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『サーミの血』宮台真司(社会学者)× 榎本憲男(小説家・映画監督)トークイベントレポート

映画『サーミの血』トークイベントレポート【2/7】
宮台真司(社会学者)× 榎本憲男(小説家・映画監督)

新宿武蔵野館、アップリンク渋谷にて絶賛上映中!ほか全国順次公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

榎本憲男榎本憲男

榎本 ちょっと今までの話をまとめると、われわれはみんな「サーミ」だったということですよね。で、定住して法ができて、誰が仲間かだんだんわからなくなっていき、神経症的になって、カタルシスを与えるためにお祭りみたいなものに行ったということですよね。映画の事実関係も確認したいんですが、「定住民には所有という概念がなかった」という宮台さんのご指摘がありましたが、この映画の中ではそこがそろそろヤバイ感じですよね。映画の冒頭で何が行われているかというと、トナカイのマーキングです。マーキングというのは「これはあんたのものだよ」ということを明確にするためにやるものです。で、どうやら移動もしていない、ずっとここにいるらしい。また、舞台となる1930年代のヨーロッパというのは、「国」というものがものすごく強固にまとまろうとしていたという事実がありますね。スウェーデンもスウェーデン国家として恐らくまとまろうとしていたときに、サーミ人の中には「俺たちはスウェーデンじゃないよ、サーミだよ」という人間がいて、でもこのヒロインは「いや、私はサーミはちょっといやだな、むしろスウェーデン国民になりたいな」というふうになっていると思うんです。学校が歌わせるのはスウェーデンの歌で、これは「スウェーデンという国があってあなたがいますよ」という人間の否定があるんですね。それをヒロインは一生懸命歌うんです。でもサーミ人の感性がまだ残っている妹は歌わない、彼女が歌うのはヨイクだと。ということで、宮台さんが言っている「遊牧民的な感受性」というものも、映画のスタートの時点で微妙にブレていると思ったんですね。

宮台 ブレているからその話が実は可能になると思うんですね。宮崎学さんという被差別民出身の元ヤクザの物書きが書いた『近代の奈落』(02)という本を読んでいただくと同じ話が書かれていることがわかると思います。詳しい話をする時間がないので構図だけ言うと、遊牧民って被差別民でしょう? で、実は日本でも被差別民というのは流動する存在なんです。サンカがその典型ですね。なぜ定住民は定住しない人間たちを差別するのかというと、これは非常に重要な問題で、「所有をめぐる決まりを理解する/しない」ということと、「自分たちの定住する生き方を肯定する/しない」という問題がある。それはあとで時間があったら話すとして、宮崎学さんはこういうことを言っているんですね。定住民が非定住民を差別すると、差別される側はもちろん反差別運動をするわけだけど、反差別運動の目的はもっぱら「差別するな、一般人として扱え」と、「一般ピープル化」ということであると。ところが20年ぐらい前から「そもそも反差別運動って一般ピープル化なのか?」という反省が一部に生じた。で、結論的に言うと、宮崎学さんは一般ピープル化はやめろと、なぜなら一般ピープル、一般定住民やその社会は「クズ」であると。したがって差別されることに一部甘んじても、いわゆる被差別部落の感受性や作法を守るべきだ、という本を書いたんですね。

『サーミの血』場面1榎本 同化するなと。

宮台 そう、同化するなと、この映画はまさにそういうモチーフなんですよね。「同化するな」という妹と、「同化したい」という主人公と、日本でも被差別民の間で生じている分岐が姉妹の間で再現されているわけですね。ここで僕も、あるいは多くの方も何となく感じるべきことは、例えば今から15年前に「定住民に合わせて差別されないようになりたい」、「いや、そうじゃない」っていう議論を聞いたり目撃したりすることと、今そういうことを聞いたり目撃したりすることとの間にはずいぶん差があるということです。

榎本 ん? それはどういうことですか?

宮台 それはこういうことですね。この映画は公開中のいくつかの映画とシンクロしています。まずポール・ヴァーホーヴェンの『エル ELLE』(16)、是枝裕和の『三度目の殺人』(17)、もうひとつは黒沢清の『散歩する侵略者』(17)です。これらはほぼ完全にモチーフが同じです。つまり僕たちは法を守ることが正義だと思っていたし、この社会の形を保つことが適切だと思っていたし、この社会に適合してうまく生きることが大切だと思っていたけど、それは違う。この社会はそもそもクズで、この社会に適合しない方が正しい。適合するとしても適合したふりをするしかない。この3つの作品みんな同じなんですね。つまり観る側の感受性がずいぶん変わっていて、一般ピープルが一般ピープルであることに非常に強い違和感を持っているときに出てきているということが非常に重要です。

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サーミの血
監督・脚本:アマンダ・シェーネル
音楽:クリスチャン・エイドネス・アナスン
出演:レーネ=セシリア・スパルロク、ミーア=エリーカ・スパルロク、マイ=ドリス・リンピ、
ユリウス・フレイシャンデル、オッレ・サッリ、ハンナ・アルストロム
2016 年/スウェーデン、ノルウェー、デンマーク/108 分/南サーミ語、スウェーデン語/
原題:Sameblod/DCP/シネマスコ―プ
後援:スウェーデン大使館、ノルウェー王国大使館 配給・宣伝:アップリンク
© 2016 NORDISK FILM PRODUCTION

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2017/10/01/21:32 | BBS | トラックバック (0)
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