インタビュー
伊藤峻太(監督) & ウダタカキ(俳優)/『ユートピア』

伊藤 峻太(監督)
ウダタカキ (俳優)
映画『ユートピア』について【1/8】

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2018年4月28日(土)より 下北沢トリウッドにてロードショー!

高校在学中に制作した『虹色★ロケット』が、異例のロードショー公開、DVD化という快挙を遂げた伊藤峻太監督が、10年の歳月をかけて完成させた新作『ユートピア』がいよいよ公開を迎える。本作は、グリム童話『ハーメルンの笛吹き男』とトマス・モアの小説『ユートピア』に着想を得たSFファンタジー。「作品の世界を完全に掌握したい」という当時19歳のクリエイターの挑戦は、物語の世界や先人の思想をリスペクトを込めて探る旅となり、自分の心を見つめ直す苦しい作業にもなっていくが、新たな発見にのめり込みながら書いたシナリオは深みがあって血の通う冒険ストーリーに。妥協のないVFX満載の映像美でも魅了する。最もこだわりを感じるのは架空の「ユートピア語」を作り上げてしまったこと。異世界の言葉を話しファンタジーの世界に同化した俳優たちの演技に驚嘆しつつ、「おとぎ話の続き」を楽しんでほしい。そんな伊藤峻太監督へのインタビューに、前日に2度目の本作鑑賞をしたばかりというオールデ指揮官役のウダタカキさんも急遽参加してくださり、矢継ぎ早に話が繰り出された。壮大な映画作りの背景や裏設定、作品への想いが存分に語られたインタビューをお届けする。 (取材:深谷直子)
伊藤 峻太 1987 年東京生まれ。親の仕事の都合で日本各地を点々と移り住む。千葉県立幕張総合高等学校在学中 3年生のときに映画『虹色★ロケット』(07)を監督・脚本。下北沢トリウッドにてロードショーののち、DVD が発売とレンタル開始。同作のスタッフ・キャストで「芸術家族ラチメリアカルムナエ」を結成。京都精華大学でアニメーションを学び、短編作品を制作しながら、スチール、メイキング、美術、録音、車輛などで様々な作品の現場に入る。青山真治監督『共喰い』(13)にプロダクションアシスタントで参加した他、石岡正人監督ドキュメンタリー映画『アニメ師・杉井ギサブロー』(12)で撮影・助監督を務める。

ウダタカキ 1978年東京生まれ。『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(10)、『孤狼の血』(18)など白石和彌監督作品に多数出演し、GACKT脚本・演出の「MOONSAGA〜義経秘伝〜第二章」(14)など舞台でも活躍。若松孝二監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08)、『海燕ホテル・ブルー』(12)では地曵豪と共演している。 公式サイト
STORY ある夏の朝、まみが目を醒ますと雪が降っていた。そして、二段ベッドの上に現れた謎の少女・ベア。電気や水などのライフラインが途絶した混乱の中、まみは言葉の通じないベアに妙な懐かしさを覚え、惹かれてゆく。しかし、行動を共にする中でたどり着いた絵本<ハーメルンの笛吹き男>に二人は驚愕する。なんとベアは、1284年にドイツのハーメルンで笛吹き男にさらわれた130人の子どもたちの一人だった。 時を同じくして、少しずつ姿を消す東京の子どもたち。ベアをさらった笛吹き男・マグスの正体は?夢の中にある「火も音楽も名前もない平和な国」とは?そして、ベアの未来は?停止した東京で、おとぎ話の続きが始まる……。
伊藤峻太監督伊藤峻太監督
――『ユートピア』は伊藤監督が高校生のときに作った『虹色★ロケット』(07)以来の長編第2作となりますが、作ろうと考えたのは監督が大学1年生のときで、高校時代のメンバーとまた一緒に作ろうという形で始まったんですよね。

伊藤 そうですね。『虹色★ロケット』は学校から依頼を受けて作った作品なんですが、みんな受験生だったので親からの反発もあったし、撮影は朝か昼休みか放課後、あと土日とかを使い、合間にはもちろん英単語を憶えたりしながら、みんなすごくピリピリしてて。そんなに苦労して作ったのに、上映会では30分しか上映できないと途中で言われて。メンバーが泣いて直談判しに行ったけどダメで、74分の作品なんですけど30分の短縮版しか流せなかったんです。全然いい思い出がなくて、みんな上映が終わったあとも何も語らずに受験に入っていき、卒業するときも特にそれについて語ることも観直すこともなく、大学生になって各地に散り散りになっていきました。でもその後、大槻(貴宏プロデューサー/下北沢トリウッド代表)さんが「トリウッドでロードショーしないか?」って声をかけてくださって、「上映されるならもう1回集まって一緒にものを作らない?」と、大学1年の夏休みにみんなで集まったんです。で、僕はやっぱりそのメンバーで実写映画が撮りたいと。すごく魅力的な人たちだったから。それで始まったのが『ユートピア』です。

――それから10年かけてついに完成したわけですが、それだけ時間が経つとやっぱり当初考えていたのとは違う形になったようですね。高校時代のメンバーはどれぐらい関わっているのですか?

伊藤 作っている過程でみんな大学を卒業して就職して、メンバーの中には結婚、出産まで経験している人がいて、もちろんみんなで昔のように一緒に作るということはできなくなってしまいました。僕もシナリオを書くのにえらい時間がかかってしまって、震災が起きるぐらいまではずっと悩み続けてて。いざ本当に作ろうとなったときに集まれたメンバーというのはほとんどいなくて、そのときのメンバーで残っているのは制作の湯浅志保子と、撮影・音楽の椎名遼、それと主演の松永祐佳ですね。でも撮影現場には来られなかったけどポスプロで戻ってきてくれた人は何人かいて、美術、例えば新聞を作ってくれたりとか、チラシをデザインしてくれたりとか、プロになってその技術を持ってまた一緒にという人はいます。

――脚本作りにかなり悩まれたようで、10年の制作期間のうち、脚本作りに7年ぐらいかかったと。

伊藤 はい、2006年から書き始めて2013年までかかっているので。

ウダ ちなみに最初に考えていたストーリーと今のものとで、どこが同じでどこが違うのか?というところを教えてもらえますか?

伊藤 もともとのストーリーは、法律も何もない自由な夢の世界があって、そこから犯罪者が現代東京に逃げ込んできて、それを追いかけてきた女刑事が東京の女の子と出会い、一緒に犯罪者を追いかけるという話でした。

ウダ ああ、これって結構管理社会を描いているなって思ってて。ジョージ・ルーカスの昔の作品だとか、SFってもともと思想的じゃないですか? そういう要素をすごく感じるんだけど、根幹はそういうところにあるんですか?

伊藤 そうですね。「法律ってなんだろう?」っていうのが当時の僕のトピックというか、気になることだったんです。「法律のない世界が自由な世界って言えるんだろうか?」とか考えていて、「夢の世界」というモチーフを思いついて。「夢の世界」っていう言葉には、寝ているときに見る夢の中の世界もあるし、理想の世界ということもあるし、でもそれって何だろう?という意味で、最初からタイトルは『ユートピア』にしようと考えていました。それで初めて「ユートピア」という言葉の意味を調べてみたら、「理想郷」だと思っていたのが、実は「どこにもない国」という意味なんだというのを知って、そこから「ユートピア」にのめり込んでしまったんです。

――「ユートピア」という設定自体にハマってしまったと。

伊藤 はい。トマス・モアが500年前に書いた小説の『ユートピア』が本当に面白くて。航海士が主人公に対して自分が行った島の話をするのが第1章で、主人公がその航海士を紹介してくれた友人に手紙を書くのが第2章の「手紙」。そこで主人公は「その島を理想的だと思うけど、それが持続可能かどうかわからない」、「これを本として出版しようと思う。酒場の好みのうるさい人たちは匿名をいいことに批判するだろうけど、それは作品を発表する者の宿命だから、宴の席を設けよう」と言って小説が終わるんです。トマス・モアは本当にクリエイターだったんだなと思いますね。500年前に、作品を発表することの責任や怖さも作品の中に込めていて、小説の内容以上に作品を発表する姿勢にすごく共感しました。

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ユートピア ( 2018/104 分/日本 )
出演:松永祐佳,ミキ・クラーク,高木万平,森郁月,吉田晋一,地曵豪,ウダ・タカキ,まなせゆうな,椿鮒子,吉田佳代,レナ・コックス,デニス 他
監督・脚本・VFX・編集:伊藤峻太
撮影監督・音楽:椎名遼 助監督:市原博文 制作:湯浅志保子 サウンドデザイン:小牧将人
ラインプロデューサー:山本達也 特殊メイク:小林誠実 VFX 特別協力:村上優悦 宣伝美術:平山みな美 プロデューサー:大槻貴宏
製作:「ユートピア」製作委員会(トリウッド、AXsiZ、芸術家族ラチメリア・カルムナエ)
配給:トリウッド © UTOPIA TALC 2018
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2018/04/27/10:21 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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