。『思秋期』で、過去最高の演技をしたオリヴィアを誇りに思うよ。彼女は自分のウェイト以上のパンチを放ってくれた。僕はこの映画を通して、彼女が変化して行くのを感じたんだ。それは記憶されるべき事件であり、それを現場で目撃出来たことは光栄な事だ。もちろん、ほかの“完成された俳優”をこの役にキャスティングする事も出来たけど、それが最良だったかどうかはわからない。なぜなら、オリヴィアはとてもミステリアスで、見事にやり遂げてくれたんだから。

――オリヴィア・コールマンはこの先さらに飛躍していく女優ですね。彼女の役者としての魅力について聞かせてください。
オリヴィアは、彼女の演技を引き出した事に関して、僕を賞賛してくれるけど、それは彼女が元から持っていたものなんだ。僕にはそれを作り出すことは出来ないし、誰かを偉大な俳優にする事もできない。彼女の美しさは、彼女の素から生まれるものだ。僕にとって彼女は、セットで初陣に挑む戦士だった。彼女はとんでもなく素晴らしく、どんどんレベルを上げて、遂には世界中から高く評価される女優になった。人々がこの映画に彼女が出ている事を知ったら、彼女が良い仕事をしている事を疑わないだろう。しかし彼らは、実際にこの映画を観るまでは、彼女が本当にどれほど凄い芝居をしているか知ることはできないんだ。

――近年、数々のハリウッド大作に出演しているエディ・マーサンは、この映画で家庭内暴力をふるう夫ジェームズという非常にシビアな役に挑戦しました。あなたにとって、俳優としての彼の印象は?
エディ・マーサンは僕が長年意識してきた人物なんだ。彼は最高の俳優の一人だよ。ジェームズの役を演じるには善悪の絶妙なバランスが必要だけど、彼は見事にやり遂げたね。彼は、自分が何者かわからない、魂の混乱した人物としてジェームズを演じた。それはありがちな悪役とは対照的だ。彼は演技のコツを理解し、きちんとスイッチのオンオフが出来る偉大な俳優で、愛すべき男だ。彼は困難で陰鬱な役を見事に演じてくれた。

――最後に、あなたの映画監督としてのスタイルや考えを聞かせてください。
手持ちカメラの美学は、特に社会派リアリズムのドラマではもう死んだと思っているんだ。僕は社会派リアリストじゃない。むしろアンチだ。かといって即興的にやりたいわけでもない。キャストはあちこちにアドリブをしかけるけど、それはちょっとした瞬間だけで、歓迎すべきことだと思っている。それを使うべきかどうか判断できるからね。僕にとってはパフォーマンスが全てなんだ。僕は、俳優たちに心を解放して欲しいし、それが可能な空間がとても大切だと思っている。そうであれば必要な瞬間は得られるはずだし、その映画に夢中であれば何らかの形で報われるものさ。僕にとって、俳優たちは美しく英雄的で、カメラはそれを尊重するものだ。パヴェル・パヴリコフスキーは沢山の素晴らしい手持ちショットを撮ったけれど、それは他の関係者や撮影監督たちによって台無しにされてしまった。だから、僕が映画を企画する時の条件の一つは、他の誰でもなく、僕自身が映画を作ると言うことだ。この国で映画を作ろうとすると、僕たちは自分自身を有刺鉄線で巻いて制限してしまう。だから僕は、自分が作る作品が“小さな英国映画”ではないと思うことにした。たとえ低予算でも、大きな気持ちで映画を作りたいと思っている。たとえ事実がそうでなくても、少なくとも、その瞬間はね。『思秋期』を10年前にやり遂げたかったよ。今まで僕が作った物の中で最も深い作品になった。観客にどう受け取られるにしても、自分としては、ベストな1作を見出せたと思っているからね。

C R E D I T

出演:ピーターミュラン,オリヴィア・コールマン,エディ・マーサン,サミュエル・ボットモレイ,ネッド・デネヒー,ロビン・バトラー
脚本・監督:パディ・コンシダイン 製作:ディアミッド・スクリムショウ
撮影監督:エリック・アレクサンダー・ウィルソン 音楽:クリス・ボールドウィン、ダン・ベイカー 衣装デザイン:ランス・ミリガン
2011 年/カラー/35 ㎜/スコープサイズ/ドルビー/98 分/英語/イギリス/原題「Tyrannosaur」
字幕翻訳:岸田恵子/提供:新日本映画社/配給・宣伝:エスパース・サロウ/後援:ブリティッシュ・カウンシル/PG-12
© CHANNEL FOUR TELEVISION/UK FILM COUNCIL/EM MEDIA/OPTIMUM RELEASING/WARP X/INFLAMMABLE FILMS 2010
http://tyrannosaur-shisyuuki.com/

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  • 監督:エリオット・レスター
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2012/10/15/19:39 | トラックバック (0)
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